表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/48

30話 鍵ノ先海岸

 平日の海岸は人もまばらだ。車を降りるとすぐに潮の匂いがした。街の中と違って、風も冷たい。


 浜へ降りるのかと思ったが、先輩は駐車場を出てすぐの、海岸が見える低いコンクリートの縁に腰かけた。私はどうしようか迷い、少し距離を空けて隣へ座った。


 鍵ノ先海岸は、初めて来た。ここからだと、海岸が一望できる。沖の方でサーフィンをしている人をなんとなく眺めていると、先輩が言った。

 

「焼き鳥食べるか?」


「……ちょっと、今は……」


「……そうか」


 綺麗な海ですね。どうして私を連れてきてくれたんですか?


 そんな会話をしたいのに、口をついて出たのはまるで違う言葉だった。


「来週……ですね。先輩の……処分が決まる会議。どうなってしまうんでしょうか」


「まぁ、よくて降格、異動か、最悪……解雇だな」


 他人事のように言う先輩に、私は眉をひそめる。


「やってないかもしれないのに?」


「俺もそう思いたいが、やっていないと言ったところで、人事は信じない。そうさせたのは、俺自身だ」


「このままでもいいんですか?私は嫌です。ちゃんと調べましょうよ」


「調べたって、何も出てこないだろ。通報内容も曖昧なんだ」


 私は拳をぐっと握りしめた。エリ先輩に向かって、初めて歯向かう。


「……だから!白川さんとの打ち合わせの録音があるじゃないですか!もしかするとそれが原因かもしれないのに、どうして聞かせてくれないんですか!?」


「……どうしても、芦尾には聞かせられない」


 静かな返事に、胸がずきりと痛む。


「……後ろめたいことが、あるんですか」


「俺は、あがきたくない。ここらで一度受け入れるべきだ。疑われること自体が、俺の今までしてきたことへの報いだ」


「私は先輩が変わったって、証明したいです」


 力が入りすぎて涙があふれそうになる。先輩はじっと海を見つめていたけれど、こちらに顔を向けた。


「……芦尾がそう言ってくれるだけで、充分だ」


 そう言って私の目を見て、悲しげに微笑んだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on ↓作者へ絵文字で感想が送れます↓
匿名での感想も!
♡絵文字で感想を送る♡

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