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02 介入

 

 CC 1914/10/14


 エスペランド帝国はジャーナンド帝国とアルニア連合王国の要請を受け、援軍を派遣する事が決定した。


 しかし此処で問題であるのは、エスペランド帝国は転移に伴い海外領土(植民地)の殆どを失った事である。


 そこには植民地軍と呼ばれる軍も含まれている。

 エスペランド帝国は陸軍国家であった為に、現在の転移して大陸と切り離された状態では、まとまった軍を派遣出来ない。


 保有する艦の数が不足しているのである。


 だが、このまま同盟国が負けるとエスペランド帝国にとっても都合が悪い。


 援軍の派遣と引き換えに、物資の融通等を確約しているので派遣する事は決定事項である。


 そして今回派遣されるのは、主に魔導士部隊と機甲師団である。


 ジャーナンド帝国は唯一機甲師団を保持しているが、その見た目や性能は初期の戦車であるマークⅡと酷似していた。


 対してエスペランド帝国の戦車は、レオパルト2A7Vが主に配備されているが、今回は輸送の問題で別の戦車が配備される事になった。


 ニューポート級戦車揚陸艦にM48戦車が積載量限界である29両を乗せて、アルニア連合王国の北部に向かう。


 今回はまだヴィンラル合衆国に、エスペランド帝国の存在は隠せているので、奇襲攻撃である。



 エスペランド帝国の港から、艦隊が出航する。




 CC 1914/10/15


 ==アルニア連合王国北部沖合==


 この日は珍しく濃霧により、数メートル先が見えない程であった。


 ヴィンラル合衆国軍は、魔導兵と呼ばれる騎士階級の者達以外は殆ど農民兵である。


 その為に最低限の規律を保つのが精々であり、このような濃霧の時は彼らは見張りを放置して詰所にいた。


 一般常識として、こんな日に船に乗るのは転覆の危険が大きく常識的には乗らない為である。


 だが、その日静かにアルニア連合王国北部の浜辺に続々とエスペランド帝国軍の兵士達が上陸して来た。


 先ず先遣隊がヴィンラル合衆国の見張りを排除するのである。


 真面目な数名の見張りの兵士を、静かにエスペランド帝国軍の兵士達は片付けて行く。

 エスペランド帝国軍所属の兵士は全て職業軍人であり、今回派遣されたのはその中でも精鋭部隊である。


 澱みなく兵士達はそれぞれの任務をこなして行く。


 浜辺の確保に成功すると、無線で知らせる。


 すると強襲揚陸艦が次々と浜辺にやって来る。


 その時に漸く詰所にいた兵士達は強襲揚陸艦の音で異常に気付く。


「な、なんだこの音は!?」


「浜辺の方だ。と、取り敢えず行くぞ!」


 槍を持って彼らは浜辺に向かってしまう。

 そこで待ち受けていたエスペランド兵は、やって来たヴィンラル兵を倒して行く。


 その様子を、遙か上空から見ていたリゼルも作戦行動に移る。


 この後やって来る爆撃隊の援護の為に、対空兵器の破壊任務である。


「うーん、対空兵器らしき物は見当たらないな。あの巨大な弩の射程はどのぐらいだ?」


「2、300メートル程では?」


「一応潰しておこう。奴らの魔法により射程距離が大幅に伸びる可能性もある」


「はっ!了解しました」


「第2、第3中隊で排除せよ。それ以外は援護だ」


「「「了解」」」


 素早くリゼル達は弩を破壊して行く。


 その後はB-52 ストラトフォートレスが編隊を組んでやって来て、ヴィンラル合衆国の基地を精密爆撃して行く。


 そして強襲揚陸艦から降りて来た戦車部隊と兵士達により、橋頭堡が確保される。




 ==アルニア連合王国北部戦線==



 アルニア連合王国攻略部隊は、ヴィンラル合衆国の構成七国のロート大公国、グリュン大公国、ゲルプ大公国の3カ国で編成されており、大公である魔法使い3人が指揮官として参戦していた。


 そして指揮所で3人の大公が、これからの戦略について話している時に、急報が届く。


「申し上げます!アルニア連合王国北部沿岸にある我が軍の基地が敵の奇襲攻撃により壊滅しました!」


「何ですって!」


 そう言うのは、ロート大公国のルージュ大公である。今回奇襲を受けたのは、彼女の基地であった。


 ジャーナンド帝国が奪還の為に動くとしても、アルニア連合王国方面のジャーナンド帝国の港は現在、ヴィンラル合衆国軍が占領しており、先ずはそこの奪還に動くと踏んでいた。


 よしんばそれを無視したとしても、基地を壊滅させる程の兵力を運ぶには大量の船が必要であり、それを見逃したとは思えない。


「ヴァイスとブラオは何をしているの?ジャーナンド帝国の艦隊を見逃したって言うの?」


「それよりもルージュ。先ずは防衛戦の見直しが必要だ。君が怒るのはわかるが先ずは立て直しをしないと」


 落ち着いた声でそう言うのは、グリュン大公国のヴェール大公である。


 まだ若い二人の大公よりも一回り以上も歳上であり、今回のアルニア連合王国討伐軍の総大将である。


「ええ、わかってるわよ」


 だが、伝令に来た兵士を見るとまだ伝える事がありそうだ。


「遮って悪かったね。まだ報告があるのだろう?」


「はい。未確認ではありますが今回奇襲して来たのはジャーナンド帝国軍では無いようです」


「だとすると、三国同盟(ジャーナンド帝国・アルニア連合王国・カセレス王国の3カ国が、対ヴィンラル合衆国の為に組んだ軍事同盟)残りはカセレス王国となるけど、カセレス王国は現在は我々が交渉したバダホス公国と争っていて大艦隊を送る余裕もないし、地理的にアルニア連合王国北部に送るのは難しい筈だ。すると他の第三国となると、カラティナ帝国とルーシ連邦となるね。

 でもカラティナ帝国は中立を表明していて、東カラティナ問題で外に兵を送る余裕は無かった筈だ。

 すると残りのルーシ連邦となるけど、ルーシ連邦はジャーナンド帝国と仲が悪かった筈だ。

 まあ、私達が知らない間に手を組んだ可能性もゼロではないけど現実的じゃない。

 それにルーシ連邦はそれほど操船技術が優れてる訳ではないから、遠いアルニア連合王国までは難しいし大艦隊だと発見出来たはず。

 そうなると少数の艦隊で短時間でロートの基地を壊滅させたとなると、そんな事が可能なのは大倭国となるが、それこそ大倭国はアルニア連合王国と離れすぎているね」


 考えれば考えるほど、どの国もあり得ない。

 突如見知らぬ国家が現れたと言うのか?

 それとも何処かの国がその真の実力を今の今まで隠して来たのか?とヴェール大公の思考が迷宮入りしそうな時に、伝令の兵士が口を開く。


「現れた国の国旗は見た事もない国の物だと報告があります」


「ふむ、見た事のない国か………。それだと旧大陸には確か小国家群があった筈だが、あそこは全て陸軍国家で海とは接して無かった筈だ。

 すると我々の知り得ない国家がまだ存在してた事になる」


「そんな事あり得るの?」


「ルージュの言う通り。私も信じられないっすね」


 ルージュ大公に同意するのはゲルプ大公国のジョーヌ大公である。


「我々はまだこの世界の全てを知っている訳ではない。と言う事だね」


 ヴェール大公の顔は笑ってはいるが、目は笑って無かった。

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