プレゼント
私がもう一度「会いたい」と伝えると、お兄様は「…そうだよね」と呟くように言葉を発した。
まるでお兄様は自分に言い聞かせるかのようだった。
一体なんなんだろうと疑問に思っていると、少しぎこちない笑顔を浮かべてお兄様は言った。
兄妹の私でないと気づけない程のぎこちない笑み。
より一層、不思議な気持ちになる。
「そうそう、セウス。今日はパーティーだからプレゼントがあるよ。」
少しぎこちない笑みを浮かべたままお兄様は私の反応を伺っている。
「えっ…!!もしかしてお母様に会える、とか…?」
今までの話の流れ的にお母様!?
今から、お母様に会えるの?
そう思うと胸が弾む。
まだ、お母様に会えることがプレゼントって言われていないのにソワソワしてしまう。
お兄様からの返事を待つ。
緊張して唾をゴクリと飲み込んだ。
私の期待を汲んでお兄様はゆっくり頷く。
「やったぁ…!!!」
お兄様は私の様子を見て、本当にお母様に会いたいと思っていたことを確信したように見えた。
「そう!お母様に会わせてあげる。
ただお母様はセウスも知っている通り、アークトゥルス地方にいるんだ。
だから帰る時間が必要で…3日以内には会えると思うんだけど。それまで待ってもらえるかな?」
一月前にアークトゥルス地方からお兄様宛に手紙が来ていたのは知っていたけど、お母様が今もアークトゥルス地方にいるなんて知らなかった。
お兄様ばかり色んなことを知っていてズルい!
というかアークトゥルス地方って、どんなに頑張っても7日はかかると思うんだけど私の記憶違いかな?
新しい転移魔法陣ができたとか?
と疑問に思いつつも、お母様に会える喜びで吹き飛んでしまう。
「ありがとう!お兄様!とっても楽しみ!」
3日以内に会えるなんて嬉しすぎる。
お母様が帰ってきたら、たくさんお話しして、刺繍したり本を読んでもらったり、あとは髪の毛を結ってもらったり、それからそれからお菓子を一緒に作ったり…。
お母様と一緒に何をしようか考えるだけでウキウキしてしまう。
「喜んでもらえて良かった。あとね、セウス。
僕はお母様を迎えに行かなきゃいけなから3日ほど家を空けさせてもらうよ。」
「分かった!!!」
お兄様と毎日会っていたから3日も会えないなんて寂しい気持ちと、お兄様は外に出られてお母様を迎えに行けて羨ましい気持ちがあったが、それ以上にお母様に会える喜びが優って元気よく返事した。
「良い返事だね。それとね、僕からもう1つプレゼント。たった3日かもしれないけれどセウスが寂しくならないように。」
そう言ってお兄様は繋いでいた手を解いて、私に硬い小さいものを握らせた。
解かれた時に今まで手を繋いだままだったことを思い出す。
あまりにも自然に繋いでいたから気づかなかった。
お兄様は、前のお茶会の時に人に触られるのが好きじゃないと言っていたのに、良かったのかな?
と思いつつも握らされた硬いものが気になり、そっと指を広げた。
そこにはお母様も何個か指につけていたものがあった。
「指輪…?」