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ヲタッキーズ124 戦慄のバスジャック

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第124話「戦慄のバスジャック」。さて、今回は異次元人専用の観光バスがハイジャックされ多額の身代金が要求されます。


武闘派を装うハイジャック犯は、実は高度な詐欺師の集団で捜査本部にスパイが潜入、超天才のアルゴリズムを煙に巻く動きをませますが…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 身代金


僕達は、コロナパンデミックの終息?を見届ける、歴史の生き証人になろうとしている。

お陰様で、今や世界中のインバウンドが、満を持してアキバに押し寄せようとしている。


そして、インバウンドは異次元からもやって来る。


「秋葉原にようこそ!"リアルの裂け目"をお通りのみなさま、秋葉原観光は、コチラのバスへどうぞ。ハイ、足元に注意して」


秋葉原駅中央口に乗り付け、客引きを始める観光バスw


「ママ、ホテルに戻ってゲームしたいよ」

「もう十分やったでしょ?ホラ楽しいわょ」

「どこが」←


そのバスは、様々な異次元人を飲み込んで逝く。


「お客さん!ココはヲタクのパラダイスだ。もっと明るい顔をしなきゃ」

「空調は?」

「後ろの席が良く効いてるょ。ようこそ秋葉原へ!」


ステップで転ぶお客もいる。長髪の陰気な男。


「大丈夫かい?足元を良く見なきゃ」

「運転手さん。コイツはニ日酔いナンだ」

「そっか。しかし、大きな荷物だねぇ」

「安いユースホステルに泊まってる。持ち歩かないと盗まれちまうょ」

「OK!上の網棚に乗せてくれ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


観光バスは走り出す。


「カメラの準備はOK?コレから秋葉原の名所を回りますょ。"ウォークオブヲタ"に地下アイドルのアパート、そしてヲタ芸ライブだ。オレンジ色のセーターのママさん!聞いてる?全部貴女のために喋ってルンですょ。みなさん楽しんでますか?!でも、ホントのお楽しみはコレからだ!」


軽妙トークに期待も高まる…長髪の男が激しく咳き込む。


「彼、大丈夫なの?」

「ママさん、ご心配ありがとょ。でも、奴は人混みに酔ってるだけだ」

「…さて、右側に見えるのはあの、有名な…」


その時!数人の男が一斉に立ち上がる。

手にしているのは、拳銃、短機関銃だw


「全員その場から動くな!」

「前を向いて黙ってろ」

「運転手!お前は、そのママ運転するんだ。俺達を見るな。そのまま前を向いてろ!」


バスジャックだ!テロリスト?は4人。全員アジア系男性、マスクなし。武器を手に窓ガラスにスプレーを噴霧スル。

その中で1人、ステップで転んだ長髪の男だけがPCを取り出し、デバイスを接続スルや一心不乱にキーを叩き始める。


「全員、黙れ!今から俺の仲間が車内を回る。鍵、財布、カメラ、携帯。全て袋に入れろ」

「お金なら、いくらでもあげるわ!」

「ママさん。誰が話して良いと言った?」


ボスと思われるG-1ジャケットの男がママさんに拳銃を向ける。瞬時に黙るママさん。見かねた男性客が叫ぶ。


「やめろ!」

「腰抜けは黙ってろ。全員口を開くな。俺が質問した時だけ答えろ。おい、運転手。お前は、そのママ運転すルンだ。俺達を見るな。そのママ前を向くんだ!」

「くそ…」


男性客は、スマホを袋に入れるフリをして袖口に隠す。


「運転手!エアコンの目盛りMAXで車内の温度を上げろ。次の角で右に曲がれ!」


運転手は、ハンドル横の赤い非常ボタンをじっと見つめる。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署(アキバP.D.)に対策本部が立ち上がる。


「ラギィ警部!20分前、観光バスの非常ボタンが押されました。運転手が応答しないのでバス会社がウチに通報しました。コチラは、バス会社のウォルさんです」

「どうも。保安責任者のウォルだ。警察の協力に感謝スル」

「状況は?」


ラギィは万世橋(アキバポリス)の敏腕警部。彼女とは、彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれていた頃からの付き合い。ウォルはハゲ頭w


「我々は、バスをリモートで緊急停止させるコトが出来る。ハイジャック防止の最新ソフトだ」

「リモート操作ですか?」

「YES。去年、全車両に装備した。テロ対策の一環だ」


ウォルは万事が上から目線で恐らく警察からの天下り。

"私も将来あーなるのかしら"とウンザリするラギィw


「ココでスイッチを押せばバスは停止スル」

「いつやれますか?」

「すぐにでも」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のモニターに東秋葉原のマップが写る。


「GPSで追跡スルと、バスは東秋葉原(ダウンタウン)に向かっているようだな」

「犯行にはピッタリの場所。市庁舎、金融街、学校、教会、礼拝堂までアル。テロリストが世間の注目を集めるにはモッテコイだわ」

「バスは中央通りを北上、末広町駅に接近中」


エレベーターから完全武装の警官が現れる。


「万世橋SWATです。全班、出動中。歓迎委員は、新幹線ガード下の出口で準備中」

「私が指示スルまで待機(スタンバイ)

「了解」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


第3秋葉原アンダーパス。


ガード下にあるアンダーパス出口を左右から封鎖するSUV2台。完全武装のSWATが続々降り立ち、短機関銃を構える。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。


「バスを止めろ」


ウォルの指示でオペレーターがコマンドを入力。 


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アンダーパス付近。


「バスが減速してます」


追跡中の覆面パトカーからの報告。バスがアンダーパスに入って来る。出口は、SUV2台が左右から挟んで封鎖中だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


