強い司書さん
わらび餅をモグモグ食べながらレイチェル様は「やっぱりこの国にコンビニ欲しいわ」と言っている。
本当に日本のコンビニは最高よね。
「あ、お兄様の話ね。そうそうモニカさん。伯爵令嬢だけど、ご両親が溺愛してるとかで、今時珍しく婚約者もいなくて、今は王立図書館で司書をしているはず。家族以外でお兄様と会話ができる人ってモニカさんぐらいだと思うわ」
「レイチェル様って、クリス様ルートの禁書庫イベントってどんなのだか知っています?」
「私はレイチェルしかプレイしてないから、クリスルートは選択肢になくて」
そうだね。兄妹だもんな。
「じゃあ私はモニカさんに会いに図書館に行ってきます。他に何か欲しいものがあったら、王宮侍女頭のリリーさんか学園のルーク先生を通して言ってくださいね」
「わかったありがとう、また遊びにきてね」とレイチェル様が見送ってくれた。
王立図書館までまた馬車で送ってもらう。
モニカさんはすぐに見つける事が出来た。シルバーブロンドに紫の目の儚げな美人だ。でも本を10冊ぐらい軽々と持ち上げている。
力持ちなのかな?
あ、でも誰かがぶつかって本が落ちそうになった所をメガネをかけた男性が支えた。
あ、あれクリス様だ。
「危ないぞ」とクリス様は冷たい目線でモニカさんを見下ろす。
「あ、クリス様。ありがとうございます。クリス様はいつも私に本は持ちすぎるなって言ってくれますものね」
え?あの一言からそこまで?
「それと君」とクリス様はモニカさんにぶつかった女性を睨む。
あ、あれ聖女メグだ。あの人にぶつかるの好きだな。
「何!その女が前を見ないでぶつかってきたのよ、私は悪くないわ」とメグが叫ぶと。
モニカさんはにっこりしながら
「クリス様、誰も怪我しなかったのですから、そんなに心配しないでください。それに私も本を持ちすぎていたのは確かですから」とクリス様に言ってから、モニカさんはメグの方を向くと。
「ただ、聖女様。図書館では静かにお話しくださいね」とゆっくり言った。
その静かな声を聞いた瞬間、背筋がぞくっとした。クリス様も無表情だがよく見ると冷や汗が流れている。
「な。何よ。もう良いわよ」とメグが逃げようとすると、モニカさんはメグの肩を掴んで。
「聖女様、図書館では走らないでくださいね?」と笑顔で言った。
メグは言葉を発する事もできず、コクコクと頷いてゆっくりその場を離れた。
モニカさんは絶対怒らせたらダメなタイプだ。
「クリス様、今日は如何なされました?何かお探しものでもあるんですか?」
「禁書庫を」
「ああ、禁書庫の閲覧許可ですか?申し込みをしてからもう1ヶ月ですね。まだ王宮の方から許可が出ていないんです。こちらからも聞いてみますが、大体1ヶ月以上かかる事はないので、もう少しだと思いますよ」とモニカさんが言うと。
「感謝する」とクリス様が静かな声で言った。
「大丈夫ですよ。クリス様の為なら私も頑張ります」とモニカさんが言ったら、クリス様の耳がやや赤くなった。
クリス様はモニカさんの事が気になるのね。モニカさんはどう思っているかよくわからないけど。
王宮に戻ってから、そこから会社に戻った私はマリアさんに会うためにまた企画課に行った。
マリアさんと黒木さんがデスクで何か話している。邪魔しちゃいけないかなと思ってたら、黒木さん(メデューサ)が気がついてくれた。
「黒木叔父さん、なんか機嫌が悪いので気をつけてくださいね。何度固めちゃおうかと思いましたよ」
確かにドス黒いオーラが出ている気がする。
「アヤちゃん帰ってきたの?ちょっとお話しできる?」とマリアさんが笑顔で言うが。隣の黒木さんの真顔が怖い。
黒木さんはサッと立って、私の耳元で「会議室行こうか」と言った後、肩をぐいぐい押して私を会議室に押し込んだ。
後ろでガチャっと言う音が聞こえる。
「な。。何で鍵閉めてるんですか?マリアさんも来るんですよね」
