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深淵のアリス4 月は無慈悲に  作者: 沢森 岳
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7.共和党の思惑

共和党、それは人類域全体でも指折りの党員数を数える巨大な存在です。

まあ各国ごとに政策方針が微妙に違ったりしていて強固な一枚岩ってわけでもないんですけど。

結局、国其々で自分達による支配の維持が一番の目的だからなんでしょうね。

そんなところは何千年経っても変わらないんです。たぶん。


 こんこん、とノックが聞こえ、ローレンスが許しを与えると先ほどの美少年副官が部屋に入り、テーブル上に珈琲を置いて行った。相変わらず無言だった。そして、レオンにちらりと向けた視線はやはり冷ややかで、そして鋭かった。


(もしかして俺、嫌われてるのかな?)

 若くして幸運にも、あまりに幸運にもメルファリアの騎士となったレオンに対し、やっかみなどもやはりある。今も、VIPたるローレンス・ジェラルド・ランツフォートと二人で話をしている事を、忌々しく思う輩もいるだろう。

 そういった類のものだろうか……?


「ん? どうした? もう一度言うが、手は出すなよ?」

「出しませんって!」

 カップからはやわらかに薫香が漂ってくる。型どおりレオンに勧めてから、ローレンスは自らのカップに口をつけた。それを見てレオンも手に取り、まずは目を閉じて芳香を堪能する。

「ただ、なんと言いますか、俺は、彼に嫌われているんじゃないでしょうかね? 初対面だと思いますが」


 すると、ん、としばし小首をかしげてから、ローレンスは小さな声でレオンに答えた。

「些事と思ったが、一応訂正しておこう。彼女は女だ。という言い方もおかしいが、そういうことだ。ただしそもそも男か女かはどちらでも構わない程度のことだがな」

「あ……し、失礼しました」

 まあよい、と前置きをしてから、ローレンスは話を続けた。


『同盟』は、G7の他の勢力である『ユニオン』、『ステイツ』とは緩い対立関係にある。一方でランツフォートとはこれまで対立関係にはなかったが、『同盟』が自陣営に取り込もうとしている国が、事もあろうにランツフォートに海賊対策を依頼したことで、その国の民主主義人民共和党が危機感を募らせた。


『同盟』が自陣営に取り込もうとしている国とはつまりエルブリカだ。

 彼の国では長らく政情不安が続いているが、それも裏では野党である民主主義人民共和党が暗躍している、というのがランツフォートの見立てだ。元々かの国は同盟に属する各国と広く交易関係を築いていたわけだが、困ったときに頼る先とはしなかった。


 元々かの国は同盟に属する各国と広く交易関係を築いていたわけだが、困ったときに頼る先とはしなかった。施政当局としては反政権側にたつ民主主義人民共和党の影響力を抑えたいとの考えがあったろうが、それがかえって彼の政治結社を刺激してしまった、ということらしい。


 そして、ランツフォートの動きが彼らの予想以上に速やかだったことで更に焦りを募らせ、市民の情に訴えるという動きに出た。実質的にランツフォートの庇護下に入ることになる、軍門に下った、自主性を投げ捨てた、と当局を弾劾し、挙句に、ランツフォート家を指して「専制君主国家の帝国主義が、今まさに広がりを見せようとしている!」だそうだ。


 物は言いようだ。

 厳密にいえば、ランツフォートは巨大な軍産複合体のオーナーが、大きすぎる不動産を所有しているだけなのだが。だけ、と言い捨てられるほど小さな存在ではないが。

「ランツフォート家はたしかにランツフォート家だけのものだが、関わる者達の人権は保障している」


 ここでローレンスはがちゃりと音を立ててカップを置いた。

「帝国主義などと言われたのは初めてだ」

 ローレンス様は少々ご立腹の様子。

「うーん。人類の過去の全ては知りませんが、現時点では”民主主義”の字面を持つ国は、おおかた非民主的ですよね」

「まあ、、そうだな」


 そういったわけでエルブリカの政情不安は拡大し、親同盟派の市民はますます声を大きくして政権を批判する。そんなさなかに、パトロール艦隊の誤射(?)は起きた。

「これ幸いにとばかりに、同盟は早速にも軍隊を派遣してきた。しかもこれだけの大艦隊を集めてきた」

「随分と用意がいいですよね」


「迂闊には手を出せん。というか、それが一番の目的なのだろう、というのがこちらの読みだ」

「つまりそれは、雌雄を決するのが目的ではない、と?」

「恐らくな。いまエルブリカ国内は騒乱状態に向かっている。その中で、民主主義人民共和党こそがこの混乱を収めることが出来るのだ、と吹聴して回っているんだよ」


「ははあ。さしずめ、親同盟政権を樹立する、ってのが目的ですか。てことは、ランツフォートはダシに使われたんじゃないですか」

「その可能性が高いと考えている。だから、気に入らぬ」

 ぎろり、とローレンスがレオンを睨みつけた。

「こんなところまで話しても構わんのはごく少数でな。どうせ貴様は既に特秘事項を共有している身だからな、もう少し、話し相手になれ」


 

G7って、字面はすこぶるカッコいいですよね。(個人の感想です)

6でも8でもなくて、やっぱ7でしょ。

安易に増やしちゃ駄目でしょ。(個人の感想です)


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