対策本部。


「何っ?」


オペレーターのPC画面に"アクセス拒否"のメッセージが明滅しているw


「システムを乗っ取られた!ログイン出来ないw」

「本部、コチラ追跡チーム。バスが止まらないぞ。逆に加速している!」

「封鎖線に突っ込むわ!」


SWAT隊長が無線に叫ぶ。


「後退して道を開けろ!GO Back down GO」


SWATが次々乗り込み2台のSUVが左右に引く。その鼻面を堂々と通過するバス。直後に追跡を始めるSWATのSUV。


「警部!捜査責任者宛に電話が入ってます」

万世橋警察署(アキバP.D.)、ラギィ警部」

「人質は18人。従って、要求は1億8000万円だ。バス会社の連中に伝えろ。金を用意しろとな。期限は7時だ」


電話は切れる。


「あと4時間ょ」


ラギィが4本指を立てる。車内では男性客が盗撮を始める。


第2章 終わりの始まり


SATO司令部に併設されたルイナのラボ。


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スルための防衛組織。

ルイナは、史上最年少で首相の首席アドバイザーになった超天才でヲタッキーズの顧問でもアル。


で、ヒドい悪臭w


「何コレ?何の匂い?」

「きゃー臭いわぁ!」

「助けて!」←


悪臭はギャレーから漂って来てる。


「牛糞の肥料ょ!確かに悪臭ね。SATOのレイカ司令官からも苦情が来たの。開発の道は険しいわ」

「スピア?貴女まで臭いンだけど」

「私達のシンクタンクの研究テーマにしたいの。牛糞の肥料を炭と混ぜ合わせてスマホ1年分の電力を生み出すわ」


スピアはルイナの相棒でストリート育ちのハッカーだ。

因みに、ルイナは車椅子にゴスロリがトレードマーク←


「貴女、ギャレーのミキサーを使った?」

「あ、ゴメン。使ったカモ」

「貴い試みだとは思うけど…シンクタンクの活動理念と一致しないわ」


車椅子から全員を代表して苦情を述べる超天才。


「あら、なぜ?」

「科学では、理論的研究を基に実験に踏み切る。でも、今回は理論と実験が逆転してると思うの」

「土台からデータを積み重ねるコトが重要だわ。そうは思わない?テリィたん」


思わない!ソレより棒についた牛糞を振り回すのヤメろw


「ラギィ?…え。バスジャック?OK。今から行くよ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SWATのSUV2台がバスを追跡中。


「コチラ追跡班。神田練塀町を通過。さらに追跡中です」

「行き先が不明だわ」

「ただ東秋葉原を走り回ってるだけ?」


報告を受けた本部の中は侃侃諤諤w


「ただ走り回ってる?何か目的があるハズょ」

「賢い奴等だから何か考えて仕掛けて来る。隊長!バスの緊急停止の件はどーなってます?失敗ですか?」

「SATOの超天才に聞いてみる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


直ちに本部は、ルイナとリモート会議の回線を開く。


「うーん犯人は、原始的な方法でシステムを乗っ取ったワケね恐らく」

「原始的?」

「あ。つまり、ハッキングょ」


上から目線のウォルが口角泡を飛ばして反論w


「システムのハッキングは不可能だと聞いてた」

「理論上、不可能なハッキングなどありません。みなさんがアクセスした時点で犯人の思うツボ。暗号解読アルゴリズムでパスワードが盗まれてる」

「なぜ我々はログイン出来ないンだ?」


ルイナの回答は簡潔だ。


「パスワードを変えられたのね」

「ルイナ。あのバスを止められる?」

「逆ハッキングしてみる。相棒のスピアと相談させて」


ラギィが拝む←


「あと3時間半なの。お願い」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原の路地を走るバス。その後ろをSUV2台が追う。

バスでは男性客が袖に隠したスマホで車内の盗撮を開始。


「ラギィ警部、大丈夫か?」

「ダメなら"プランB"で行くまでょ」

「おぉ"プランB"とは?」

「考え中ょ」


ガックリ肩を落とすウォル。


「警部、1番に犯人です」

「スピーカーにして…ラギィ警部」

「警察のSUVが見えるぞ」


犯人から苦情w


「そりゃアンタ達を追ってるからね」

「身代金は?」

「手配中ょ」

「そして、こういうんだろ"4時間じゃ足りない"」


大袈裟に驚いてみせるラギィ。


「良くわかるわね!何しろ大金だから」

「1つだけ言っておく。7時を過ぎたら1分に1人、乗客を殺す。ただし、人質が減ればその分だけ身代金も下げるつもりだ。念のために言っとくが、コチラは人質を全員殺しても構わナイと思ってる」

「人質の声を聞かせて」

「待ってろ」


スマホを誰かに渡す物音w


「…話せ。何でも良いから」

「犯人の言うとおりにして!息子がいるの」

「…言う通りにしてぇ息子がいるのぉ」


ママさんの声色をマネる犯人w


「期限は7時だ」


電話は切れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。


「ダメだわ。手の内を読まれてるw」

「ラギィ警部!早く"プランB"を考えルンだ!」

「警部。バス内部の画像です!」


突然、モニターに武器を振り回す犯人達の様子が写るw


「どうなってるの?」

「池袋警察のジャクが偶然乗り合わせてました。10分前からリモート回線で警察に連絡、バス内部の様子を動画で流し続けてます。画質が悪いので顔認証システムが読み込むかどうか…」

