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そうだ、仲間を探そう!

お待たせしました。ほぼ説明回です。


「これも金がないのが悪いんだ……」

「何ブツブツいってるにゃ。今日は暖かいから、ぐっすり寝られるにゃ!」

なんとか組合〈ギルド〉で依頼の品を納品したルークたちは、最近懐事情が寂しいこともあり、街から少し離れた森で野宿をすることにしていた。


 ここでは許可なく森で寝泊まりすることは禁止されているため、ミーシャが枝葉で覆いを作って炎の明かりを洩れないようにする。


「おまえはタフだよな、まったく。あれだけ苦労した依頼の報酬がほんの少しで、さらに、受付のおっさんの話だと、リンクライセンスってカードを作るのに、また金がいるそうじゃねーか」

ルークはうんざりしながら、ジュウジュウと音を立てる双頭蛇の串焼きを引っくり返す。


 リンクライセンスは最初に組合ギルドの依頼を達成すると作成条件が満たされ、組合ギルドで手続きをすれば白銀貨一枚で作ることができる。


 ミーシャは、そのおっちゃんが虹迷宮ここでの身分証も兼ねるから絶対作った方がいい、と汗でてかる頭で力説していたことを思い出しながら、

「ぼったくりじゃない、必要最低限の費用となっている!とおっちゃんいってたにゃ!ネガティブ思考は、よくないから、ひとまずお肉食べて元気だすにゃ!」

「迷宮にさえ入れば、大活躍してなんとかなると思ってたんだよな……。地元じゃもう言うやつはいなくなったけどさ、旅してる時はずっと、ハーフへのあたりがひどくて」

「……最初から関わらなければ、気に病むこともないにゃ。群れるのは人の習性かにゃ」

「そういうおまえはどうなんだよ。なんでここに来た。俺と組んだ理由は!そういうなら別に無視してもよかっただろうが!」

苛立つルークを、どうどう、と宥め、

「俺は馬じゃねえ……」

「……あたしがゴードリムに来たのは、憧れてたからにゃ。父さんと母さんが出会ったこの場所。小さいころからいくつも冒険譚を聞いたにゃ。迷宮危機一髪のスリル満点な話や、仲間と経験した面白い出来事なんかを」

