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昏の皇子  作者: 水奈川葵
第二章

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第四十二話 それぞれの書簡

 文筥(ふみばこ)の件についてカール・ベントソン卿からの手紙を、マッケネン卿を介し、オヅマづてに受け取ったオリヴェルがカールに送った短信


『前略。

 ミーナに文筥を渡しておきました。改めてお礼の手紙が届くと思います。

 ただ、今後、贈り物をする時には、もうすこし、わかりやすいものの方がいいと思います。

 ミーナとオヅマはとても…気づきにくい人達なんです。  オリヴェル』





 改めてオリヴェルから文筥を受け取ったミーナがヴァルナルに送った謝礼といつもの報告


虔礼(けんれい)の月 十六日


 厳しき暑さの中に神の影宿りし陽炎(かげろう)の立昇る時候にて、僭越ながら拙き文を差し上げます。


 若君様より文筥が私への贈り物であったことを聞いて、大変驚いております。

 このような物をいただいてよろしいのでしょうか。誠にご無礼を致しまして、申し訳ございません。また、ありがたく頂戴して、大事に使わせて頂きます。

 本当に、有難う御座います。


 今月は虔礼の月ですので、神殿へ参詣する予定です。

 執事のネストリ様から直々にお声がかかり、若輩の身でございますが、領主様始め公爵閣下、騎士様方、それに何よりレーゲンブルトの領民が健やかに過ごせたことへの感謝を捧げ、年神様に真摯に礼拝させていただきます。


 今回は、オヅマが子供ということもあり、剣舞を舞うことになりました。

 そのことでご報告がございます。

 若君がどうしてもオヅマの剣舞する姿を見たいと仰言(おっしゃ)っておいでです。また、主治医のビョルネ先生が付き添ってくださるので、重々注意の上で、若君の希望を叶えたく存じます。


 申し訳ございません。

 本来であれば、領主様からの承諾の可否を訊くべきところですが、おそらくこの手紙が帝都に届く頃には、神事は既に終わっていると思います。若君の体調については、万全の注意を払う所存です。どうかお許しくださいませ。


 若君は大変勉強熱心であられます。私がお教えできることも、もう僅かとなってまいりました。今は、私の他に時折、いらしていただいた時に主治医のビョルネ先生が教えてくださることもございます。その時にも若君は非常に興味深げに、熱心に話を聞いておいでです。

 できれば早急に、よき家庭教師に教えを乞うことが必要と考えます。

 僭越なことを申し上げているかもしれませんが、何卒ご一考頂きますよう、宜しくお願いいたします。


 この一年の豊穣と平和に感謝して、年神様(リャーディア)のご加護のあらんことを。 ミーナ』





 ミーナの手紙と一緒にオリヴェルからの短信を受け取ったカール・ベントソン卿からオリヴェルへの手紙


新生(しんせい)の月 五日


 新たなる年の燦々たる()の下に神を迎えたる時候にて、僭越ながら申し上げます。


 わざわざのお手紙痛み入ります。


 早速、若君の世話係であるミーナへの贈り物の件ですが。


 今月ようやく新年で帝都にも様々な市がたち、他国からの珍しいものも多いので、その中から髪飾りを選ばれました。前回の贈り物でよほど反省されたのか、先月来、色々と悩まれておられました。近日中に送られるようです。


 もし、ミーナが恐縮して受取を渋るようであれば、若君からもそれとなく後押しいただけると幸いです。

 若君が父君の幸せを願って下さっていることに、安堵致しております。


 また、最近では騎士団の修練を見学されているとの事。騎士団を代表しまして、御礼申し上げます。

 若君の関心あることを知って、騎士達の士気も上がることでしょう。

 ただ、この暑さの中であります故、くれぐれもお体にはお気をつけください。

 

 年末の神殿の儀式にもお目見えされたと聞き及んでおります。日に日に健やかになられる若君のご様子に、ヴァルナル様も大変喜んでおられます。


 今年は、おそらくですが、レーゲンブルトに戻るのも早くなる気がしております。再び(まみ)える日を楽しみにしております。 

 

 年神様(イファルエンケ)の加護のあらんことを。 カール・ベントソン』


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