「この前、確かルイナが反射を利用して、えっと確か…」


前の事件を振り返り、頭をヒネるラギィ。


「微分同相ょラギィ」

「ルイナ、ソレって何?美味しいの?」

「まあね。ねぇ犯人はバス会社の人間じゃないかしら」

「…確かにハイジャック防止システムを知り過ぎてるモノね…あ、もしもし」


スマホに出るラギィ。怪しい電話だw


「ラギィ、誰だょ?」

「明日、桜田門《警視庁》で支局長と会うの」

「だから、何で?」


ジラすラギィ。僕は辛抱強く待つ。


「昇進話カモ。本庁の組織犯罪班に空きが出来た」

「それで?」

「チャンスだとは思ってるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原では、相変わらずバスをSUV2台が追い回す。

一方、ルイナのラボではハッカーのスピアが腕まくり。


「ふーん相手もソレなりに腕の立つハッカーみたいね」

「128ビットの暗号鍵とは厄介だわ…量子アルゴリズムを使ってみる?」

「ルイナ。ソレは次の手ょ」


僕が入って来たのは、このタイミングだ。


「お邪魔かな」

「4人の男が観光バスを乗っ取って1億8000万円を要求してるけど、何?テリィたん」

「忙しそうだが1つ言わせてくれ。ガスキ博士は、スピアの牛糞スマホに乗り気だった」


瞬時にルイナの目が三角にw


「あのね、テリィたん。天体物理学のブレカと話したら、私達のシンクタンクは、NASAの"宇宙シンクタンク"をお手本にすべきだと言ってたわ」

「非現実的ょ!」

「何でょスピア。牛糞よりも現実的でしょ」

「今はヤメてくれ。頼む」


僕は、スゴスゴと出て逝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


対策本部。バス内部の盗撮動画を全員が見ている。


「犯人一味の1人が顔認証システムにヒットしました。バス会社のメカニックのクレポ。3ヶ月前に薬物使用でクビになってます」

「バスが載せてるテロ対策アルゴリズムには詳しい?」

「知りつくしてる」←


ウォルの唸るような声。


「もしかして、アンタが解雇したの?」

「仕事が出来ない奴はクビだ!」

「あら、大働きしてるじゃないの」


ソコへ、刑事に連れられた女性が対策本部に現れる。


「ケトンさんです。乗客の婚約者とかで…」

「彼は、池袋P.D.で働いてるの!」

「まさか…バス内を盗撮してる警官のフィアンセ?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


フィアンセから事情聴取するラギィ。


「バスジャックをどうして知りましたか?」

「 SATOに連絡しろとジャクがメールして来ました。彼は、無事でしょうか?」

「申し訳ありませんが、事件の事は話せません」


フィアンセのケトンは肩を落とす。


「そうですか」

「秋葉原にお知り合いは?」

「いません。ジャクとは休暇で来ています」


マジックミラー越しに隣室の僕と顔を見合わすラギィ。


「今週末、私達は東秋葉原の教会で結婚する予定でした。私だけバスに乗らなかった。ウェディングドレスの着付けがあって…ねぇ彼は助かるわょね?警部さん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕とラギィは捜査本部に戻る。


「バスはどんな感じ?」

「あ、警部。神田リバー水上空港に向かってます」

「海外へ高飛びする気ね」


別のオペレーターが声をかける。


「警部。SATO司令部とVideo conferenceがon-lineです」

「ありがとう。スピア、バスを緊急停止出来そう?」

「ええ。いつでも」


万世橋(アキバポリス)SWATの隊長がラギィに耳打ちスル。


「連絡道路で隔離出来れば、ウチのスナイパーが仕留める」

「わかってる。念のためヲタッキーズも待機させるわ」

「わかった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原を抜け、昭和通りを神田リバーに向けて南下するバス。派手にサイレンを鳴らしピタリと追う黒いSUVが2台。


「おい、お前!何を見てやがる。立て!」


車内を盗撮中のジャクを立たせるバスジャック犯。


「お前は、コッチにいろ。座れ。ココに座ってろ。目つきが怪しい。おい、コイツから目を離すな」


ボス格の男が手下に命令スル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


待ち伏せ場所(キルゾーン)は、和泉橋の南詰めだ。


「コチラ、封鎖線。バスを視認」

「SWATは配置についた。準備万端だ」

「ヲタッキーズは?」


ヲタッキーズは、僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロインによる民間軍事会社(PMC)で、南秋葉原条約機構(SATO)の傘下にアル。


「ラギィ、妖精担当のエアリとロケットガールのマリレょ。今回もよろしくね…警部自ら現場?私達の出番はアルの?」

「うーんソレがまだまだコレからって感じょ」

「警部、犯人から1番に電話です」


和泉橋南詰めまで出張ったラギィに犯人から電話だw


「ラギィ」

「…外か?ランチでも食ってるのか?」

「焼肉定食。で、何が望み?」


呆気にとられた犯人だが、気を取り直し再び強気に←


「金だが4袋に分けろ。5000円札と10000札だ。新札や連番を入れるな。ソレから袋に何も仕込むなょ」

「引き渡しはどーするの?」

「また連絡スル」


電話は切れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


和泉橋南詰めの封鎖線。


「来たぞ!バス、接近中!」

「ココで決着をつける!スナイパー?」

待機(スタンバイ)!」


バスが目前に迫る。


「停止させないと」

「スピア!緊急停止コマンド!」

「間に合わない!退避!」


次の瞬間、急ブレーキ!


