プロローグ よーい ドン! 兄弟流れ星
さあ、行きなさい
優し気な声を合図に流れ星たちが一斉に駆け出しました。
よぉーーしぃ! 負けないぞぉ
ボクが一番になるんだい
わーー、まってよぉ
うんしょ うんしょ うんしょ
地面も空も、上や下の区別もない不思議な所。それは宇宙と呼ばれるところです。
流れ星たちは、一生けんめいに夜のようにまっ暗な宇宙を走っていきます。
生まれたばかりの流れ星たちは小さいけれどさすがにお星さま。走るとその後ろにキラキラ、キラキラ、光のすじができました。
数えきれない光の流れが集まり、まるで宇宙に大きな川ができたようでした。
「おい、なにやっているんだ」
一つの流れ星がゆらゆらと浮かんだ状態で叫びました。オレンジ色の光の中に少し青みの混じった流れ星です。
「だってぇ、まっくらでこわいんだもん」
少しはなれたところにもう一つの流れ星がぶるぶるとふるえながらこたえました。
同じようなオレンジ色の光で、すこし小さい流れ星でした。二人は兄弟なのです。
「それにどっちにいって良いか、ぜんぜんわからないよ」
弟流れ星がいいわけをするように付けたしました。
「ほぅらっ! よっく見ろ。
あの先に光るところがあるだろ。あれを目指せばいいんだよ」
お兄ちゃん流れ星がイライラしながら言いました。それもそのはず。二人は最初のスタートラインでゆらゆらと浮いたままなのです。他の流れ星たちはもうずっと先を進んでいます。みんな、お兄ちゃん流れ星の言うように、遠くに見える針の先ほどの小さな光の点に向かっています。二人はすっかり置き去りでした。
「ぐすぐすしてないであの点に向かって走るんだよ!
一番にならなきゃ、また暗いところでじっと待つことになるんだからな!」
「う~ん、分かったよ」
お兄ちゃんに言われて弟流れ星はしぶしぶ走り始めました。
2022/01/02 初稿