2.無能から有能に?見つけられた付与術士(上)
起承転結の承の部分になります。かなり長いので3分割しました。
状況説明→アクション→転機という流れになります。
あの衝撃的な追放から一週間後。
失意の僕は冒険者仲間達に一通りの挨拶を終え、身支度を整えて、生まれ故郷の村への帰郷すべく、その帰り道でとある村に立ち寄っていた。
まだ時間は昼少し過ぎだが、ここから先は山道が続き、次の村までは先が長く今の時間だと夜に山中にいることになるので、ここで一泊して明日の朝早くここを出るというプランだ。
村の宿屋に着き、受付でチェックインすると客だろうか。冒険者らしい服の女性が後からやってきた。そのどことなく幸薄そうな水色の髪をした少女に見覚えがあった。
「・・・あれ?ダイヤさん?」
「もしかして・・・アクア?」
肩まで伸ばしたミディアムヘアーの可愛い系の容姿とぺったんこの体型。サフィーとは違った意味でのおどおどした空気を纏った彼女は別のパーティーに所属する黒魔術師であり僕の友人の少女だ。
アクアとの出会いはだいぶ前。2チーム共同で任務を受けた時からである。一つが僕が所属していた“英雄の剣”。そしてもう一チームがアクアが所属するチーム。
タールと向こうのリーダーが早々に衝突したせいで共同というより競争といった任務になってしまいチームとしては気まずい関係だったが、アクアとは同年代でその後も何故か会う機会が多いこともあって、その性格から世間話をして呼び捨てにするくらいに仲は良くなった。
「久しぶり!最近顔を見なかったけど、元気だった?こちらには任務中なにかで来たの?」
落ち込んでいたところに顔見知りに会えてうれしくなりついいろいろ聞くと、アクアは気まずそうに目線をそらして言った。
「・・・私、パーティー追放されたんです・・・新しい魔術師が来たから用済みだって」
「・・・おおぅ」
追放って流行っているのか?
そして、宿屋でお互いチェックインした後は場所をうつし、村を何気なく散歩しながら僕らは世間話をした。無論、話題は先の追放話である。
「ダイヤさんは知っているだろうけど、私一発屋じゃないですか」
「う、うん」
アクアの特徴であり蔑称。それが「一発屋」。
アクアはレベルが高い攻撃魔法が使えるが、一発で魔力切れを起こすというものだ。強力な兵器と言えなくもないが、それしかないといえる。
何せ、低レベルの魔法を一発でも使おうものなら、その後回復するまで高レベルの魔法の魔力が足りなくなる。そして高レベルの魔法を使った後は一切魔法が使えず、体力切れも起こし凡人以下の身体能力に成り下がり、文字通りお荷物になる。
マジックポーションを使えばいいかもしれないがあれはかなり高価なので、コストもかさむ。本人もその欠点に気にしていたのだが。
「私なりに努力したんです。魔力を増やそうとして、体力もつけようとして頑張ったのに・・・だけどこの間いきなり上のランクに行くために、新しい魔術師雇うって・・・私に何の話もなくみんなで勝手に決めて・・・私は才能ないからって・・・装備と少しの金持たされて強引に除名されたんです・・・」
これまたどこかで聞いた話。
「うぅ・・・ひどいです。元々組んでくれと言ったのは向こうからなのに。一緒に入ったアス君も追放に賛成だって・・・役立たずなのは承知です。でも努力して・・・頑張って・・・それなのに大切な仲間だと思っていたのに、こんな一方的に邪魔者扱いするなんて」
さらにどこかで聞いた話・・・本当に偶然なのか。
「その気持ちよーくわかるよ」
「ふふふ、追放された人の気持ちがですか?」
「うん、実は僕も追放されたんだよ。僕の場合は寝取られのおまけつきだけど」
「ほへ!?」
素っ頓狂な声を上げるアクア。まぁ、驚くよな。
「ひどい!ひどすぎます!!」
僕の話を聞いて、珍しくアクアが顔を真っ赤にして怒声を上げていた。
「そうだよね!ひどいよね!」
「当たり前です!ダイヤさんは私と違って情報収集、雑用、折衝とか頑張っていたじゃないですか。それなのに!どこを見ているんですかあの人たち!」
「・・・一人でもそう思ってくれていたらなー」
と、そんなたわいもない話をしていると、
と、その時突然半鐘が鳴り響いた。
「な、何だ?」「何!?」
突然の大きな音にあわあわするが、とりあえず宿に戻る僕たち。そこには宿の店主が焦った顔で詰め寄ってきた。
「冒険者の方々ですよね!」
若者がこちらに向けて声を発した。
「助けてください!魔物の群れが山から下りて来ているらしいんです!何十匹も!」
僕とアクアは思わず顔を見合わせた。
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