「愉快な話か……そういうのに、早く出会いてえよ。お、うまそうに焼けたな」

だらだらと肉汁のしたたる串を取り、ルークは一口噛りつく。

「うぉおッ、なんだこりゃ!うめぇ!!」

そのほどよく脂と肉の混じり合う絶妙な味に、思わず叫んだ。


「ふっふー、あの蛇の太った胴体からして、絶対美味しいと思ったにゃ」

ミーシャが得意げに笑う。……そういう彼女自身は、猫舌なため、まだ食べれてはいない。


「こういううまいもんもたくさんあるんだろうなぁ……。あーくそっ」

しばらく無言で食べ、スープをよそうと、すぐに葉を被せて火を消した。生木と強い葉の香りが、臭気を消していく。


「やっぱり、仲間をもう一人か二人探した方がいいと思うんだよなあ……。それも経験者を。俺達には圧倒的に情報が少なすぎる」

「一度、組合ギルドに問い合わせるにゃ」

「ああ。どのみち、リンクライセンスも作らなきゃいけねえからなあ……」

ルークは空を見上げ……満点の星と、いびつな赤い月を見上げて、溜め息を吐いた。


 翌日。朝露で顔を洗って組合ギルドに向かうが、ごったがえしていたので簡単に用件を告げて順番を待つ。

「お待たせいたしました。リンクライセンスお申し込みの手続きでよろしかったでしょうか?」

「ああ、そうだ。まず俺とこっちのが登録して……あとはここって、仲間の紹介とかやってねえのか?」

「紹介……ですか?」

エレメナが困ったように首を傾げる。すると、

「エレメナ。ちょっといいかな」

低いアルトの声が響き、軽装姿にブーツ、薄い金の短髪ですらりと背の高い女性が奥から姿を現した。


「マ、マチルダさん!……すみません、少々お待ちください」

エレメナがお辞儀をしてミーシャたちに断りを入れ、急ぎ足で奥へ向かう。

「ハーフエルフにゃ」

「ああ……人間嫌エルフいと人のハーフなんて俺ら以上に珍しいんじゃないか?あの左側……」

マチルダ、と呼ばれたハーフエルフの抉れた左耳と、喉元の火傷跡を目で追いながらルークが呟いた。


 マチルダとエレメナは時折視線をこちらに向け、そのやりとりは小声で内容はほとんど聞こえなかったが、

機会チャンスは均等であるべきだ。そうだろ?」

とマチルダが最後にそう言ったのだけが聞こえ、エレメナがそれに頷いた後、再びやってきて、

「お待たせ致しました。リンク許可証ライセンスの説明の前に、あちらで、少々お時間よろしいでしょうか」

エレメナが受付の外の、個室に両開きハーフサイズの扉をつけたような場所を示し、ついてくるようにと促してそちらへ向かう。


 何があったのかわからないが、ルークとミーシャが後へ続くと、後ろからどよめきが上がる。

「おいおい、‘ぎざ耳マチェット’自ら受付かよ!もうお嬢って年じゃねえだろ」

「はは、たまには私だって生きのいい奴らの面を拝みたくもなるのさ。いいからさっさと用件を言え」

振り向くと、あのハーフエルフが受付で大剣を担いだ大男に応対していた。


 席につくなりエレメナが早口に、

「上の方からあなた方にこの虹迷宮と迷宮下都市ゴードリムについて補足をするようにと頼まれましたので、今から説明を致します」

「おい、待った。いきなりどうした」

「時間が限られていますので、質問は必要なものだけ、かつ手短で簡潔にお願いします」

クールを体現したようなエレメナの返答に、

「こいつはおバカにゃ」

一連の流れでだいたいの状況が掴めたミーシャは、ドス、とルークに肘打ちを食らわせて頷いた。

「この虹迷宮とゴードリムには暗黙の了解ルールが存在します。それは本来なら同族から、あるいは冒険者の先達から伝えられるものとなりますが、おそらくあなた方がその恩恵を受けるのは難しいでしょう」

感情を表に出さないよう、ただ義務的に伝えることを優先しながらエレメナは言葉を紡ぐ。


「まずは、世界的な共通認識から。重要な情報ほど対価が必要になります。もし価値のある情報が簡単に手に入れられることがあれば、それは幸運といえるでしょう。また、対価を支払っても何の価値もない情報を掴む場合もありますので、場所、時、観察力による見極めが重要となります」

ふぅ、と一息吐いて、

「虹迷宮の第一領域は常連者には‘試しの関門’と呼ばれます。領域の性質として、必然的に弱者が選別され振るい落とされるため、第一領域に留まっている者は余裕がなく、上昇志向の者がほとんどです。それもまた、選別に一役買っています」

「な……ふ、モガガガ」

「しーッ。騒ぐのはアウトにゃ!特に今は!」

ミーシャがルークの口を塞ぎながら小声で諫めた。


「当ギルドでは、すべての種族及び、ランクによる差別を禁止しています。そのため、ハーフであるあなた方が組合ギルド所属の建物内で差別されることはありませんが、一部の店、それと迷宮内ではその限りではありません。ただ、ここは様々な種族が集まっているため、もちろん異種族間の交流に肯定的な者も外よりは多く存在します」

ちらりと受付の人だかりを見ながら、ここまでで何か質問は、とエレメナは尋ねる。

「今のこの時間は、組合ギルド上部の命なのかにゃ?それとも、一部の個人的な?」

ミーシャが面白がっている表情でひそひそと、おおよそわかりきったことを聞く。

「……先ほどの時間は基本的には時間外扱いとなります。もし他に質問がないのなら、今度はリンクライセンスの説明に移らせていただきますが」

幾分か肩の力を抜き、エレメナはあまり光を反射しない金属でできている、おおよそ手のひら三分の一サイズの金属プレートを取り出した。

「このカードで、組合預かりの資産の引き出しが可能になります。お金も借りられますが、ランクにより限度額が設定されています。このカードは組合ギルドに登録されているお店でしたら、どこでも使用可能です」

「マジかよ。めちゃくちゃ便利じゃねえか!」

ルークが比較的抑えつつも驚きの声をあげる。

「他に、迷宮領域内に設置されている中継地の利用が可能になります。依頼物を、手数料と引き換えに取中継地のボックスに納品することができるようになります。ボックスに入らない大型物件はざひょ……でなく、納品希望者の名前と品物の特徴、大まかな場所と目標物をメモとして送れば、高額の手数料と引き換えにスタッフが引き取りに上がります」

「おおおっ」

「……すごいにゃ」

いったいどれだけの高度な技術と、どれだけの費用コストを払えばそれが可能となるのか?……二人には見当もつかなかった。


「最後に、もし仲間をお探しなら、当組合ギルドのマッチングシステムをご利用ください。月額8銅貨ローとなりますが、確実です」

「はは……また金か……」

「これも必要な投資にゃ。次はいいことが待ってるにゃ!」

打ちひしがれるルークの背中を、ミーシャはポンポンと優しく叩いてあげた。

二人への暗黙ルール説明時間が時間外扱いにならない場合……ハーフの二人がリンクライセンス作成にいちゃもんをつけ、その対応をしていた(マチルダが対応すればすぐ終わるが、エレメナのスキルアップのため、彼女にクレーム対応させた)として上に報告。


 エレメナタダ働きの報酬はマチルダがお茶とケーキ奢ること~。多くの女子にとって憧れの存在だから彼女的にはこっちの方が嬉しい。

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