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一見、無色透明の

今回少し短めです。

 まだ時間はある。パーテーションから少し離れたテーブルにメルリルを引っ張っていき、どかりとルークはそこに腰を下ろした。


「………どうするよ、あれ」

「可憐そうな少女なのは間違いないにゃ」

ミーシャがとぼけた表情で頷く。

「おい、このシステムが紹介するのは、こんなんばっかりか?」

ルークもさすがにうろんげな眼差しをメルリルに向けるが、彼女は口をとがらせ、

「あの……お言葉ですけど……探す方も大変なんですよぉ…………」

まあ、私が探すわけじゃないですけど、と続けて、

「彼女は不器用で、要領もよくないですが、性格はとてもいい子なんですよ。それこそ、人種にかかわらず、困っている人に手を差し伸べちゃうような……そんないい人、めったに出会えませんよぉ」


 つまり暗に、ハーフで初心者二人のパーティに入ろうとする猛者はそんなに多くない、と言っているわけである。


 渋い顔のルークと、なりゆきを面白そうに眺めているミーシャに、うーん……とメルリルは首をひねってみせ、

「まあ、断ることも可能ですけどぉ……ここで断ると、ギルドポイントはマイナスに動いちゃうかも」

「は?なんだよその、ギルドポイントって」

「簡単にいうとですね……心証を数値で表したものですねぇ。表立って提示することはありませんが、普段組合関連の依頼を受けたりするとプラスに、逆に組合員を傷つけたり、差別発言や暴言が目立つとマイナスに動きますぅ」

片手をあごにあてて首を傾げ、

「あなた方はぁ、これまで受けた依頼をキャンセルせず、確実にこなしてますのでぇ、だいぶプラスになってて、ここで下げるのはちょっともったいないかも……」

「へぇ……プラスが続くとどうなるんだ?」

興味を引かれたようにルーク。


「一定数たまるとぉ、利用できるサービスが増えたり、アイテム引き換え券なんかももらえますよぉ」

「なるほどな」

力強く頷いたルークはミーシャの方を向き、

「ミーシャ、先入観で動くのはよくない。やっぱりまず彼女と話してみよう。結論はそれからだ」

きりっとした表情で言う。

「安心できる要素の、まるで入ってない今の話を聞いて、そう言い切るのがすごいにゃ。まあ、別にいいけど……」

やれやれとミーシャが首を振り、二人してパーテーションの向こうで待つ相手へ向かう。


「いい結果報告、お待ちしていますね!」

ぺこりとおじぎをし、メルリルがとびきりの笑顔をしつつ遠ざかる、という器用な技を披露して去っていった。


仕切りの向こうで手を組んだまま俯き、じっとしていた少女に、ルークが、おそるおそる声をかける。

「あ~、その、君がパーティを希望してるっていう子かい?」

少女が弾かれたように顔をあげ、こちらに振り向いて一瞬目を見開く。しかしすぐに破顔して、

「はい。あの、私はベアトリス・ティーニといいます。私、獣人さんと組むのは初めてなので、至らないところもあるかも知れませんが、よろしくお願いします」

そう言ってペコリと頭を下げる。


おお、いい子じゃねーか、とルークは目をぱちくりさせ、ミーシャはふわぁあ、とあくびをした。


ちょうど昼下がりの、眠くなる時間帯である。


「おう。ルークだ。こっちはミーシャ。よろしくな」

いつものように愛想よく、ルークが笑う。ベアトリスもにこっと笑顔を返して、

「気軽にトリスとかトリクシーとかって呼んでください。それであの、あなた方が薬草とかの知識がある人を募集してるって聞いて……私、第一領域で採取の依頼を主にこなしていましたから、お役に立てると思うんです」

「ちょっと待った。ただ採取の知識だけじゃ迷宮は渡っていけないぜ」

「も、もちろんです。あの、体術を少しと、それからこれを」

慌ててローブの裾からごそごそとを取り出した。


「魔石か。でかいな」

いくつかのひびが入り、黄色がかった半透明な魔石を覆うようにいくつかの枝が伸びている杖は、まぎれもなく、

「魔道具にゃ。……これは、あなたが?」

だいぶ使い込まれているそれに、ミーシャは目を細める。

「は、はい、あの、ここに来たばかりの時に、故郷に帰るという旅人から、安価で譲ってもらいました。使わないと杖が可哀想だからと」

懐かしげに彼女は杖を撫でた。


「マジか。すげえ……運がいいな」

驚くルークの横で、ちょっといいかにゃ、とミーシャは手をかざす。

「うん、別に呪われてもいないにゃ。ただ、あと数回しか使えないかもだけど」

ベアトリスは苦笑して、

「これを譲ってくれた人も、回数に限りがあると、そういっていました。もらってから結構使ってしまったので……」

落ち込む気持ちを振り払うように、

「この杖が砕ける前に、新しい道具を買う予定なんです。お願いです、どうか一緒にパーティを組んでいただけないでしょうか?」

ミーシャが何か言う前ににルークがすぐ、

「おう!いいぜ。ちょうど、誰か仲間がいたらな、って話をしてたんだ」

親指を立てる。


や・す・う・け・あ・い~と口パクでミーシャ。


クルルルル、と小さな音が聞こえ、ベアトリスがお腹を押さえて頬を染める。

「あ、すみません。ほっとしたらお腹が空いちゃいました。お昼を食べてなくて」

「ここは軽食も取れるから、何か頼んでやるよ。俺の奢りで。仲間になった、お祝いだな」

「いいんですか!?ありがとうございます!」

一生懸命頭を下げるベアトリスに、ルークは満足そうにこっそりと、

「どうよ。この殊勝な態度。誰かとは大違いじゃないか?」

「……引っかかれたいのかにゃ?」

ミーシャも、こっそりと返す。


よく見ると目の下にうっすらとクマ、あと髪の毛がパサついてるにゃ。ルークは気づいていないようだけど……。


何かある、とミーシャの勘は訴えてきていたが……まあいっか、と面倒になって放り投げる。


問題が起きたらサヨナラすればいいことにゃ。


これぞ理想的な仲間だ、と喜んでいるルークの後ろで、ミーシャはにっこりと口の端を上げてみせた。

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