表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/55

夜を越えろ 6

お待たせしました。キリがいいので短めです。

デルタの張った結界のおかげか、時折ガッツンガッツンとぶつかってくる魔獣はいたものの、何事もなく夜が明けた。


ミーシャは早朝、出立の準備で忙しい合間に、ビオラたちパーティを見つけて駆け寄った。


「あの……ひとつ聞きたいことがあるにゃ。組合ギルドの鍛練場ってどんな場所かにゃ?」

「受付にカード見せて、聞いたらすぐ案内してくれるわ。別に種族によって差別とかもないわよ」

「ありがとにゃ」

ミーシャが素直に頷く。組合ギルドにおいて‘カード’は通称であり、カード型リンク許可証ライセンスを指す。


「そういや、俺からも一つ聞きてぇことあったんだ」

幕を張るとき深く刺さりすぎた杭を引っこ抜いて放り投げ渡したアイザックが、わざわざ側にきた。


「その武器。どこで手に入れた?」

ミーシャの腰のクナイを指して問う。

「アイザック……!!」

ビオラが止めに入る横で、ピクリと興味深げに耳を動かすデルタ。

「どこから見ても新人ルーキー、しかも地方出の奴に、不相応なんだが」

揶揄るでもなく、真顔のアイザックに、表情には出さないが、耳を伏せたまま嫌そうなミーシャが肩をすくめた。

「ちょっと!!……デルタ、‘耳避け’して」

「了解ニャ!」

 デルタがすぐさまアイザックの周囲に遮音の結界を張り、少し離れた場所で杖をマイク代わりに、ノリノリで踊り始める。


 作業している人たちは最初驚いたものの、ああまたか……みたいな表情ですぐに自分たちの仕事に戻っていく。


「ザック、いきなり地雷を踏むような真似は」

「気になるもんは気になるんだよ。迷宮ここ産だろ、それ」

鋭い眼光を受け流しつつも、ミーシャは溜め息を吐き、

「これは両親から譲り受けたものにゃ」

隠しているわけでもないので、素直にそう告げる。


「親の名は」

さらにアイザックは追求をやめず、ミーシャは苦く笑いながら、

「……教えられないにゃ」

肩をすくめてみせた。

「なるほど。悪かったな」

あまり悪いとは思っていない風情でアイザックはにやっと笑い、

「お返しに教えてやるよ。俺たちが調べていた塔から北にいくと、崖に紛れるようにして‘物見の塔’と呼ばれる場所があり、そこは一見の価値がある」

「覚えとくにゃ」

ミーシャは苦笑いのまま答え、ペコッと頭を下げて様子を窺っていたルークの元へ戻っていく。


「アイザック……いくら彼女が新人ルーキーだとしても、今の質問はちょっと」

「しかも、‘物見の塔’まで教えちゃって、悪手ニャ悪手」


渋い顔で諌めるビオラとブーイングするデルタに、

「あ~、悪い悪い」

アイザックはガシガシと頭を掻きながら、

「ちょっと気になってな。あのハーフが持つ武器の材質……鋼のようだが違う。稀金属レアメタルだぞ」

「マジかニャ。もっとよく見とけばよかったニャ!」

デルタが惜しむようにブンブン杖を振る。同時に、ささっとビオラがまわりを確認し、まだ遮音の結界が有効だと気づき、胸を撫で下ろした。何事かとこちらを振り向いた二、三人に笑顔でごまかしておく。


「はぁ………面倒ね。組合ギルドに報告は?」

「しないに決まってるだろ。ま、わずかでも同じ飯を食いあった相手だ。そしてな……あいつの父親、思い当たっちまった」

「ニャッ!?そんな簡単にわかるわけないニャ」

「ヒントそのいち。レア武器に加えて親の名を隠すということはおそらく有名どころ。ヒントそのに。賢猫ケットシーとのハーフ、あれぐらいの歳ごろ」

「……あ~!ニャニャニャァッ」

「デルタ、魔法は効いてるとはいえさっきから声が大きいから!!」

「ごめんニャッ。でもこれは大変ニャ!ミーシャの父親はあいつニャ!僕ら賢猫族ケットシーのアイドル、癒しの魔術師ユリシーを拐った変態魔導士フェルメルだニャッ」

「フェルメル……聞いたことないわね」

ビオラが真面目な顔で言う。


組合ギルドでも超ッ有名な、‘人嫌い’の代名詞だニャ!」

「そ、本名フェルメル・ヘイズラッド。知らん奴はいないぜ」

うんうん、とアイザックが頷く。

「あ~……あの……よく、愛想が悪いと『おまえ、ヘイズにはなるなよ』っていう奴ね。あれ、何かの魔獣の一種かと思ってたわ」

「優れた研究者であり、魔術師だったみたいだな。なんか逸話の方が凄すぎて、いまいち現実感リアリティのねぇ……。気に入らない相手に毒を飲ませ、腐り落ちるのを放置したとか、人族と獣人が魔獣の襲われた際、迷わず獣人の方を助けて人は見捨てたとか、その手の噂にはこと欠かねえ。うわ、思い返すだけで寒気がしてきた」

ぶるっとアイザックが体を震わせる。


「とりあえず、極秘でいいかしら」

「ああ。ていうか忘れろ。俺も忘れたい」


 遮音の結界が解除されたのに合わせて、あの、そろそろ出発しますよ、と、遠慮がちに声をかけてくる組合ギルド員にビオラは手を挙げて答え、

「これが終わったら厄払いに飲みにいくニャー」

珍しくデルタが覇気のない声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