お疲れ様飲み会
私と黒木さん、マリアさんとリリーさんでお疲れ様飲み会という事で居酒屋に来た。
居酒屋には似合わない美形が3人。周りから色々見られている気がするが、私は久しぶりの日本食に夢中でそれどころではない。
「ホッケにビール最高」
「私も久しぶりにレモンサワーが飲めて幸せです」とリリーさんがレモンをゴリゴリ絞っている。
「伯爵婦人は屋敷に帰らずにここで飲んでていいのか?」と黒木さんが聞く。
「いいんですよ、旦那様は狩猟大会に泊まりで行ってるし、子供達は先代伯爵様の所で泊まり会ですから。私もたまにはお姉様と過ごしたいです」
「リリーさんの旦那様って亡くなった王妃様の甥っ子なんですっけ?」
「そうよ、まだ王妃様が生きていらした時に、王妃様付きの侍女をしていて。その時王妃様の甥っ子が遊びにきて、私に一目惚れしたの」
「え?もしかしてリリーさんの旦那様って歳下ですか?」
「本当の年齢でいったら、すごい歳下だけど。リリーとしての年齢でいえば、5個下ね」
「うわーリリーさんやりますね、向こうの国で女性が年上で結婚ってなかなかないって聞くので」
「そういえばマリアさん、もう次のレイチェルさんのお兄様の候補者って見つけたんですか?」と私が聞くと。
「もう、折角の飲み会なのに仕事の話しないでよ。。。。まあいっか。なかなか難しいわね。あのメガネ、口下手すぎてあんまり人気ないのよ」
マリアさん、鬼コメントだな。
でも確かにレイチェル様と一緒にいた時に何度か会ったが、圧倒的に言葉が足りずに、相手を怒らせるか、怖がらせるかのどっちかだった。
「あいつ、学生時代もそんな感じだったな。家柄は高いし、頭もいい、顔もいいのにモテなかった。唯一の趣味が読書で、学園の図書館に入り浸ってて、そこでいつも会ってた子とは少し話してたがな。伯爵令嬢で、確か今は王立図書館で司書として働いているはずだ」と黒木さんがししゃもを食べながら言う。
私もししゃも食べたいと思って見てたら、1匹くれた。
そっか、月曜日にレイチェル様の所にあの絵を持っていくから、その人の事聞いてみようかなと思っていたら。
お隣のグループからよく聞く名前が聞こえた。
「だから、白薔薇学園での1番のイケメンはクリス様なんだってば。親密度がマックスになった時のメガネを外した顔がやばいのよ」
私達はついその話している女の子を凝視してしまった。
どうやら白薔薇学園ゲームのオフ会のようだ。
「えーー無理だよ、あんな一言、二言しか言わない上に、すぐにどこかに行っちゃうキャラとどうやったら親密度高められるのよ」と他の子が言うと。
「図書館よ。あそこならクリス様は、いつもより長く話してくれて、一緒に禁書庫に行くイベントがあるのよ」
私はマリアさんと黒木さんに聞いた。
「そんなイベントがあるんですか?」
「覚えてないわ、それよりあの子の情報が欲しい」とタブレットで何か調べてる。
「あ、いたわ。前田由美さん、25歳。書店勤務。親が毒親で疎遠。いいわ、すごくいいわ」とマリアさんが頷いている。
「ちょっと待って、それゲームのユーザー登録以上の情報が。。」と私が言うと。
リリーさんが首をフルフルと振って「世の中には知らない方がいい事があるのよ」と私に搾りたてレモンサワーを渡してくれた。
黒木さんはちびちびとハイボールを飲みつつ「俺のキャラの話はしないんだな」と言っている。気になるのね。
「あ、あの子達帰る準備してる」とマリアさんが立ち上がる。目は獲物を狙う目だ。
どうやら由美さんが幹事で1人でお会計に行くところに一緒についていくマリアさん。
20分後マリアさんがニコニコしながら帰ってきた。
「由美さんは水曜日が休みだから、その日に紹介所に来てもらう事になったわ。アヤちゃんもその日は宜しくね。。。で、何でこうなったの?」
マリアさんがいない間に、リリーさんは机に突っ伏して寝てるし、黒木さんは私にもたれかかってる。
「2人を送らないとね。会社の方が近いからそっちに行きましょう。黒木の方は牛尾と八木に連絡するからドアで待ち合わせにしましょう」とマリアさんが指輪に向かって話してる、私のネックレスと話す時もあんな感じなのかな?
