異世界女子会@ルーク先生のオフィス
「見えるー?」
「あ、ピンクの髪が見えた」
「何か座ってお茶飲んでません?演習じゃないの?」
「お嬢様達、窓に引っ付いて何をしているんですか?私のオフィスで」とルーク先生は丁寧に言っているが、目は笑っていない。
「ルーク先生、夏休みなのに何でオフィスに来ているんですか?」
「その言葉をそっくりそのままお返しします、アンナさん。何故貴方がここにいるんですか?レイチェルさんもモニカさんも」
「今日は聖女様の謹慎明け初めての演習だと聞いて、みんなで見学に来たんです」とレイチェル様が言う。
「カールですか?機密情報を漏らしたのは?」
「だから、ここからこっそり見ているんじゃないですか」とモニカお嬢様もにっこりしている。
「ついでに言えば外は暑いし、ここならコンビニからドリンクとか買いに行くのが便利なんで」と私が言うと。
「それが1番の目的だな」
だってコンビニのアイスコーヒー飲見たかったんだもん。
「ルーク先生も飲みます?クーラーボックスに色々入ってますよ、ルーク先生の好きなフルーツオレも入ってます」と言った瞬間、ルーク先生はいそいそとクーラーボックスを開けている。
「アンナさん、さすがですね。ルーク先生の好みを熟知していて」とレイチェル様が揶揄うように言う。
私はチラッとルーク先生を見ると、フルーツオレをストローで飲んでいて、ちょっと可愛い。
「さて、見学もいいですが、作戦会議をしないと」とモニカお嬢様が窓から離れてソファーに座った。
「まずは聖女メグのこれからのスケジュールです。カール様に国立図書館で捕えられたメグですが、リヒト王太子殿下からここ最近の瘴気の濃さから魔物が大量発生している為、魔王討伐と浄化に聖女は欠かせないと幽閉処分に待ったがかかりまして、王宮での1ヶ月謹慎処分になりました。それも昨日でそれも終わり、今日は1週間後の討伐の旅に備えて、聖女と騎士団の合同演習が行われています」とレイチェル様が言う。
「うわーカール様、一緒にやりたくないでしょうね」
「そりゃ物凄く文句言ってましたよ、でもこれも王太子殿下がゴリ押ししたそうで」とレイチェル様がため息をついている。
「モニカお嬢様の方も進展があったんですよね」
「ええ、進展というか、後退というか。クリス様と禁書庫の本をしらみつぶしに調べて言った所、聖女メグが王太子殿下にかけている魅了の魔法を解除できそうな魔法が載っている古代語で書かれた本を見つけたんですが、そこに王太子殿下がやってきまして」と言ったモニカさんは怒りで震えている。
「あの王太子殿下は!!禁書庫の本を持ち出したんです!しかも貸し出し手続き無しで!!」と手に持っていたアイスコーヒーの容器を握りつぶした。
「でも流石に王太子殿下に粗相をする訳にいかないとクリス様に必死に止められまして、何とか我慢しました」
クリス様、怖かったろうなご苦労様ですとつい同情したら、レイチェル様も私と同じような顔をしているので同じ事を思っているらしい。
「王太子殿下によると、聖女がその本は魔王討伐に必要だと予言されたので持って行くとの事でした」
「て事は、メグはその本が魅了の魔法を解除する魔法が載っていると知っていて持っていったの?今頃燃やされているかもしれないじゃない」とレイチェル様が焦っている
「いえ、メグは知らないで持って行ってると思います。あの本は古代語で書かれているのでメグは読めませんし。おそらくアレはアル様のルートで必要な本なんだと思います」とモニカお嬢様が言った瞬間、ルーク先生がフルーツオレを飲むのをやめて、こっちを見ている。
「私もアル様ルートは一回しかせず、その時はもう既に本を持っていたので気が付かなかったのですが、今日の演習でアル様がその本を持っていましたので、思い出しました。ほら、下のピクニックテーブルでその本を読んでいるアル様が見えます」
だから熱心に外を見ていたのか。
「じゃあアル様からその本を奪えばいいの?」
「それも難しいですね、アル様は魔法の力に長けてますし、王太子補佐という事で近くには聖女と王太子がいつもいますし、それにアル様も魅了の魔法にかかっている可能性が高いです」
まずい、このままだと本当に魔王(黒木さん)が討伐されてしまう。
「モニカお嬢様、その魅了を解除する魔法とはどんなものだったんですか?覚えていますか?」
「私も途中までしか読んでないのですが、悪しき力を取り去り、状態を元に戻すというもので、魔法の詠唱の他に2つの全く同じ魂も必要と書いてあったと思います」
2つの同じ魂?