追跡中のSUVが素早く左右に散る。ヘッドホン装着のスナイパーが射撃位置に走り、一斉に狙いをつける。

追跡してたSUVからは、完全武装のSWATが飛び出して、短機関銃や異次元人用の音波銃で狙いをつける。


「何だ?何をしやがったンだ?ラギィ!」

「話し合お?」

「ダメだ!よく聞け!」


犯人に拳銃を突きつけられ、ママさんは絶叫w


「今すぐバスのエンジンをかけろ。さもないと、次は断末魔になるぞ!」

「やめて!離してちょうだい!」

「ラギィ、何人だ?何人、人質を殺せば気が済む?2人か7人か10人か?」


吠える犯人。泣き叫ぶママさん。


「隊長、狙撃は?」

「窓に塗られたスプレーは赤外線も遮断してるw特殊なサーモセンサーを使わないと狙撃は無理だ」

「ソレじゃ時間がナイわ…」


しかし、犯人は容赦ない。


「何も聞こえないぞ。ラギィ、ソレがお前の答えだな?」


犯人は、引き金に指をかける。その時…


「待て!俺は警官だ。殺すなら俺にしろ!」


ジャクが両手を上げ、立ち上がる。

その瞬間、袖口のスマホを網棚へ。


「俺は、池袋警察署(P.D.)のジャクだ!」


テロリスト全員が一斉に狙いをつける。頭を抱えるラギィ。捜査本部では、その様子をフィアンセのケトンが見ている。


「おや?警官のお友達が乗ってたぞ?さぁ直ぐにバスを動かせ。さもないとコイツを放り出す!死体でな」


第3章 カモられた警察


バス内部。


「ジャクさんょ。コッチに来て座れょ。おい、ラギィ。警察が乗ってたぞ!」

「待ってょ。少し落ち着いて!」

「バスを動かさないと、おまわりさんは死体袋行きだ」


犯人は、ジャクの頭を拳銃でグリグリするw


「とにかく、待って。しばらく時間がかかるわ」

「おい。バカにするな」

「してない!人質と身代金を交換したいンでしょ?時間をちょうだい」


話に乗る犯人。


「あとどれくらいだ?」

「だ・か・ら。今から人を呼ぶの」

「1時間だけ待ってやる」


再び電話は切れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部に戻ったラギィは、ウォルとスレ違う。


「あら?何処へ行くんですか?」

「バス会社CEOと話す」

「金の手配を?」


うなずくウォル。上から目線が復活してるw


「私の責任問題だ。乗客18人を救いたい」

「奴等の動きは読めナイわ。金の引き渡し後に人質を殺すカモしれない。今なら人質に望みはアル」

「全員道連れに爆死したら?」


推し黙るラギィを尻目に本部を出て逝くウォル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。


「隊長。なぜSWATは狙撃出来なかったの?」

「そもそも車内の温度を上げてサーモスコープを使えなくしてる。無線も遮断され傍受不可能でターゲットを絞れなかった」

「以前、ルイナが熱反応を使ってたわょね?今回も出来ないかしら?」


ラギィがリモート回線でルイナに聞く。


「どうかしら?」

「60分じゃ世界を救うのは無理ょ。あ、あと54分ね。今のトコロ、犯人が全ての面で主導権を握ってるわ」

「コッチには盗撮動画がアルけど」


ルイナは暫し考える。


「ボクセル単位のキャプチャがあるわ。建築家のためのCADプログラムなんだけど。1つの部屋をあらゆる角度から見られるの。人間や家具が動くと、アルゴリズムが光や影や奥行きを算出する。アルゴリズムを逆に走らせれば、物体の位置を遡求して特定出来る。精度はミリ単位。動画とバスの製造仕様書を使ってバス車内にプログラムを適用出来ると思う」

「バスの中を部屋に見立てるのね?」

「YES。そして、犯人は家具に見立てるの。コレでターゲットの狙撃データが出せる…と思う」


ラギィは即決。


「始めて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の裏窓から神田リバーを見ているケトン。


「何も教えてくれないのね。来なければ良かったわ」

「貴女は間違ってナイわ」

「私だって覚悟はしてる。いつ彼が犠牲になるかわからない仕事だモノ」


小さくうなずくヲタッキーズのエアリ。メイド服だw


「あと2日で結婚なのに。私、彼の妻になれるのかしら」

「みんな、全力を尽くしてるわ」

「でも…」


涙ぐむケトン。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。お隣の捜査本部。


「無線傍受も出来ズ、スマホの盗撮動画が見えるだけだ。突入して始末しよう。SWATが責任をとる」

「待って。奴の目的を知りたいの」

「人質18人と身代金1800万ドルだ。ソレで充分だろ?」


屈強だが、何処か鈍重感もアルSWAT隊長は強行論だ。


「どう締めくくるつもりかがワカラナイ」

「パトカーや飛行艇を要求し水上空港へ行くのさ。今、犯人を撃てば人質は全員助かる」

「でも、狙撃出来ないンでしょ?とにかく待つの」


渋々うなずく隊長。


「わかった。警部の指示に従うょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は、ルイナのラボを訪れる。


「順調?」

「もうすぐょ」

「状況は悪化してる」

「大丈夫。私達にはキャプチャがアルわ」


僕は、溜め息をつく。


「違うょ。ルイナとスピアの話だ。このママじゃ殴り合いになるぜ?」

「この事件が落ち着いたら、テリィたんが止めてょ」

「君達2人も一応大人だろ?」


今度は超天才が溜め息をつく。


「"一応"だから。なぜ私がシンクタンクのリーダーをやらなきゃなの?」

「君が発起人だからだ」

「…出来たわ、キャプチャ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「警部!犯人の身元がわかりました。クレポはバス会社の整備士。主犯のバクリは宝石店や銀行狙いの強盗犯です。ヘイズは、麻薬の運び屋で元パイロット!」


