エピローグ 宇宙の中のそのまた宇宙 命
「でも、ぼくがあの中に入ったらお兄ちゃんはどうなるの?」
「だからいったろう。一人だけしかえらばれないんだよ。これは最初からきまっていることなんだ」
「だったら、なんでお兄ちゃんはぼくなんかを一緒につれてこようとしたんだよ。お兄ちゃん一人でこればよかったじゃないか」
弟くん流れ星は話しながらぼろぼろと涙を流しました。それをみてお兄ちゃん流れ星はすこし困ったような顔しました。
「なんで……だろうな。ぼくにもよくわかんないや。
でも、たぶんお前が弟だからじゃないかな。
だからさ、いいんだよ。あの光にはお前がはいるんだ」
「もう無理だよ。ぼくももう一歩も動けないよ。力がでないんだ」
「ちぇっ、最後まで世話がかかるなぁ」
お兄ちゃん流れ星は、苦笑いするとちょんと弟くん流れ星を光の方へ押しやりました。
ふたりはゆっくりと離れていきます。弟くんは光のほうへ、お兄ちゃんは反対の暗い闇へと漂っていきます。
「あっ!」
弟くん流れ星はあわててお兄ちゃん流れ星をつかもうと手を伸ばしましたがもう届きません。
それにお兄ちゃん流れ星の体はもう半分近く透けていました。どんどんと蒸発しているのです。
「さよならだ。そんなに心配するな。時間がたてばぼくは復活するから。そしたらまた、最初からやり直しだけどね」
お兄ちゃん流れ星は泣きじゃくる弟流れ星をなぐさめるようにいいました。
「うまくすれば、この人のところへくることができるかもしれない。そうすれば、ぼくたちはまた兄弟になれるよ」
「ほんとうに?」
「ほんとうに!」
だったら! と弟くん流れ星が泣きながら叫びました。
「こんどはぼくたお兄ちゃんだよ!」
「うんそうだ。ぼくが弟さ」
弟流れ星が光に吸いこまれるのとお兄ちゃん流れ星がきらきらした光の粒になって消えるのはほとんど同時でした。
「おーい、いつまでもそんなところにいると体が冷えちゃうぞ」
部屋の奥から男の人の声がしました。女の人は閉じていた目を開いて夜空を見上げました。
さっき、こっちに向かってくるようにひかっていた流れ星はもう見えなくなっていました。
女の人は立ち上がると部屋の奥へと戻ります。
「ね、ね、今ね。すっごい綺麗な流れ星が見えたんだよ。まるで私の方へ降りてくるみたいだったの。わたし、思わずお願いしちゃった」
「へぇ、どんなお願いをしたんだい?」
「えへへ、子供がほしいなって。わたしさ、男の子でも女の子でもいいけど、二人はほしいかな、とおもうのよ」
「二人か。まあ、天からの授かりものだらかねぇ。でも……」
いつか、どこかの知らない街で、
弟っぽいお兄ちゃんとお兄ちゃんぽい弟の兄弟が仲良く暮らすことになったかどうか
それは、流れ星だけの ひみつ なのです。
2022/01/02 初稿
これにて完結です。 長い旅。お付き合いいただき本当にありがとうございました。