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作者: やまなし

 私が経営する喫茶店に、最近、若い女の子のアルバイトを雇った。彼女は物覚えがよく、気が利いて、力もあった。なにより、右目の青い瞳と、左目の緑の瞳が綺麗な少女だった。

 私は満足している。彼女に不満はない。

 しかし、私の評価とは裏腹に、客連中の評価は芳しくなかった。そのことにかんして、彼女自身は気にしたようなそぶりを見せない。ただ、内心は外から観察されるほど平穏ではなかっただろう。理由が明確なだけに、そしてこうなることがわかりきっていたために、かえって改善の策が取りにくい。だから、よけいやきもきする。そのような心境で悩んでいたのかもしれない。それに、本人の努力とは無関係なところに原因があるのが、もっとも苦痛の種だったかと想像する。

 彼女は、猫なのだ。

 一度だけ、彼女はいまにも泣きそうな眼で不満をこぼしたことがある。みな自分が猫というだけで、恐れている。それなのに店長はなぜ平気なのですか、と訪ねられた。私はなんと答えただろうか。よく覚えていない。うまい言葉は、なにも出なかったのはたしかか。それでも、次の日になればけろっとして出勤してくるところなどは、やはり猫らしいな、と私は笑った。

 いまは、もう彼女はいない。最後まで客の理解は得られなかったものの、すくなくとも私は、彼女の勇気に敬意をあらわしたい。

 まだ、猫がネズミの社会で生きるのは、難しい時代のようだ。

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