モニターに3人の顔画像が次々と並ぶ。


「やはり高飛びスル気ね」

「ハッカーも面が割れました。名前はキロフ。腕は一流のようです。ただし、全員、暴力犯罪の前歴はありません」

「今回が初めて?ソレにしては…奴等のつながりは?」


部下の刑事が履歴を読み込む。


「全員、全国各地で逮捕歴を残してますが…共通点が見当たりません」

「ネットで出会ったとでも言うの?ルイナの方は?」

「5分前の時点では、未だバグを処理してましたが…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


バスの中では主犯のバクリが鷹揚に告げる。


「全員落ち着け。死ぬのはたった数人だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「今、キャプチャのアプリを起動してるわ」

「隊長、超天才からのスペシャル画像が行くわょ」

「花田町32、構えろ」


スナイパー"花田町32"の照準スコープに3D画像。

バスの中の通路を歩く犯人の画像が浮かび上がるw


「花田町32、ロックオン」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィ警部、残念だが時間切れだ」

「あらぁ。ちょっと待ってょ」

「フザけるな。何か企んでるだろ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「旅籠町16、2人目にロックオン」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ホント、要求に従うだけょ」

「俺の思い通りだと錯覚させたいんだな?まぁ実際俺の思い通りだけどな」

「まったくだわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「台所町22、3人目にロックオン」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「お願い。あと5分だけ」

「5分?どういうつもりだ?突入の準備中か?」

「まさか」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ルイナ、4人目のデータは?」

「ソレが… 位置が特定出来ないのょ!」

「何ですって?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


主犯の網棚のスマホを見つけるw


「まさか。このクソ野郎が!警官を殺すと言ったが、もう1人殺してやる。ママさんを抑えろ!」

「待て待て待て。待ってょ!」

「おい!ママさんを連れて来い!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部は騒然となる。


「奴に盗撮がバレた!」

「人質が殺される。3人だけでも狙撃して突入だ」

「ルイナ、どーなってるの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「殺した人数分、身代金を割り引いてやる。バス会社の連中に、そう伝えてやれ!」

「きゃー!ヤメて!お願い!」

「待て!俺が撮影してたんだ!この人は関係ない!」


ママさんの前に立ち塞がる、池袋P.D.のジャク。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「田代町17、4人目にロックオン!」


ラギィ、SWAT隊長、ウォルの3人が同時に叫ぶ。


「撃て!」


4発のライフル弾が車内に飛び込み、窓ガラスが粉々に割れる。同時にバスの中へ、次々突入して逝く警官隊。


「頼む!コレを外してくれ!」


爆弾ベストを着た運転手が叫ぶ。さらに…


「空っぽだ…」

「突入班、どーした?応答しろ!」

「誰も乗っていません!バスは無人だ!」


運転席から絶叫。


「このバスに乗ってるのは、俺だけだ。早く爆弾ベストを脱がしてくれ!早く!」


突入班が爆弾ベストをチェック。

アース線を抜くと運転手は悲鳴←


「誤配線だ。最初から爆発させる気はなかった」

「犯人達から…見られてます」

「何だと?!」


突入班員が指差す先にビデオカメラ。

主犯のバクリがあざけるように話す。


「おや?どーやらバスを乗り間違えたよーだな」


ラギィは、頭を抱える。


「俺が盗撮に気付かないとでも思ったか。全て俺の思い通りだ。よく見てろ!」


ジャクに拳銃を向け何回も引き金を引く。シャツを真っ赤に染めて崩れ落ちるジャク。

一斉に目をそらす本部、現場の全員。肩をすぼめてみせたバクリはカメラを叩き壊す。


「何てコト…」


砂嵐状態のモニターをバックに、捜査本部は苦悩を深める。


第4章 最後の突入


現場で運転手に詰め寄るラギィ。


「何があったの? 説明して!」

「バスを乗っ取られて路地に入ると別のバスが待っててみんな乗り換えた。奴等は俺に爆弾ベルトを巻きつけ、非常ボタンを押せと命令したんだ」

「くそ。ウチがバスを追跡し始める前のコトね」


ラギィは唇を噛む。


「その後、俺は無線で指示された通りにバスを運転し、ココで警察が来るのを待ってた」

「その間に俺達を巻いてどこかに逃げたンだな」

「完全にカモられたわ」


意外にもSWAT隊長がラギィの肩に手を置く。


「警部は、正しい判断をしたと思う」

「いいえ。私が狙撃を命じたせいょ。そして、勇敢な警官が死んだ」

「誰も未来は読めないょ警部」


ラギィはつぶやく。


「ソレを読むのが私の仕事なの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


急展開にヲタッキーズ率いるムーンライトセレナーダーも万世橋(アキバポリス)の捜査本部に顔を出す。

ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿だ。


「ムーンライトセレナーダー、2台目のバスが昨日、盗まれてた。犯人達は、全て計画済みだった。警官の存在だけが予定外だったみたい」

「警官…婚約者がいたわね。何て伝えるの?」

「立派な最後だったとしか…ねぇ何て言えば良いかしら?」

「わかった。私から伝えるから」


アッサリ答えるムーンライトセレナーダー。ソコへ…


「警部。1番に犯人から電話です」

「ラギィ、私が出るわ…もしもし。ムーンライトセレナーダーだけど」

「ムーンライトセレナーダー?いきなりSATOのお出ましかょ?」


明らかに動揺スル犯人。

 

