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想い出のティータイム

私はケフェウス公爵家の長女セウス・ケフェウス、6歳。


そして今、私とお茶を飲んでいる貴公子はネイト・ケフェウスお兄様 7歳。


お兄様はいつも私の部屋に来てくれて一緒にお茶を飲んでくれる。

そして本を持ってきてくれたり、外のことだったり、お父様やお母様のことを話してくれる。


毎日が退屈な私にとって、お兄様とお茶をできる時間が幸せだった。


今日も私はお兄様といつものようにお茶を飲み、7歳になると貴族は必ず受けさせられる魔法喚起儀式の話をしていた。


「いいかいセウス。魔法喚起儀式ではお父様がいても、いつもみたいにお父様〜!って言って抱きついちゃダメだよ。絶対に。」


お父様とはもう半年も会えていない。


お父様は国に3名しかいない魔法喚起師だから忙しいのは仕方のないことだけど。


だから魔法喚起儀式ではお父様に会えると思って密かに楽しみにしていたのに。


抱きついていっぱい、頭を撫でてもらったりしようと思ってたのに。


お兄様が言うならダメなんだろうけど上目遣いをして駄目元で聞いてみた。


「えぇー久々にお父様に会えると思っていたのに......抱きついちゃダメなの?」


すかさずお兄様は私を諭すように言う。


「ダメなんだ、セウス。


お父様とは家族ではあるが魔法喚起儀式はそれはそれは大切な儀式で、いくら家族とも言えど儀式の時は触れ合ったりするのは禁止されている。


理由は僕も分からないんだけど、ある貴族のご令嬢が魔法喚起儀式の前にその場が怖くて魔法喚起師に抱きついたら儀式に参加できなくなったんだ。


そしてその貴族令嬢は魔法喚起儀式に参加できなくなったことで家族共々没落した。」


ーーーボツラク。


そんな言葉、6歳の私でさえ、なんとなく知っている。


お兄様が持ってきてくれた本に意味が書いてあった気がする。


お金がたくさん無くなって貴族でいられなくなることだったような。


「そんなことがあったの!?知らなかった。


せっかく会えるお父様に抱きつけないのは辛いけど、ボツラクだなんて……。


分かった、お兄様の言う通りにする!


それよりその場が怖くて抱きついたって、儀式会場はそんなにも怖い場所なの?」


私がお父様に抱きついたことで家族まで巻き込んでボツラクしたら嫌だし、儀式会場では絶対に抱きつかないように心に決めた。


だけど、そのご令嬢がその場が怖くて魔法喚起師に抱きついたってことが気になった。


「そうなんだよ、だから本当に気をつけようねセウス。


んー、僕はむしろ綺麗だと思ったよ。


暗闇の中に火の付いた蝋燭が魔法陣を囲うように何本もあって、黒いマントを被った魔法喚起師がいるんだ。


なんだかその蝋燭の火が幻想的でね、癒された気がしたよ。


だけど、そのご令嬢はそれが怖いと捉えたんだろうね。」


暗闇の中!?黒いマント!?なにそれ、怖すぎる!!と思い一瞬言葉が出てこなかった。


私は暗闇が凄い苦手なのだ。


夜、真っ暗で寝るのが怖い為に灯りをたくさん点けるほど。


「…………。……えっ暗闇の中って…嫌。怖いよ。お兄様も一緒にいて……!」


私の動揺を察したお兄様は優しい口調で言った。


「セウス、大丈夫だよ、お父様もその場にいるはずだから怖くないだろう。


もちろん抱きついてはダメなんだけど、、、それと儀式会場へは当人しか入れないんだ。


儀式会場までは僕も付いて行ってあげるから、そんな悲しい顔をしないでセウス。


暗闇といっても蝋燭の火がついてるからそんなに暗くないよ。」


そうお兄様は励ましてくれたけど、儀式会場に1人で入って、いくら蝋燭の火がついているとはいえ、暗闇の中だなんて…。


暗闇という言葉が頭の中でグルグル回り私は絶望していた。


「うーん。どうしようかなあ。セウスが儀式中も怖くならない様に……。」


しばらく考えた後にお兄様は閃いたと言わんばかりの顔した。


「そうだ。セウスが魔法喚起儀式が怖くならないように2人で蝋燭パーティーをしない?」


「蝋燭パーティー??」


パーティーと聞いて、落ち込んでいた気持ちが一気に晴れやかになる。


「そう蝋燭パーティー。2人で暗くした部屋で蝋燭の火を見ながらお菓子を食べたりするのはどうかな?」


お兄様と一緒ならなんでも楽しいはずだし、パーティーは誕生日にしかしないものだと思っていた為ウキウキした。


「する!!!」


「じゃあ決まりだね。やるなら早い方がいいし今夜しよう。」


「うん!!楽しみ!あ、そういえばお兄様は魔法喚起儀式でどんな魔法が使えるようになったの?」


本当は蝋燭パーティの時に聞いたら良かったのだが、なんせパーティーだ。


私が6歳の誕生日パーティーの時にお父様は魔法を見せてくれたし、蝋燭パーティーの時もきっとお兄様は魔法喚起儀式で得た魔法を見せてくれるに違いない、と思った。


そう思うと、パーティーの時にどんな魔法を見せてもらえるのか居ても立っても居られず聞いてしまったのだ。


「…………。」


私が聞いた後に流れる重い沈黙。


予期せぬお兄様の反応にびっくりした。


「お兄様、何か気の触ることを聞いちゃってーー」


重い沈黙を破るかのようにお兄様は言った。


「……セウス、それは家族といえども言っちゃいけない決まりなんだ。」


「??? それはどうしてなの?


お母様は氷の魔法使いとして有名なんでしょ?各地に飛び回ってー」


「どうしてそのことをっ…!!」


その途端、お兄様は私の言葉を遮り、ガタンと音を立てて立ち上がった。


「まあいいや、セウス。ごめんね。


僕は蝋燭パーティーの準備をするから、先にお邪魔させてもらうよ。」


いつもと同じ微笑みをしていたと思うのになんだか、物凄く悲しんでいたように見えたのはなぜだろう。


「えっ……分かった、お兄様。あ、パーティー楽しみにしてるね…。」


お兄様にこんな態度をとられたことが初めてで、私は驚きのあまり去る背中をただ呆然と見ることしかできなかった。

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