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高額なものには理由がある

ぼかしてはいますが今回も想像力豊かな方は、食事時読まれるのは避けてください。

虫が苦手な方も、描写はあまりないですが、閲覧は自己責任でお願いします。

準備が整い、夜明けに集合したミーシャ、ルーク、ベアトリスの三人は、朝一番で迷宮の入口をくぐった。

 

「例の事件……組合ギルドが動いているなら、大丈夫ですよね、きっと」

「……さあなぁ。いまいちどんな事件かもわからんし、そんな危機が迫っているような実感沸かないんだよなぁ」

魔獣避けの匂い袋を配りながらルークが言う。

「ミーシャは本当にいいのか、これ」

爆雷蜂レッドバルーンの巣に近づいたら貰うにゃ。今からつけると変な匂いがプンプンして鼻がおかしくなるにゃ」

「これからやることを考えたら大したことないと思うがな」

「あの、細かい部分をもう一度確認しておきたいのですが……」

歩きながら、杖で草むらに魔獣が潜んでいないかをチェックしていたベアトリスに、二人は頷いてみせ、

「まず、蛍光塗料を塗った獲物を爆雷蜂レッドバルーンの巣の前に運んで、解体するのを待つにゃ。それから、いらない部分を蜂が運ぶのを待って、気づかれないよう後をつけるにゃ」

「……飛んでる蜂の後をつけるって、難しくないですか?」

「そこはルークの眼のよさが役に立つにゃ。夜目は利かないけどかなり遠くまで見えるらしいにゃ」

「遠くの草原に落ちた針とかも見つけられる自信あるからな!」

にやっとルークが笑う。

「そして蜂のゴミ捨て場を漁ればいいということですね。掘り起こしている最中、襲われないよう気をつけないと」

「まあな。ミーシャの話だと、他のはともかく、ちらほら虫系の魔獣が来るらしいからなあ」

「あ、毛長牛にゃ。こんなに早く見つかるなんてラッキーにゃ!」

「この辺を縄張りにでもしてるんだろか」

近くにあの巣があるのにな、とルークが呟く。

「ミーシャ、わかってると思うが――――」

「当たり前にゃ」


 ミーシャは身を低くして丈のある草むらに隠れ、群れから少し離れた小さな一頭に近づいていく。風下から息づかいすら聞こえるほど近づけば、さすがに気づき、ピクリと頭をもたげて走り出そうとする。ミーシャが跳躍した。牛の背に跨がり、素早くその首に紐をを巻きつけて振り下ろそうともがく動きを利用し、体を蹴りつけ、転倒させる。


 パニックになり逃げ出そうとする他の牛から、もはやピクリとも動かない牛をなるべく反対へ引いて、その体を盾にやりすごした。


「……終わったにゃ。後は塗料を塗って、がんばって運ぶだけにゃ」

「え、たったあれだけで牛さん、死んだんですか?」

「そりゃ首の骨折ったら普通死ぬにゃ」

「相変わらずえげつねえな…………」


 蛍光塗料を塗った牛を三人で何とか巣まで運び、少し切って血を流すと、ほどなくして数体の蜂が獲物の側まで寄ってきた。


 衛兵だろうか、その爆雷蜂レッドバルーンは丹念に死んだ毛長牛の状態を調べ、動かないのをみると、さっさと解体作業に入った。巣まで肉の塊を何回か往復して運び、最後に残った骨をもう一度調べてから、羽根を鳴らして持ち上げ、運んでいく。


「やっと、ですね」

「……よし、気づかれないように追うぞ。きちんとついてこいよ」

「はいはい」

やっと出番が来て嬉しそうなルークの後について、つかず離れず、三人は蜂の後を追っていく。

 途中何度か小さめの魔獣を撃退し、小走りで追うこと一刻あまり。次第に、魔獣を見かける数が減り、辺りに嫌な匂いが立ち込めてきた。

「もうそろそろ夕方に……ぅッ」

ゲホゲホとベアトリスが咳き込み、布で鼻を覆う。

「ま、まだ行くんで、ぅか」

「あー、そろそろだな……ここまでか」

ブィーン、と何匹もの虫の羽音がかすかに遠くから聞こえてくる。その場所を目前にして、

ルークとミーシャは足を止め、もはや涙と鼻水が止まらずひどくゆっくりと歩くベアトリスを振り返った。


「ここから先は俺とミーシャで行くから、ベアトリスはここで待っててくれ」

「な、なん”、で」

「いや、もう近づけないだろ。顔ぐしょぐしょだし」

「ひどい発言だにゃ。デリカシーがまったくないにゃ」

「あ”あ”なた、ち」

「あ、どうして俺たちが平気かって?さっきこっそり薬飲んだ」

嗅覚麻痺するやつ、とあっさりルークがばらす。

「いや、この作戦めちゃくちゃ穴があってだな、虹黄金蟲スキャラビは卵を守るため、わざわざゴミの奥深く潜り込んで卵を産みつけるらしくて……蜂のゴミ、というか腐った死骸やら肉やらを掘り返すのはこうして薬飲んでないとヤバい」

「わ、わた、わた、」

「そしてミーシャの話だと、その後身体に匂いが染み付いちまって、消臭剤使っても4、5日経たないと取れないんだそうだ。虹色黄金虫は早ければ1日で腐っちまうから、どうしても持っていくやつが必要になる」

「トリスを信頼して、運び手を任せることにしたんだにゃ。感謝するにゃ」

「……まあ、そういうわけだ。羽化は早朝らしいから、それまでにここにまた戻るから、待っていてくれよな」

「……ぁま、まって!!」

ベアトリスはなんとかついてこようとしたが、途中で口元を抑え崩れ落ち、体を震わせて動かなくなった。


 それを後に、ルークとミーシャは先へ進む。

「はは、しかし全然匂いわかんねえ。やべえなこの薬」

ちょっと早まったかなあ……なんて消沈するルークに、

「今さらだにゃー」

ミーシャは呆れ声を返す。


「しかし、おまえがベアトリスを信頼して任せるなんて、言うとは思わなかったな……キャラ違くねえ?」

「無駄口叩かず警戒した方がいいにゃ。……そろそろだにゃ」

フン、と鼻を鳴らすミーシャには、あちこちから集まる虫の羽音と、ゴソゴソ動く音がうるさいほど大きく聞こえていた。

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