「ラギィ警部は?クビか?」

「いいえ、トイレょ。多分長いわ。何か用?」

「…わ、わかった。2時間無駄にしたから、そろそろ本題に入ろうぜ。後90分だ」

「あら、ダメょ。期限は7時でしょ」

「1人が死んだから30分繰り上げる。以上だ」


バクリは逃げるように電話を切る。


「要求を変えてきたわ。ルイナ、聞いてた?」

「ええ。ラボからモニターしてた。揺さぶりをかけてきた。陽動作戦に期限の変更、そして脅迫。まさに逆ゲーム理論そのモノだわ。セオリーどおりね」

「逆ゲーム理論?学校じゃ習ってないな。美味いのか?」


ラギィの失敗で、再び上から目線復活のウォルが口を挟む。


「ウォルさん。ポーカーは?」

「大好物だ」

「OK。ポーカーと同じょ。2人に有限数のカードが配られる。ラギィが有限の手法を持つように犯人のバクリにも有限の切り札がある。バクリは、コッチの傾向を熟知し、今は優位に立ってるわ。ラギィの持ち札は丸見え状態。でも、ゲームを進める内に、次第にバクリの手札も見えてくる。つまり彼等の意思決定プロセスが明らかになる。だから、犯人の動きを分析すれば、このゲームを互角に出来るワケ」


ウォルは半分も理解出来ない。辛うじて上から目線キープ。


「事件はゲーセンじゃなく、現場で起きルンだ!既に1人死んでる。次は私が交渉スル」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃。万世橋(アキバポリス)の会議室。


「ジャクは…貴女のフィアンセは勇敢だったわ」

「そうカモしれないけど…今は未だホテルには戻りたくないの。だって、彼の持ち物ばかりだモノ」

「ヲタッキーズに送らせるわ」


目を伏せるケトン。


「ねぇムーンライトセレナーダー。あと1〜2時間ココに残ってもいいかしら。少し心を落ち着かせたいの」

「もちろんょ。じゃあ紅茶のおかわりを持ってくるわ」


ミユリさんは優雅に微笑み、カップを持ち去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「このカップを鑑識に回して指紋を採取して。大至急」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕の大好きな萌え系2人がギャレーで口論中w


「変ょ!」

「何が?」

「犯人のプレイスタイル。ムラがあるし、素人のミスを犯しているわ」

「だから、素人ナンでしょ」

「でも、変数が…」


片や車椅子の超天才ルイナ。

片やスク水ハッカースピア。


「もうヤメてくれょ!少しは大人になれょ」

「え。なぁに、テリィたん」

「せっかく有意義な意見交換をしてるのに」


2人はキョトンとした顔で僕を見る。


「あれ?水掛け論…だょね?」

「テリィたんには、そう聞こえたカモしれないけど、お互いの利点を話し合ってただけょ」

「しかも、譲り合った結果、新たな論点が見つかったわ」


やや。勇み足だったかな?女の友情、複雑怪奇←

           (そして男の友情はゴムより薄いw)


「そ、そーか。ソレならOKだ。じゃソレを"スピア逆説"と名付けて研究したらどーかな」

「え。そーね。でもネーミングは"ルイナ逆説"の方が聞こえが良いわ」

「いえいえスピアこそ(ダークウェブでのw)名声が…」


途端に譲り合って、どー見ても僕が丸く納めたように思えルンだけど、その功績を認めさせる前に超天才のヒラメキが…


「逆説?そうょ!パラドックスだわ!」

「え。何が?」

「アレは純粋なミスじゃなかった。犯人はワザとミスしてる。私、行かなきゃ…」


ルイナは、車椅子の超スピードでギャレーを飛び出す。思わズ顔を見合わせる、僕とスク水大好きハッカーのスピア。


「テリィたん。ルイナが何かヒラメいたみたい。もしかして、シンクタンクの初功績?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の中を、ティーカップ片手に、心配そうな表情を浮かべてウロウロと歩き回る、殺された警官の許嫁ケトン。


「池袋時代のヲタ友に池袋P.D.のジャクって警官を当たってもらった。そしたら、彼は今日も西口交番で勤務してるって。もちろん、誰とも婚約してナイ」

「え。ムーンライトセレナーダー、それマジ?じゃ彼女は誰なの?」

「指紋認証にかけたら詐欺の常習犯だった。ケトリ・リエジ。お得意はナリスマシ詐欺で、バクリとは何度も組んでる。今回、彼女は私達の動きをバスの中のバクリに報告するスパイをやってる」


ラギィは、心の底からウンザリした顔をスル。


「何でわかったの?ムーンライトセレナーダー」

「普通の遺族と違って、ヤタラ本部に残りたがルンだモノ。メッチャ怪しい。テリィ様の浮気みたい」←

「そっか。捜査の行方を見守るためね…で、どーする?」


声を落とすムーンライトセレナーダー。


「このママ、泳がしときましょ。ソンなコトより、池袋のヲタ友から重要情報ょ。一味の共通点がわかった」

「ウォルね!彼って怪しい…」

「彼は単なる嫌味なオッサンょ。コレを見て」


本部のモニターに、改めて犯人達の顔写真が並ぶ。


「クレポ、ヘイズ、キロフ、バクリ。全員が、池袋で腐女子をスーパーヒロインに覚醒させる"覚醒剤"密売容疑で捕まってる」

「強制捜査ね?でも、逮捕された場所がバラバラだわ」

「でも、彼等の取り調べを担当したのは、当時桜田門(警視庁)から出向していた…」


正面のモニターに見慣れた顔写真w


「ジャク?!ウソでしょ!」

「つまり、元警官がバスジャック犯をまとめてたワケ」

「でも…でも、彼は動画を本部に送って犯行を止めようとしたわ!きっと心変わりしたのね?女性や子供を見て、警官としての使命感が蘇って…」


別モニターに写ってるルイナが答える。


「ブブー。残念だけどハズレょ。バクリ達の戦略を検討してみたら、犯行の中に色々と矛盾があるコトがわかった。でも、プロのイカサマ師は、ソレをイカサマだとは気づかせない。ヤラレタわ」

