表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/48

28話 疑惑


 白川さんは私より2歳年下だけど、先輩の社員だ。声がアニメの声優さんのように愛らしく、人懐っこい電話対応がお客さんにも好評ときく。


 カスタマーサポートの人なら、顧客対応の件で営業所と打ち合わせをしていてもおかしくない。だけど、彼女にも、エリ先輩のスケジュールにも、使用時間の記録がない。


 どういうこと?普通なら、パソコンの予約システムで押さえる。そのとき、参加者のスケジュールにも連動して登録される。そしてそれは、社内の誰にでも見ることができるはず。


 何か、エリ先輩が白川さんと会議室に行った記録はないか……


そのとき、思い出す。エリ先輩は、たまに録音機を使って会議の議事録をとる。メモの手間が省けるからと、私にも勧めていたではないか。


 お昼休みの時間にさっそく、貸し出し用のノートが入っている棚へと向かった。


 パラパラとノートをめくる指が止まる。会議室の使用履歴と同じ日、「獄谷衿」の名前が記されていた。


 誰にも気づかれないように拳を握りしめる。私は録音機のSDカードを取り出して、急いでパソコンに接続した。しかし、その日のデータだけが見当たらない。


 悶々と頭を悩ませながら仕事を進める。定時の鐘が鳴ってからさらに1時間が過ぎたころ、エリ先輩が外回りから戻ってきた。私は先輩が席につくことすら待てずに立ち上がる。ドア付近に立つ彼に駆け寄り、すぐに切り出した。


「先輩!もしかしてこの日、白川さんと会議しましたか?」


 ログを印刷した紙を見せると、先輩は目だけを動かして見つめ、ほんの少し眉をひそめた。


「…………ああ。クレーム対応のことで少し相談があると言われてな」


 やけに返答が遅い。


「そのとき、何かなかったですか?」


「いや、何も」


 会話を断ち切るよう、自分の机に向かって歩くエリ先輩に、私はまとわりついた。


「そのときの会話──録音しましたね?」


「……ああ、した」


「やっぱり。そのデータ、先輩が持っていますね?」


「そうだ」


 先輩は淡々と答えるが、目が明らかに泳いでいる。


「良かった!念のため、録音内容を聞かせていただけますか?今のところ、それしか気になることがなくて」


「……ダメだ」


「ど……どうしてですか?ここ最近で、先輩と二人きりになったのは白川さんだけなんです。何もなければまた別の可能性を探しますし、もしそれがパワハラと受け取られたものなら、人事に提出して判断を仰げばいいですし…」


「あの打ち合わせは関係ない」


「え……」


「いいな。仕事しろ」


 先輩は、パソコンの真っ黒な画面を見つめて腕を組んだ。強い拒絶を感じ、私の心に暗雲が立ち込める。


 信じたい気持ちに、わずかな隙間風が吹く。もしかして、本当に白川さんを傷つけるようなことを言ってしまった?




 それとも、まさか……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on ↓作者へ絵文字で感想が送れます↓
匿名での感想も!
♡絵文字で感想を送る♡

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