ショートストーリーシリーズ −開かずの間ー
お弁当の時間が終わり、少し時間があったので友達のもとみち君が学校を案内してくれると言った。僕はそれに「うん。」とうなづき、ついていった。今日は米国の学校での最初の日。かなり緊張していたせいか、授業もあまりわからなかったし、ご飯も食べられなかった。でも、仲良くしてくれそうな友達がいたので、少しほっとした。
最初は図書室、他の学年の教室、理科室、音楽室など、いろいろと見せてくれた。わかってくると次第に余裕が出て、終わるころには彼とも十分に仲良くなっていた。
ふと、彼はとある部屋の前で止まった。
「いい、この部屋は絶対近づかないほうがいいよ。『開かずの間』って呼ばれているんだ。」彼は真顔で言った。
「そんなに怖いところなの?」
「うん。開いているところを見たことはないし、たまに変な声が聞こえてくるんだ・・・。」
「変な声って? こんな声?」と私は、その部屋からもれ聞こえてくるような音を指差しながら答えた。
「え・・・、本当だ。何かいるんだ・・・。お化け?」びっくりしたように彼は言った。震えているくせに怖いものみたさ半分で、「開けてみようか?」と急に言い出した。
「開かずの間でしょ? 怖いよ、何が出てくるかわからないし・・・。」そう僕は言った。でもその時は既に遅く、彼は既にノブに手をかけてぐっと扉を引いていた。
扉は「ぎぎっー」と変な古い木を引き裂くような音を立てて、重く開いた。その瞬間我々の目の前には、気持ちの悪い長い黒髪の女性らしき人が立ちすくんでいた。
「あかんどー、お弁当すてるの・・・。」と彼女が低い声でしゃべった。僕たちは「ぎゃーっ!」と声を立てて逃げ出した。
数日後、校長先生に呼び出されて僕たちは事実を知った。その部屋は『開かずの間』ではなく物置小屋で、彼女は先生に頼まれて片づけをしていた事務の人だったのだ。ただ、何かの弾みでドアが開かなくて困っていたのだ。
「I can’t do open it still now…」それが彼女の最後の言葉だったのだ。