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暫く経って

大変長らくお待たせしました。片割れです。

プチスランプからの実生活のトラブルからの新生活スタートと雪崩のごとき余裕のなさでここまでずるずると早一か月。楽しみにしてくださっていた読者の方と片割れには申し訳ない気持ちでいっぱいですが、よろしくお願いします。

 まだ空が明るくならず、やや暗い空。干し草にシーツを掛けただけのベッドで目が覚めた。冷たい空気が頬を撫でる。寝返りを打つと、シーツから突き出した干し草がチクチク刺さる。


「痛っ・・・・・・。」


昨日ぶたれた頬に干し草が当たって、思わず声を出してしまう。私はあわてて口をふさいだ。すぐそこで大きないびきをかいているお父さんを起こしたら、今度は何をされるかわからないから。


 ふと、手に何かを握っていると気が付いた。


マッチの燃えカスだ。


でもなんでこんなものを。


捨てておこう。


私が目を覚ましたらまず、井戸に行って水汲みをする。水道の無いないこの家は、庭先の古井戸から水を汲んでこなくちゃいけない。トイレをするのも身体をきれいにするのも全部水がなくちゃいけないから、私が汲んでこないといけない。


「冷たい・・・・・・」


霜の降りた太い木の棒を手に持つ。井戸の上に張った氷を割らなくちゃいけないから。カシャンッカシャンと小気味良い音ががなる朝。私はこの音が好き。でも大きな音を鳴らすとお父さんが起きてしまうからそっと割っていく。

やがて全部割れて、水鏡に映った自分の顔を見る。晴れた頬を見て、苦い思いと少し恥ずかしさを感じる。


「うー、こんなのあの子に見られないようにしないと・・・・・・」


ふと違和感。


「あの子って誰だっけ・・・・・・?」








 「さすがに、そろそろお医者様を呼んだ方が良いのでは?」


そう口に出すメイドのゲルダは、いつもの鋭い目つきはどこへやら、心配そうにベッドに横たわる少女を見据える。先日、この家の主が連れてきた少女、ノーナは当日こそ元気そうに振舞っていたが、風呂に入れられ朝の早い時間にご飯を食べるとそうそうに眠ってしまった。それから待てど暮らせど、起きる気配がない。風呂に入れてやった時に子供特有の体温の高さを感じたが、今はそれも感じない。触れているとそこから氷ついてしまいそうなほどに冷たい。


「いや、医者を呼んだところでよくはならないと思う。これは病とかそういう類のものじゃなさそうだ。当たってほしくはないが、これは、この冷たさはおそらく・・・・・・」


ゲルダの横でベッドを見降ろす男、カイは顔をしかめながらそう口にする。金色の瞳を怪しげに光らせながら言うカイの様子に、ゲルダも次に続く言葉に気付く。この、尋常ではない事態の犯人に気づきゲルダは怒りを露わにする握りこむ拳は軋む音が聞こえてきそうなほどに強く固められ、今にも飛び出していきそうなほどの気迫。忌々しい二人の過去。かつて子供だった時に、二人の仲を引き裂いてしまったあの事件。


「いるんだろう?雪の女王。出て来い。この子にかけた呪いを今すぐ解け。」


 閉じられていた窓が開き、大量の雪が降りこんでくる。視界が雪にさえぎられてホワイトアウトすると同時に声がした。


「ふふ、ふふふふふふふふふふ!あなたから声を掛けてくれるだなんてうれしい限りだわ!」


姿はまだ見えない。だが確実にいる。全てを氷漬けにする魔女。悪魔の鏡によって不幸な目にあった少年と少女には因縁の相手である、雪の女王の声が吹雪から聞こえてくる。


「いったいなんの用だ。お前は城から出てこないのがポリシーじゃないのか。それに、どうしてこの子にこんなことを。」


「お姉さん、すっごく悲しいのよ?だってあなたは私のものなのに、いつのまにこんなに大きい子をこさえて!いったい誰との子だもなのかしらあああああああああ」


より一層激しい吹雪が部屋の中を吹き荒れる。毛先が凍り付くほどの冷気に支配される。会話の辻褄が合わないほどに興奮している雪の女王は、それでも答えをくれた。


「ここから出ていきなさい。卑しいメス豚め。」


ゲルダは箒を手に取り、雪の女王の前に瞬時に出る。


「我流メイド術掃除法一式、塵払い」


刹那、時が止まるような停滞が起こる。一瞬のようであり永遠のようであるその停滞。しかし、既に見切っているカイの目にはなにが起こったのかはっきり見えている。吹き荒れる吹雪、その一粒一粒は全て箒で掃きとり、ほんの一瞬で窓の外へ追いやったのだ。吹雪となっている雪の女王は窓へ「掃き捨てられた」のだ。


「へぇ?なかなかやるのねその娘。でもいいわ!私の仕込みは既に終わっているもの。今日は引いてあげるわ。また迎えに来てあげるわ、カイ。」


窓の外で人型に吹雪く雪はそう言い残し、霧散していった。








「ノーナ、今日もこのマッチを売ってきておくれ。いいね、全部売ってくるんだよ。約束だからね。」

 

 お父さんはそう言ってマッチの入った籠を渡してくる。何もしなければいつも優しい私のお父さん。約束を破らなければ優しいお父さん。約束を破るとぶたれちゃうこともあるけど優しいお父さん。約束を守れないとご飯をくれないけど優しいお父さん。


「今、何してるんだろう。」



なんだか今日は変だ。思ってもないことが口から出てしまう。思ったことを口にしたとたん忘れてるのかもしれない。




 そこで、ふとまたなにかを握っているのに気が付いた




「マッチの・・・燃えカス・・・?」


お、おこられないよね?片割れが作ったキャラクターに勝手に「我流メイド術」とかやらせちゃって怒られないよね?

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