08 イレストバック攻防戦⑤
時は少し遡る。
時折り、穴を掘っていることを悟らせ内容に、ヴィンラル軍は定期的に挑発行為を行う以外は静かであった。
土の魔法使いを大動員し、静かに確実に穴を掘っていた。
「いい?一回使えれば良い程度だから、そこまで広くやったり強固に作る必要はないわ!今回は速さと静かさが大事よ!」
ルージュが陣頭指揮を取る。
そうして数日掛けて、ヴィンラル軍の陣地からイレストバックの真下まで穴を掘り進めた。
「行くわよ!」
ルージュの合図で一気に穴からヴィンラル兵が飛び出して行く。
全く予期していなかったエスペランド兵とジャーナンド兵は、次々とヴィンラル兵の手に掛かって行く。
「敵の司令部を目指すわよ!」
「了解っす!」
順調に司令部に向かって進んでいると、敵魔導兵が空から現れ銃撃を開始する。
こちらの魔導鎧は呆気なく貫通し、兵士達は倒れて行く。
「ジョーヌ!貴女は敵の司令部を目指して!私は上の敵をやるわ」
「わかったっす」
ルージュは空に飛び立って行く。
敵の魔法使い(空を飛ぶ者達は基本的に魔法使いと呼称)は、統制された動きでこちらに反撃の隙を与えない。
「ええい!鬱陶しい!」
こちらが攻撃しようとすると、牽制射撃をされ攻撃が出来ない。
魔法使いは同時に使用出来る魔法は三つまでである。
ルージュは飛行魔法と防御魔法に、探知魔法の三つを使用しているのである。
探知魔法で敵の位置を探らないと、攻撃を喰らう恐れがある為である。
(敵は見たところ飛行魔法とあれは銃弾に魔法を付与しているのかしら?見た事ない技術ね。まさか魔法大国であるヴィンラル合衆国が知らない魔法技術があるとはね。あと一つの魔法は何?この統制された動きを見るに意思疎通系の魔法?ええい!わからないわ)
ルージュを援護しようとやって来た味方は、あっさりと敵に撃墜されてしまう。
(手強いわね。ここまでの練度を持った部隊は我が国でも極一部だわ)
内心焦っているルージュだが、それを表に出す事はなく澄まし顔であった。
(これ以上は無理ね)
抜け出すタイミングが分からなかったが、そこにジョーヌが介入して来る。
「大丈夫っすか?」
「助かったわ」
素直にルージュは礼を言う。
ジョーヌの助力もあり、何とかこの危地から抜け出す事に成功した。
地上のヴィンラル軍も抵抗が激しくなって来たので、撤退を開始した。
撤退に成功したヴィンラル軍であったが、少なくない被害を出していた。
今回の奇襲作戦でイレストバックを奪還出来なかった為に、これ以上の作戦行動には支障を来たす程であった。
一番の問題は物資の不足である。
急遽引き返した為に、元々それ程余剰な物資はなくこの数日の戦いにより多くの物資を消費した事により、これ以上の攻勢は限界であった。
「仕方ないわ。退くわよ」
ルージュは撤退を決断した。
だが、素直に撤退させてはくれず長距離砲による追撃があった。
魔導兵や魔法使いを総動員し、防御に徹したがそれでも被害が出た。
こうして、イレストバックの攻防戦は一旦は幕を閉じた。