「あぁ何てコトw」

「手の内を見せたのも、全て彼等の計算だった。非常ボタンや空港への道筋は、作戦ミスじゃなくて手の込んだイカサマだったの。で、もう1つ世紀の大イカサマが残ってる。ね?ムーンライトセレナーダー?」


みんなにウィンクするムーンライトセレナーダー。


「動画を見ましょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"…盗撮に気付かないとでも思ったか。全て俺の思い通りだ。よく見てろ…"


残虐な警官の射殺シーンだ…が、よーく見ると?


「最後をコマ送りにして」

「…発砲する前にシャツが血に染まってる?血が吹き出すのが銃声より微かに早いぞ?」

「冗談だろ!空砲だったのか?!」


一同、大きくのけ反るw


「もう一度再生して。この2カ所を拡大してくれる?」


別画面にPCを叩くキロフの手元が写る。銃声より早いw


「このハッカーが仕掛けた血糊を遠隔操作で破裂させてる!」

「ヤラレタ!」

「動画も殺害も全てお芝居。完全にカモられたわw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


タダの嫌味なオッサン、ウォルも怒るw


「何ぃ?あの女もグルだったのか?!」

「しっ。声が大きい!静かにして…保険金狙いょ。ズッと私達を監視してた」

「…じゃ死者は出てないのか」


急に涙ぐむウォル。意外に涙脆いw


「でも、まだ17人の人質がいて、いつ殺されるかわからないぞ」

「その通り。でも、今までのどの挙動を見ても、彼等は非暴力の傾向にアルわ。人殺しを避けてる。爆弾ベストは最初から不発だったし、警官も殺されてない」

「そもそも暴力犯罪の前科がある者は皆無の集団ょ」


画面の中からルイナが補足。


「犯人は、人殺しを装っているだけ。私達に、そう錯覚させて、ソレを武器として使ってる」

「しかし、ハッタリと決めつけるのもリスクが高いわ」

「ポーカーを思い出して。力関係が入れ替わった。私達は、犯人の切り札を知った。だから、今は私達が有利ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。電話が鳴る。


「大丈夫?」

「任せてくれ」

「頼むわょオッサン!」


ウォルが電話に出る。


「私はジムシ・ウォル。バス会社の保安責任者だ」

「やっと出て来たな。警察やヲタッキーズは?」

「全員クビにした。以後、私が仕切る」←


思わズ吹き出すムーンライトセレナーダー&ラギィ。


「今からアンタがボスってワケか。OK、ボス!ちょっとした変更がある。送金先は、上海のオフショア口座だ。メールで詳細を送ったぞ」

「承知した」

「入金を確認後、人質の居場所を連絡してやる。おとなしく従えば人質は解放されて警官も埋葬出来るぞ」


ウォルは(ムダだがw)食い下がる。


「教えてくれ。ホントに約束を守ると言う保証が欲しい」

「ソンな保証を与える犯人などいない。唯一の保証は、6時半までに金を手配しなければ、少年は母親を失うってコトだけだ」

「きゃー。やめてぇ!助けて!」


ママさんの絶叫は涙声に変わり、電話は切れる。


「よし。コレで後は待つだけね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


飛行艇専用の神田リバー水上空港。発着ロビー。


「さっき、警察を出たわ。間も無く送金されるハズょ…OK。ジャクと隠れ家に行くわ」


歩きスマホのケトンは、ロビーに入って来たジャクと合流。


「あーら、ジャクさん。貴方、死んだんじゃなかったっけ?」

「1億8000万円と聞いて生き返った…ん?どうした?」

「あ、あわわ…」


メイド服にレオタードのムーンライトセレナーダーがスタスタとロビーに入って来る。目を丸くして絶句するケトン。


「お揃いね。でも、貴女達はハネムーンには行けないわ」


ジャクが拳銃を抜くが、一瞬早くヲタッキーズのエアリが取り押さえる。逃げるケトンはマリレが襟首をツマむ。


「バスの場所を教えて。ソレとも1日に2度死にたい?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


裏アキバとも呼ばれる神田宮本町にある廃倉庫。完全武装のSWATが忍び寄る。

廃倉庫の中ではライトに照らし出された観光バスの周囲を見張りが見回ってる。


「バスを確認。窓がスプレーされてて車内は見えない。3人が音波銃を持って見張ってる。人質の姿は見えないから、恐らく車内だ。どーする?警部」

「隊長、SWATで周りの見張りを片付けられる?あと5分あるの。やれるかしら」

「ソレが仕事だょ。バクリは?」


ラギィはキッパリと告げる。


「彼は…私にやらせて」

「わかった。おい、お前。千円貸せ」

「隊長、こんな時にタバコ代ですか?」

「いいから貸せ。あと釘が落ちてたら拾え」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


バスの中はバクリ1人だ。武器を手に通路をウロつく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


千円札が風に舞う。思わズ追いかける見張りの背後から口を押さえて取り押さえるSWAT隊長。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「今、何時だ?」


バクリは、人質の腕を逆手にとって腕時計を確認w


「この時計、正確だろうな?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


観光バスの後部タイヤに釘が刺さっている。見張り2人が屈んでタイヤを見ていると…


「おい。前を向け」


振り返ると目の前に短機関銃。2人共ホールドアップw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


6時半。バクリからの電話が入る。


「万世橋P.D.ラギィ警部」

「やや?またアンタか?バス会社のオッサンは?」

「アンタを包囲したわ」


慌てふためくバクリ。小声でトランシーバーに問う。


「キロフ、ヘイズ、クレポ。さっさと応答しろ(カムインカムイン)

