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ご祝儀貧乏ってこれかよ


俺の名前は久保田昂くぼたのぼる


27歳ともなれば、周りのやつらの結婚ラッシュに飽き飽きしてくる。最初に招待されてウキウキだった友人の結婚式も、慣れてくるにつれて同僚の結婚式にまで出席となってくると、さすがに既視感だらけでつまらないものに変わってきてしまう。


ご祝儀だって毎月の出費になっていてウンザリしてくるし、月に2回出席となれば、貴重な休みを奪われる二重苦にもなって笑えない。いや、別に休日に何かすることがあるわけでもないけど。


着飾った来賓の衣装を見て、ああ、この人めっちゃ金かけてるな、とか。花嫁より目立たない服って意外と大変なんだな、とか。どうでもいいことにばかり目が行ってしまい、純粋に楽しめない自分がいる。


いや、楽しまなくていいよな。俺は祝福する側だし。様式美だから変わったことも無く、淡々と祝福してあげるのが一番だ。


飲食店の店長をやっている俺は、バイトの子の結婚式まで出てしまっているので、もう何十回と出席している結婚式を、こんなもんかと祝辞を述べてお酒を飲んでいた。


「店長、今日はありがとうございました」


姓が変わって幸せそうな北千住綾華きたせあやかが話しかけてくる。26歳と23歳の結婚って良いね。何の陰口も言われなさそうな、ザ・普通の結婚だ。なかなかできることではない。


「結婚おめでとう。旦那さんと仲良くね」


「店長のおかげで結婚できたんですよー。どうですか?わたしの友達、店長と歳が近くて可愛い子多いと思うんですけど」


「そうだね。だけど、バイトの子の結婚式で女漁ってたって噂になったら嫌だから遠慮しておくよ」


「ええー!?そんなの誰も気にしないじゃないですかぁ!二次会、来てくださいよ。女の子紹介しますよ!」


綾華ちゃんが珍しく俺を誘ってくる。別に行ってもいいんだが、この子は酔うと色んな人に絡むから、あんまりお世話したくないんだよな。旦那さんが大変そうだ。


「ありがとう。今日は幸せをたくさんもらえたから、俺の運気も上向いてきたかな?別の方法で出逢いを探してみるよ」


「店長、強がって一人で飲みに行かないでくださいよ?」


「いやいや、行かないし」


どれだけ心配してくれてるんだ。ちょっと綾華ちゃんの幸せオーラが眩しいから、直視できない。


「バイト、辞める気は無いですから。あ、でも子供できたら無理かも」


「好きにしてくれていいよ。新郎の和也さん、綾華ちゃんはとっても明るくて良い子だから、笑顔が絶えない幸せな家庭を築いてね」


「はい、これからは店長に迷惑かけないように、手綱握っておきますから」


「ちょっとー。和也ー?」


白いレースの手袋をした花嫁が、新郎の頬をつねる。


うんうん。仲睦まじくて微笑ましい。


俺にも、こんなやり取りができる人が現れるのだろうか。


27年間、彼女なんていたことがないから、何もわからない。だから結婚なんて、夢のまた夢だ。


そう言い聞かせるように、新郎と乾杯してシャンパンを煽った。



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