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規格外の先代聖女より少し弱いだけで無能認定され追放された聖女の私は、執事君に溺愛されながら幸せになります(リメイク版)  作者: 山外大河
一章 聖女追放の日

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11 明日を歩む為に《クロード視点》

 きっと自分が願わなくとも、ルドルク王国という国家は滅茶苦茶になるだろう。

 確信なんてものは無い。

 だけどあの新しい聖女が現れてからの城内の露骨な違和感や、新しい聖結界に対するクレアが感じた不快感。

 そして王都に向かっていく魔物の群。


 それらの事を考えると、自ら口にした言葉の通り滅ぶ可能性も十分にあるような、そんな気がした。


 だけどそんな事は正直もうどうでもよくて。

 今はもう、滅んでも良いと思っている国に意識を割き続ける余裕はなくて。


 過去よりももっとこれからの事を考えていかなければならない。


 ……正直これから先の事は不安しかなかった。


 やれるだけの事はやった。

 故に比較的スムーズに此処までうまく事が進んでくれた。

 だけどこれからは?

 明日からも最低限度うまくやれる保証はない。

 クレアの前では極力見せないようにしているつもりだが、今の自分達が置かれた状況というのは綱渡りのような状況だ。

 そんな状態でこれからも間違える事無く進み続ける事ができるのか。


 クレアという女の子を、自分程度の人間一人で守り抜く事ができるのか。


 未来に対する不安は山のように積もる。


 だからこそ、せめて視界に捉えられる目の前の現実は確実に。

 一歩一歩確実に進んでいかなければならない。


 だからこそ……もう少し。

 もう少しだけ眠るのは控えよう。


 そう考えながらクロードは周囲に注意を払いながら夜を過ごす。

 そしてやがてそれも限界に近付き、意識がやや朦朧としてきた頃。


「……あれ? なんでクロード起きてるの?」


「……お嬢」


 クレアが目を覚まして体を起こしてそう言ってきた。


「……たまたま俺も目が覚めたんで」


「……起きてたよね、多分。さっきより疲れ切った顔してるし」


「いや、えーっと……はい」


 ……どうやら誤魔化すのは無理そうで、素直に認める事にした。


「寝ないと駄目だよって言ったじゃん私。絶対見張りとかやってくれてたよね」


「ええ……まあ」


「やっぱり。私に一人で解決しようとか思わないようにとかいうのに、自分は一人で頑張ろうとするんだね」


「……すみません」


 自分で投げた言葉がブーメランのように返ってくると、なんだか本当に返す言葉が無かった。

 少なくとも、自分は納得できてもクレアを納得させられるような言葉は見つからない。


「それとさ、もし本当に何かあった時に動けなくなってたらどうするの?」


「……ッ」


(た、確かに……)


 それに関してはぐうの音も出ない正論過ぎて、自分を納得させられる言葉すら見つからなかった。

 そして何も言葉を返せないクロードに、微かに浮かべてクレアは言う。


「でもありがと。頑張ってくれてたんだよね」


 そんな事を言ってくれる。

 それを聞いていると……これからも頑張ろうという気持ちが溢れてくる。

 ……自分はこの人をなんとか幸せにしてあげたいんだという感情を実感する。


「……いえ、それほどでも。結果的にただ起きてただけですし」


「それが結構大変なんじゃないかな」


 そう言ってクレアは苦笑いを浮かべ、そして言う。


「だから二人で頑張ろうよ。二人共寝ちゃうのが不安なら、今からは少し私が起きてるからさ」


「……いや、お嬢は寝ててください」


 クレアの提案をクロードは拒否する。


「別に俺もお嬢の事を信用してない訳じゃないんです。寝てて何かあってもちゃんと気付くでしょう。今起きていたのは俺がそうしていた方がより良いんじゃないかって思っただけで……だから今度は俺もちゃんと寝るんで。お嬢も寝ててください」


 ……流石にこれ以上の負担は掛けられない。

 だから少しでも納得してもらえそうな、そんな事を考えて言ってみた。


「そ、そう? えーっと、今度は信用して大丈夫? クロードもちゃんと寝る?」


「流石に二度同じ事はやりませんよ。それにお嬢に指摘された通り起きてたのは完全に失策だった訳ですし……俺も少し休みます」


「……そっか。えーっと……じゃあお休み。改めてだけど明日もよろしくね、クロード」


「はい、お嬢」


 そんなやり取りを交わした後、クロードも横になった。

 クレアに告げた通り、流石にもう眠る。

 起きていたのは本当に失策でしかなかった。

 ……少なくとも信頼のおけるクレアの隣では。


 だから今日はゆっくりと休もうと、そう思った。

 明日、目的地まで辿り着くまでに再び戦う事があるかもしれない。

 その時に動きが鈍らないように。


 クレアを守り通せるように。


 そう考えながら、クロードの意識はブラックアウトしていった。

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