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あめつち  作者: きまぐれ猫


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言葉

言葉は人間にとって道具の一つ。

特にコミュニケーションの道具として大きな役割を果たしている。


一緒にいる人と話す為だけでなく、目の前にいない人とやり取りをするにも、未来の人に情報を残すためにも言葉が必要。

過去に何があったか、何をしたか、何をしなかったか。記録を残しておけば色んな検証に使えるし、未来の教訓にもなり得る。


ただ、それ以上に大切なのは、自分が今考えていること、感じていることでさえも言葉によって成り立っているということ。


感情は言葉によって形作られ具象化されている。

感情があってもそれを表現する言葉が無ければ、誰かに伝えることはもちろん、それがどういう感情であるのか本人にさえ分からない。


言葉で表現できず自認されなかった感情はどうなるのだろうか。

自分自身からも捨て置かれた感情は、存在したはずなのに無くなってしまうのだろうか。

それとも何か別の形で認識したり、表出されたりするのだろうか。

───それは一体、どんな形なのだろう。


思うに、文章を読むことの大切な役割は、思考や感情を表現する為に必要な言葉を学ぶところにあるのではないだろうか。


映画やドラマ、アニメや漫画では、仕草や表情、声音や背景に流れる音楽、もしくは登場人物同士の距離感や映像の色味、明暗だけでも様々なことを伝えることが出来る。

そうした感覚的に共有されるものは、時に事細かに言葉で表現するよりも感情を揺さぶって感動を呼ぶことがある。


一方の文章では説明すべき内容、様々な場面や登場人物の状況、心情から風景の全てを言葉で表す必要がある。

例えば物語で考えると、その世界はそこに書かれた言葉によって形作られている。一つの世界を作り上げる、その為には、それだけ沢山の「言葉」による情報が必要になることは想像に難くない。


そうした言葉によって作られた様々な文章を読むことで、表現するための言葉を必要な場面で使えるようになるし、自分の感情を表す言葉を知ることが出来る。


ただ面白いのは、言葉そのものから連想されるイメージや読み手の過去の経験などと重なることで、言葉として書かれていない場面や背景が生み出されることがあること。書き手にさえ想像し得ない世界を、それぞれの読み手が生み出しているということ。

それもまた、文章を読む面白さの一つだと思う。


今はSNSで簡単に情報を得られるし、好きな動画を手元の端末で手軽に選んで時間を潰すことが出来る環境にある。その上、ショート動画と言われるようなより短時間で次々と新しい情報に触れられるものが好まれている。


そこで使われるのは、「ヤバイ」に代表されるような一言で幾つもの意味を兼ねる便利な言葉。

それは確かに便利なのだけど、濃淡もあれば複数が絡み合っていることも少なくない感情をたった一言で表すのは難しい。そしてその便利な言葉が、自分の感情を表せなくなる原因の一つになっている。


タイムパフォーマンスなんて言葉が出来るくらい、自分の時間を何に割くかが重要視される時代。わざわざ本を持ち歩き、読書の時間を取るという人は減っているのかもしれない。それに比例して語彙が減り、自分の思考、感情を適当に表す言葉を知らないままでいる人が増えているのだとしたら、とても寂しい事のように思う。


もちろん小難しい言葉をいくら知っていても、日常で使うことのない言葉で表現するのでは伝わるものも伝わらない。コミュニケーションで大切なのは「伝わる」ことで、伝わる言葉を選ぶことは誰しもが無意識下で日常的に行っている。

だからこそ、たくさんの言葉を知り、相手に合わせて自分の考えや感情を表す術を身に付けることが肝要だ。


文章を書く難しさには、意図しない形で言葉が伝わってしまうということが多々ある。使う言葉が複数の意味を持っていたり、文脈によって意味が異なってしまったり、言葉の意味を誤って認識していたり。


文章を書いては読み返して、おかしなところが無いか確認する作業を何度も繰り返すのは、言葉で伝えることの怖さを感じているから。言葉が時に暴力にもなり得ると思うから。

誰かを傷付けることなく、読む人に自分の真意が伝わるように。そのことをいつも考えている。


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