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赤さびたむかしの楽園 火星 

 二つの流れ星がきらきらと長い光の尾をひいて木星にさかさまに落ちていきます。

 弟流れ星は悲鳴を上げました。


「うわぁぁぁぁぁ…… あれ?」


 そのままぶつかるかと思った流れ星の兄弟は木星の表面をかすっただけで、その横をぎりぎり通り抜けていきます。木星の大きな一つ目が目玉だけで追いかけましたが、それだけで特に何かをされることもありませんでした。


 やがて、今度は木星がどんどん小さくなっていきました。


「ああ、びっくりした」


 弟くん流れ星は安心したようにため息をつきました。


「木星に落ちていくいきおいで速度をあげたんた。これでだいぶ追いついた」


 兄弟流れ星は目にもとまらない速さでずんずんと進んでいました。

 お兄ちゃんの言う通り、ずっと遠くに見えていた流れ星の一団がもう、すぐそこに迫っていました。


「このまま、追いついて、追い越してしまおう」


 お兄ちゃん流れ星がにやりと笑いました。




「ねえ、あそこのあれも惑星なの?」


 しばらく行くと、目の前に小さな星が見えてきました。さっきまでの木星などと比べるとずっと小さな小さな赤ちゃけた星です。まるで星全体がびているようでした。


火星かせいというんだ。昔は木がたくさんはえた青い楽園だったんだけど今はもうカラカラにかわいちゃっている」

「なんでかわいちゃったの?

それにあんなに赤いのはなんで?」

「あそこにする人たちが(あらそ)いごとが好きで、草木に水もやらず、使っていた武器(ぶき)の手入れもせずにけんかばかりしていたからなにもかも赤錆びてボロボロになっちゃったのさ。

もう、今はだれもすんでいないよ」


 兄弟流れ星は火星の横をしずかに通りすぎていきます。弟くん流れ星はじっと火星を見つめました。血のように赤い地面にはゴツゴツした岩が転がっているだけで動くものはなにもありませんでした。耳もすましてみましてたがなにも聞こえません。


 二人はなにごともなく火星の横を通りすぎていきます。


「なんかさびしいね」


 弟くんはポツリとつぶやきました。


2922/01/02 初稿

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