05 イレストバック攻防戦②
エスペランド軍は、凄まじい速さで既に街中に侵入していた。
「噂には聞いていたが、実際に目にすると凄まじいな」
ジャーナンド帝国軍、第1機甲師団、師団長のイエルク侯爵は感嘆していた。
ジャーナンド帝国軍は、エスペランド帝国軍の様に細かい階級はなく未だに貴族制の名残もあり、上級指揮官の殆どは貴族である。
一応他の国ほど貴族の力は強くはなく、実力主義な国風である為に優秀な平民も、指揮官になれる。
しかしそれでも中隊長クラスまでで、あり大隊長以上は全て貴族である。
優秀な中のほんの一握りが、貴族に叙され上級指揮官にまでなれるのである。
イエルク侯爵は高位貴族ではあるが、平民に対して偏見もなく優秀な者なら引き上げたりする為に人望も厚く、柔軟な思考を持っている為に新しく開発された戦車にもいち早く適用し、4つしかない機甲師団のうちの一つを任される様になったのである。
「我々も負けては居られないな。戦車を全両投入せよ。一点突破するぞ」
「了解しました」
予備に残していた数両の戦車も投入し、ヴィンラル軍に総攻撃を掛ける。
ジャーナンド帝国軍の戦車は前面の分厚い装甲では、ヴィンラル軍の弩を跳ね返せるが、装甲が前面に比べると薄い側面や後方だと当たりどころによっては装甲を貫通してしまう。
その為に戦車を密集隊形を取らせ、側面をカバーさせながら突撃させる。
ジャーナンド帝国軍の数少ない魔導兵部隊も投入する。
そうして漸くジャーナンド帝国軍も、市街戦に突入する。
だが、そこでヴィンラル軍の予想以上の抵抗に合う。
ヴィンラル軍のオルディネス級(飛行可能な魔法使い)の魔導兵が警備の薄くなったジャーナンド軍の司令部を襲う。
対空機関砲を撃つが、数が少なく防衛線を突破されてしまう。
「閣下!お逃げ下さい!」
「何処にだ?今此処に逃げ場はない!応戦するぞ!」
イエルク侯爵自身も拳銃を手に取り、空に向かって発砲する。
だが、撃墜は出来ず遂にイエルク侯爵の頭上に敵魔導兵が到着し、弩を向ける。
発射される直前に、横からエスペランド軍の魔導士部隊が救助に来る。
「ご無事ですか?」
イエルク侯爵の目の前に現れたのは、銀色の髪に金の瞳を持った将校と思われる人物であった。
「あ、ああ。救援感謝する」
短い会話の間に、彼の率いて来た部隊によって敵魔導兵は追い散らされる。
「エスペランド帝国軍。第301航空魔導士大隊の大隊長であるヴィクター魔導少佐であります。ジャーナンド帝国軍のイエルク師団長閣下であらせられますか?」
「いかにも。私がイエルクだ」
「我々の大隊が閣下の護衛をする様に、マットロック少将から命じられ馳せ参じました」
「マットロック少将に感謝を」
同盟軍の司令官が倒れられたら困るのであろうが、本当に先程は助かった。
それに見たところ、ヴィクター魔導少佐の部隊は一目で精鋭とわかる者達であった。
こうしてイエルク侯爵の警護はリゼル達が担い、安全は確保されたのである。