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4 夢

 

 夢、という言葉を聞いても胸が躍らなくなったのは、いつからだろう。

 いつの間にか俺にとって夢とは、いつか叶える大きな目標ではなく、現実から目を背けるための免罪符になっていた。

 俺には夢がある。凡庸なあいつらとは違う、でかいでかい夢が。

 だからあいつらみたいなダサいことはしなくてもいい。

 死んだ魚のような目をして、社会にすり潰される必要なんかない。

 夢を盾にしてそんな言い訳ばかりしているうちに、夢は死んだ。

 かつては自分の中であんなに光り輝いていたものが、瑞々しい果実のようだったものが、今ではすっかり色褪せて、吐き気を催すような腐臭を放っている。

 それを自分でも十分すぎるほどに自覚しているのに、それでも俺は夢にしがみつくことをやめられない。


 あいつが、俺の夢を信じてくれているから。


 俺がいつかでかい夢を叶えて世界に羽ばたいていくのだと、山田という男はそういう人間なのだと、あいつはそう無邪気に信じているから。


 アパートの建付けの悪い外階段を登ってくる音。

 半額シールの貼られたスーパーの総菜を手に帰ってくるあいつの足音だ。

 一日かけて、俺が昼間にパチンコですったのと同じだけの額を稼いだあいつが、疲れた顔で帰ってくる。


 だから俺は今日も、とっくに腐った夢をあいつに語って聞かせる。

 あいつの夢が壊れてしまわないように。



 ***



 手つかずのジグソーパズル 俺の夢を聞くため君はイヤホンを外す





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― 新着の感想 ―
[良い点] こういうヒューマンドラマ、大……っっ好きです! 続き楽しみにしてます!
[一言] 色々な山田さんのお話?と言う感じなんでしょうか。 モルダー、あなた疲れているのよ臭がしました。 季節の変わり目ですのでご自愛ください。しかしこの山田氏はマダオ
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