悪役令嬢としてー マリの場合 その3
そしてやってきた、卒業パーティーの日。
「普通は婚約者がエスコートするのもじゃないのかしらね?」
「普通でしたらね」とアンナが大きな長方形の包みを出してきた。
「あらこれは何?」
「卒業プレゼントです。全てが終わったら、開けてくださいね」
「アンナは卒業パーティーには出ないの?」
「会場にはいますが、やる事があるので、メイドの格好で参加します。お側にいますので安心してください」
「わかったわ。今までありがとう」
「まだこれからですよ。さあ、戦闘服に着替えましょう」とアンナが赤のドレスとジュエリーボックスを持って来た。
ネックレスはシルバーにエメラルドの石だ。カール様と私の目の色だ。これに勇気を貰おう。
公爵家の馬車が会場に着いた。
アンナはもう既に会場にいる。私はお兄様にエスコートしてもらって、馬車を降りる。
「こういう時は、婚約者の殿下が」とお兄様が静かに言った。
ゲームの中ではレイチェルと兄であるクリスは仲が悪いのかと思っていたが、実際はクリスはレイチェルの事を気にかけているが、言葉が絶望的に足りないので、責めているように聞こえてしまう。だから眼鏡冷血子息とか言う渾名がある。ある意味、誤解されやすいレイチェルと同類だ。
「お前と殿下はどうなっているんだ」
恐らく、俺の可愛い妹(お前)と聖女にうつつを抜かしてる奴(殿下)はどうなっているんだと聞いている。
全く持って言葉が足りない。
「まあ殿下もお忙しいようです」
会場に入るとメイド服姿のアンナが柱の影にいる。ドリンクを取りに行くふりをして、アンナに近寄る。
「先ほど、聖女メグ様とリヒト殿下が到着されました。そろそろかと思います。私はカール様を会場の入口で待ちますね、ご健闘お祈りします」私はアンナの言葉頷いた。
会場の入口でざわついた声が聞こえる。
クリスお兄様も厳しい表情でそれを見ている。
リヒト様とメグさんが腕を組みながら、歩いて来た。
「まあ聖女様と殿下が」
「レイチェル様との婚約はどうなるのかしら」
「レイチェル様は聖女様に怪我をさせたそうよ」
「レイチェル様より聖女様の方が殿下に相応しいわ」
色々な声が周りから聞こえる。
壇上に立ったリヒト様は私を見つけると
「レイチェル、ここへ来い」と私を呼ぶ。
お兄様が私を止めようとしたが、
「大丈夫です、お兄様は何もしないでください」と言うと大人しく引き下がった。
私が会場の真ん中に出ると、メグさんは勝ち誇ったような表情をしている。
周りを見回すがカール様の姿はない。
私はカール様の好感度を必要なだけあげられたのか?少し顔がこわばった私にリヒト様はこう告げた。
「レイチェル公爵令嬢、お前の聖女に対する言動、挙句の果てには先日の授業で聖女に危害を与えた事は到底許される事ではない。本日を持ってお前との婚約は破棄する。そして、お前には聖女に危害を与えた罰として、、、、」
え?危害なんか与えてないわよ。何?罰って??
ちょっとやばくない?と焦って、アンナを探そうとした時
「お待ちください、殿下」と私の大好きな声が後ろから聞こえた。
「遅くなりましてすみません。殿下、私もあの場所にいましたが、聖女様は自分で転ばれただけで、レイチェル嬢は何もしてませんよ」とカール様が私の側に来てくて言ってくれた。
「私もその授業を担当していましたが、騎士団長様と同じ意見です。どちらかといえば、レイチェルさんの方が危なかった」とルーク先生も言ってくれた。
殿下がググっと拳をにぎり締めて、
「そうか、なら危害を与えたと言う罪については不問にする。ただ婚約破棄は覆さない」
それを聞くとカール様はニヤッと笑って。
「なら、私がレイチェル嬢に求婚しても何の問題がないのですね」と私の手を持って、膝を着いた。
「何?お前が??」とリヒト様は突然の展開についていけない。
「レイチェル嬢、初めて会った時からお慕いしていました。どうか私の妻になって頂けないでしょうか?」と私を真剣に見つめる2つの緑の目。
私が望んでいた瞬間がきた。思わず涙が出て来たが「喜んであなたの妻になります」となんとか声を絞り出した。
カール様はにっこりと笑い、立ち上がって私ををお姫様抱っこした。そしてリヒト様に深々と礼をした。
「殿下、私達はこれで失礼致します。公爵家への挨拶がありますので」と私を抱えたまま会場から出ていく。
外に出るとアンナがいた。私はアンナに親指を立てて見せると、アンナは嬉しそうな顔をしてお辞儀をして、携帯で私達の写真を撮った。
そして私とカール様はカール様の馬に乗り、2人で公爵家に向かった。
皇太子からの婚約破棄から、騎士団長の求婚と情報量が多すぎたのかお父様は困惑していたが、慌てて帰って来たお兄様が説明をしてくれて、最終的にはカール様との婚約を祝福してくれた。
私達はすぐに結婚するため、婚約期間も一緒に住む事になり、寮にあった荷物はそのままカール様のお屋敷に運ばれた。
その中にアンナからもらった包みがあった。
開けてみると、そこには黒髪の男の子が赤い髪の女の子に花の冠をつけてあげている。。絵かな?写真をキャンバス生地にプリントしたような物に見える。
カール様がそれをひょいとのぞいて、
「レイチェルも覚えててくれたんだな、俺たちが初めて出会った日を」と言われて、レイチェルの記憶が蘇った。公爵家のパーティーがつまらなくて抜け出した時にお花畑でカール様と出会い一緒に遊んだ事が。そのあとすぐに皇太子の婚約者として選ばれてしまい、それ以来カール様と遊ぶ事はなかったけど。
「私の事をずっと思ってくれていてありがとうございます」
「レイチェルが王太子の婚約者になった時は本当に悔しかった。殿下から婚約破棄してくれた時は不謹慎だが心が踊ったよ」
と絵を見ながら私を抱きしめた。
「それにしても、この絵師はすごいな。まるで生きているように見える」
「そうですね。。あ!!!あの場面も絶対に欲しい!アンナに頼まなきゃ」
「あの場面?アンナ嬢が描いたのか?」
「できたらお見せします。それまではサプライズです」
絶対あの卒業パーティーのお姫様抱っこのシーンは欲しい!!!!!
………………………………………………
レイチェル様の荷物をカール様の使用人に引き渡して、自分の荷物もまとめた。
寮の外に出ると黒木さんが待っていてくれた。
「これで全部か?お疲れ様。うまく行ってよかったな」
「やっと文明に帰れます。コンビニ行こうっと」
「あ、あのキャンバスプリント喜んでいたか?」
「今日の荷物で騎士団長の屋敷に送ったので、まだわからないんですよ」
「そうか、あの場面は2人が出会った時のスチルだからな」
「きっと私が撮った卒業パーティーの時のも欲しいって言って来ますよきっと」
「そしたら追加料金貰おうな!」
私達は笑いながらルーク先生のオフィスに向かった。
これでマリの話は終わりです。またアヤ達の話に戻ってから、次の攻略対象とのお話になります。