幸い2人ともなんとか歩けるので、マリアさんと2人で会社の地下倉庫まで連れてきた。
マリアさんは黄色のドアを開けながら、
「牛尾と八木はもうすぐくるから、そこで黒木と待っててくれる?私はリリーを送ってくる」と言った。
「大丈夫です。マリアさん、リリーさんお休みなさい」
黒木さんは床にぺたっと座って、目を閉じてる。
「黒木さん、スポーツドリンク飲みましょうね」
「やだー、アヤが飲ませて」
しょうがないなと、私はしゃがんで黒木さんの顔にペットボトルの口を顔に近づけるとプイッと横を向く。
「えーー普通こう言う時に飲ませるって言ったら。。。。。」と黒木さんが言いかけた時にドアが開いた。
「魔王様、何やってるんですか。アヤさんすみません、帰りますよ!」と八木さんが出てきた。
黒木さんはそれを聞いた瞬間に、私に抱きついて。
「嫌だー、アヤといる」
「アヤさんだって、家に帰らないと終電なくなりますから」と後からきた牛尾さんも言ってくれるが、ますます黒木さんはひっついてくる。
「だったら、うちに泊まれば良いじゃん」
「魔王様、女の子は色々用意があるんですから、そんな急にお泊まりとか出来ないんですよ。アヤさん、俺たちが何とかしますから、どうぞお気にせずに帰ってください」と牛尾さんが黒木さんを私からひっぺがしてくれた。
私は八木さんにスポーツドリンクを渡して、黒木さんを見た。
牛尾さんに拘束されてる黒木さんの目はいつもより赤い。やばい魔王モードだ。
「で。。ではお休みなさい!また月曜日に!!!」と倉庫から足早に出る。
なんか後ろから暴れている音がする。牛尾さん、八木さんごめんなさい。頑張って!!!
月曜日はレイチェル様のお届け物があるので、会社の方から向こうに行く。途中で企画課に寄ったが、黒木さんははいなかった。牛尾さんと八木さんは大丈夫でしたよと言ってるが、なんか動きが変だ。怪我してないといいけど。
王宮のクローゼットで侍女服を着て侍女頭室に行くと、リリーさんは二日酔いが治らないとやや顔色が悪かった。それでも仕事はしている、さすがのプロ。
私は馬車を借りて騎士団長様のお屋敷に行く。
ついた瞬間にレイチェル様が飛び出してきた。
「レイチェル様興奮しすぎですよ」
「もう昨日から寝られないぐらいだったのよ、早く見せて!」
「まだ玄関ですよ、とりあえずお部屋に行きましょう」
レイチェル様は部屋に着いた瞬間、包みをバリバリ開けている。
そして、絵を持ったまま床に座り込んだ。
まあね、我ながら良い写真撮れたと思うわ。今回もキャンバス生地プリントにしてもらってるが。
レイチェル様を抱えたカール様の精悍な横顔、それを見つめるレイチェル様。後ろには満月が浮かぶ夜空。
「かっこいい、ずっと見てられる」
「毎日本物を見ているじゃないですか」
どこに飾ろうとウキウキしているレイチェル様を横目に私はお茶を入れて、持参したコンビニスイーツを並べた。
「レイチェル様、少しクリス様の事でお伺いしたいことがあるんですが」