「それは魔王討伐の魔法にも使えないか?」とルーク先生が言う。
「そう言う見方も出来るかもしれません。魔王という存在自体が悪しき力ですから。ルーク先生何か知っているのですか?」
「いや、今アルの所にゲストが来たのでそう思ったんだ」とルーク先生は下を見ている。
私達も窓から下を見ると、アル様と同じテーブルに2人の全く同じ顔をした女性が一緒に座っている。
「あれチャップマン侯爵家のケイト様とメリッサ様ね。昔よく遊んだわ。本当にそっくりよね。双子だから同じ魂って事なのかしら?あの2人も討伐に参加するって事は、彼女達につく誰か優秀な侍女がいるわよね」とレイチェル様がにっこりしながら私を見ている。
「そうね、アンナの次の就職先が決まったわね」とモニカお嬢様も言う。
その時、ルーク先生のオフィスのドアがノックされた。
私達は慌ててコンビニスイーツやドリンクのゴミを片付けて、ルーク先生がドアを開けるとそこに立っていたのはクリス様だった。
「ルーク、レイチェルとモニカが邪魔してすまないな。レイチェル、もうカールが限界だ。今にも聖女に剣を向けそうな気配なので、ちょっと息抜きをさせてやってくれ」というと、レイチェル様は大変!と言って演習場に向かった。
「モニカ、会いたかった」とクリス様はモニカお嬢様を抱きしめる。
「今朝も会いましたよ、クリス様」と言っているモニカお嬢様も満更ではなさそうだ。
クリス様はモニカお嬢様と両思いになり性格が真逆になったようだ。よく喋るし、モニカお嬢様に対して砂糖にシロップをかけたような甘さだ。まあ、モニカお嬢様に怒られるのは怖いみたいだが。
「モニカ、やはりアルが読んでいる本は俺たちが禁書庫で見つけた本だ。アルは古代語は多少は読めるが苦戦しているようなので、モニカに手伝って貰いたいそうだ。あの本を読めるチャンスなのでお願いできないだろうか?」
「勿論です。いきましょう!」とモニカお嬢様もクリス様と行ってしまった。
一気にみんながいなくなったので、私はルーク先生と2人きりになった。
「ルーク。。。黒木さん、どうするんですか?このままだと本気で討伐されちゃいますよ」
「どうしようか?アヤが助けてくれるの?」と黒木さんはまだクーラーボックスの中をゴソゴソしてる。
「そんな悠長な。何とかして本を奪えないですかね?」と窓から外を見ると、アル様のテーブルにモニカさん達が加わったのが見えた。
「ダメだろうね、あの本には防護魔法がアルによってかけられてる」
「。。。。。。。。私は黒木さんがいなくなっちゃうのは嫌です」とポツリと言うと。
クーラーボックスをゴソゴソしてた黒木さんは、私の方に来て私をぎゅっと抱きしめた。
「俺だってアヤと離れるのは嫌だよ。だから討伐遠征にもついて行こうかと」
「討伐される側が討伐部隊に入ってどうするんですか。バレたら終了ですよ」
「まあ、何とかなるよ」
本当かな。それでも心配だ。
「私が黒木さんを全力で守りますからね」と言うと、黒木さんはすごく嬉しそうな顔をした。