「ちょっと2人で話したいだけだから」
黒木さんは私を椅子に座らせて、その前に仁王立ちする。目はまた赤く光ってる。
「アヤちゃん、最近僕らは一緒に過ごす時間が少ないと思うんだよね。だから、水曜日の夜、面談の後に俺の家に夕ご飯食べに来ない?」
「え?それだけですか?」
「何だと思ったの?」
「いや、もっとアレコレしろって言われると思ってて」
「別にアヤが想像している事をしてくれても良いけど、俺が作るご飯を食べるだけだよ」
と黒木さんはなんか悪どい顔で笑っている。なんか怪しいな。
「あれードア開かないよー、開けてー」とマリアさんが外からノックをする。
黒木さんは鍵を開けて、マリアさんを入れると「じゃあ水曜日」って去っていった。
「水曜日に何かあるの?」とマリアさんがワクワクした顔で聞いてきた。
「黒木さんとご飯に行く約束をしただけですよ」
「あら?そうなの?アヤちゃん不足ってかなりイラついてたから、もっと無理難題を言ってくると思ってたのに」
「そうですよね、私もそう思ってました」
私は早速図書館での出来事をマリアさんに話した。
「なんでクリス様も禁書庫に入りたいんですかね?後、あんな図書館と無縁そうな聖女メグがあそこにいたのかも気になります」
「私もゲーム設定書とか見てるんだけど、禁書庫の事は出てこないのよね。何であの子がそれを知っていたのか?水曜日に聞いてみましょう」
そして水曜日のお昼過ぎ、由美さんは結婚紹介所のオフィスにやってきた。
クリス様のキャラのアップデートのために、今までプレイして感じた事を調査したいと言う事で来てもらったみたいだ。
「ゲーム会社の人と話せるなんて。すごく楽しみで昨日もついプレイしちゃいました」と由美さんは嬉しそうにしている。
「ちなみに昨日はどのキャラでプレイしたの?」
「私はいつもは聖女様だったんですが、クリス様の反応が悪くて、ある時から図書館の司書さんにしたんです。そうしたら、クリス様の思考が聞こえるチートがあって、それで禁書庫イベントに辿りついたんです。でもあの司書さんは最近のキャラだと思いますよ。初期の設定ではいなかったので、あれは神アップデートですよ」
私とマリアさんはお互いに顔を見合わせた。この子ならいける。
さあ、どうやって話を進めようと思ってたら。黒木さんが入ってきた。
「あれ?まだ俺の出番じゃないか?」黒木さんは手にあの針を持っている。
「え?ルーク先生のモデルの方ですか?そういえばマリアさんも女神様に似てますね?もしかして、クリス様のモデルの方もいらっしゃるんですか?」と盛り上がっている。
「えっと。。クリス様に会う事はできます。ちょっと条件があるんですが」と私が言うと。
「えー是非。何でもしますし、何処へでも行きます」と由美さんが言うと。
マリアさんと黒木さんがニヤッと笑った。マリアさん、笑顔が黒木さんの魔王スマイルになってますよ。
そこからはマリさんと同じパターンで説明した。そして由美さんもチートを購入すると言う。
「身体能力と言語能力のどっちが良いかな、本を読むには言語能力の方がいいけど、司書の仕事は体力勝負だし」と悩んでいたので。
「モニカさんは力持ちなので身体能力いらないと思います」
「そうなの?じゃあ言語能力で!」とサッと5000円を出した。
今回は時間があるので、来週の由美さんのお休みの日からスタートとなる。
「じゃあ残り1週間で日本を満喫してきます」と走り去っていった。行動力のある人で頼もしい。
仕事も終わったし、黒木さんと一緒に魔界に行くのかなと思ったら、黒木さんがいない。私のバックにメモが入っていた。
「スーパーで待ち合わせ、先に行ってる」
私はマリアさんと事務所の前で別れてウキウキでスーパーへ向かった。
由美さんのお話の前に、ちょっと黒木さん&アヤの話に脱線します。