「あら。誰も出ないの?仕方ないから私と話し合う?」

「話し合う?俺達の要求がわかってんのか? 」


どこ吹く風のラギィ。


「アンタ、逃げ場はナイわょ」

「逃げ場がないって?それは間違いだ。大間違いだぞ!全員立ち上がれ。移動するぞ。バスから降りるんだ。さっさと降りろ。馬鹿な真似はするな」

「コチラSWAT。人質がバスから降りて来る」


乗降口からゾロゾロと現れる人質。


「その場にいろ。全員俺の盾になれ。俺の前に集まれ!」

「スナイパー、未だ発砲するな」

「急げ。動いたら撃つぞ。グズグズすんな。そこをどけ。俺は、ママさんと出て行く」


人質を盾にしながら包囲突破を図るバクリ。


「そうはさせないわ」


バクリの前に両手を上げて立ち塞がるラギィ。


「またお前かょ。あと何人殺して欲しいンだ」

「あら、アンタは殺せないわ。みなさん、聞いて。1人ずつその男から離れるの。後は私達が保護します」

「動くんじゃねえょバカかお前。逃げた奴は背中から撃つぞ!」

「大丈夫。この男は拳銃は撃てません」


人質から悲鳴が上がる。


「目の前で警官が撃ち殺されたのょ!窓から遺体を捨てたわ!私達、見てたのょ!」

「みなさん。撃ち殺されたのは、この警官ですか?ムーンライトセレナーダー、連れて来て」

「はーい」


ムーンライトセレナーダーとエアリ&マリレがジャクとケトンを引っ立てる。ざわめく人質。誰よりバクリが驚いてるw


「みなさん。あの銃は空砲でした。離れても奴は危害を加えられません」

「え。空砲?マジ?」

「行くな!逃げるんじゃない!」


盾となっていた人質が、1人また1人と走って逃げ出す。


「ヤメろ!戻って来い!」

「さぁ!みなさん、コチラへ!安全です!」

「逃げるなょ!おい戻れ!コッチに来いって…」


ついにママさんのゲーム好きな息子までが逃げ出し、コレにはママさんは気も狂わんばかりw


「トッド行かないで!ママを置いて行かないでょ!」


ところが、子供は振り向きもせズにヒタスラ逃げる←


「戻って来い!」


バクリも涙声で叫ぶ。父親でもナイのに…

その一瞬の隙をついて、ママさんが肘鉄!


「トッド!逃げましょう!」

「バクリ、その銃を捨てるんだ!」

「嫌だ!捨てるもんか!」


短機関銃を構えにじりよるSWAT。


「面倒くせぇ。警部、頭を撃っちゃおう!」

「わ、わ、わかった銃を捨てよう」

「ゆっくりだ!銃を置いて後を向け」


次の瞬間、SWATが殺到。バクリをバスに叩きつける。


「やめろって!わかったょ痛ぇ!」

「やはり空砲でしたか?ルイナの言う通り?」

「そうみたいょ…」


ところが、天に向けて引金を引いたら…ドキューン!


「あら。1発入ってたわ」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その日の午後、捜査本部は解散になる。片付けの進む本部の脇の通路を連行されて逝くジャクとケトン。


「ラギィは、桜田門(けいしちょう)に呼ばれたらしいな。昇進話を受けるつもりカモ」

「いずれわかりますょテリィ様」

「あんな奴でも生きてて良かったな」


エレベーターのドアの閉まり間際に振り向くジャク。


「ラギィは集中していたし、立派なリーダーだ。死者は出なかった。自信を持つべきだね」

「そうですね。テリィ様もナイスリーダーシップです」

「え。何のコト?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンクに改装したらヤタラと居心地良くて常連以下が滞留。メイド長(ミユリさん)はオカンムリだw


でも、今宵は…


「かんぱーい!シャンパンの栓を抜けぇ!」

「パーティーの始まりょ!」

「私達のシンクタンクの方向性が決まった。あと代表も!」


リモート呑みでラボから参戦中のルイナが割り込む。


「CEOはテリィたんょ!」

「え。いつから?」

「今日の午後。スピアがラギィに空砲撃たせてビックリさせてる間にクーデターを起こした。多数決で決定したから」


やや?あのラギィの1発は空砲だったのか?


「当たり前でしょ?私のアルゴリズム解析が間違ってたコトある?バクリに人は殺せない」

「で!せっかくだから、ラギィが引金を引くのに合わせてスピアに銃声を被せてもらった?」

「ジャストだったでしょ?キロフなんか目じゃナイわ」


やれやれ。こんな海千山千の萌え系美人に囲まれて、僕は上手くやっていけるのだろうか。


「テリィ様。シンクタンクのCEO、辞退なさいます?」

「考え中だょミユリさん。どう思う?」

「ヲタッキーズのCEOもお願いしてますし何とも…でも、絶対に辞退しちゃダメなのは…私のTO(トップヲタク)


僕は、ミユリさんとシャンパンで乾杯をスル。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"バスジャック"をテーマに、主犯の詐欺師、手下のメカニック、元パイロット、ハッカー、女スパイ、バスに乗り合わせた警官、バス会社の保安責任者、人質の母子、バスジャックを追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。


さらに、主人公達のシンクタンク設立などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、まだマスクの多い卒業式シーズンを迎えた秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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