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やさしき命のゆりかご 地球

 金星の周辺には眠ってしまった流れ星がたくさんいました。

 弟くん流れ星はお兄ちゃん流れ星のおかげで、女神さまの歌声を聞かずに済んだため、ねむくなりはしませんでした。ぷかぷか浮かんだままの流れ星たちをよけながらずんずんと進んでいきます。

 

 金星を無事通過つうかしてずんずんいくとやがて新しい星が見えてきました。

 いろいろ辛いことがありましたが、がんばったおかげでもう二人とその星のと間には流れ星は一つもありませんでした。つまり二人が一番乗りでした。


 その星は今まで見てきた惑星のどれともまったくちがっていました。

 今までみてきた惑星はたいてい一つか二つぐらいの色でべったりいろどられていましたが、その惑星は、白や青、緑、茶色とたくさんの色が複雑ふくざつに混ざったふしぎな模様もようをしていました。


「うう~ん」


 あれが地球なのだろうかと考えていると、お兄ちゃん流れ星がおおきなあくびをして目をさましました。


「ねぇ、ねぇ、あれが地球なの?」

「ふぁ~あ、そうだね、あれが地球だよ。ようやくついたね」

「それで、これからどうすればいいの? ぼくたちのお母さんになる人はどこにいるの?」

「よく目を凝らしてごらん。光っているところがあるはずだ。そこにぼくらのかあさんになる人がいるよ」

「そ、そうなんだ。ようっし!」


 弟くん流れ星は、懸命けんめいに目をこらして地球を見つめました。すると、ちかちかと光るところがみつかりました。なにかとてもあたたかく、なつかしい光です。


「みつけた!」


 弟流れ星は一言叫ぶとその光を目指して走りだしました。





 見知らぬまち建物たてものの窓のところに女に人が目をつぶり、一心にお祈りをしていました。


「この人なの?」


 弟くん流れ星がお兄ちゃん流れ星にたずねました。お兄ちゃん流れ星はうなづきます。


「そうだよ。さあ、この人の中へいこう」


 兄弟流れ星は女の人の体の中にすっと消えていきました。


 長くて、暗いトンネルのようなところをずっと進んでいきます。それはついさっきまで通ってきた太陽の周りの宇宙うちゅう、つまり太陽系たいようけいの旅よりも長くてつらい旅でした。

 太陽系での旅の間はなにかと励ましの声をかけてくれたお兄ちゃん流れ星も、いまは眠ったように黙り込んだままです。弟流れ星はお兄ちゃん流れ星を抱きしめたまま、たったひとりで黙々と旅をつづけるのでした。


 もう、だめだ 

 

 そう思った時でした。突然、目の前に光が現れました。真っ白な光があたりを照らし出します。

 それはまるで太陽のようでした。でも、太陽のような熱さは感じられませんでした。むしろ、ぱかぽかと温かい光でした。


「あの光に入るんだ」


 さっきまで黙っていたお兄ちゃん流れ星が口をひらきました。でも、と弟くん流れ星た悲しそうな声でいいました。


2022/01/02 初稿

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