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名前
メルヒオール
種族
シン・エルフ
年齢
25
スキル
夢幻の書庫
加護
弁財天の慈愛
以前と比べて変わったことは、名前がメルヒオールになっている事だろう。どうやらメルヒオールという名前が登録された? らしい。
「どうだい、何か変わっていたことはあったかい?」
「名前がメルヒオールになっていました」
「うんうん、予想の範囲だ。さてこれからだけど……おや?」
彼女が何かを話そうとしたときに、外から何か大きな物が落ちる音がする。
『シルヴィ、いるか?』
頭に響く声から察するにヴィオレットが来たようだ。
外にでて見るとそこにいたのは巨大な鳥のような生物とヴィオレットだった。その鳥のような生物はなぜか体から湯気が出ており、首があらぬ方向に曲がっていた。もう生きてはいないだろう。
『拾った。食べきれないから食べてくれ』
いえ、そんなのはそこら辺に落ちていないと思うのですが。それに貴方ほどの巨体であれば、数口で消えて無くなりそうですが。
俺が何を言いたいのか悟ったのか、ヴィオレットはこちらを睨む。
『拾ったのだ』
「ふむ、メル君。どうやら彼女は君が気になって食べ物を取ってきてくれたみたいだ」
「えっ、そうなんですか?」
『…………そんなわけない、たまたまだ』
やけに間があったような気がするのですが。
「またまた、てれなくていいんだぞ?」
『た ま た ま だ』
わざわざ言葉を句切ってまで強調しなくても……逆に疑われるような気がする。
「メル君。彼女はこんな見た目だけど、非常に優しいヤツでね。良ければ仲良くしてほしい」
そういうとヴィオレットは小刻みに体を震わせていたが、やがてため息をついた。とはいえ図体がでかいせいで、突風クラスのため息だったが。
『……帰る』
彼女はそう言って背を向け浮遊する。俺は慌てて彼女を呼び止めた。彼女は首だけこちらに向ける。
「いろいろ有り難うございます、ヴィオレットさん! お肉も有り難うございます!」
ヴィオレットは何も言わず浮かび上がると、あっという間に飛び去ってしまった。
いなくなった空をじっと見ていると、肩にぽんと手が置かれた。
「とりあえず、食事にしようか」
シルヴィの料理はよく言えば大胆で、悪く言えば大雑把で有ろう。確かに美味しいのではあるが、場所によって味にむらがあったりするし、なにより盛り付けが男前だ。いや、ご飯全体が男前だ。
「ふむ、何か言いたそうな顔をしているな」
均整のとれた見た目からは想像できない男飯だ。
「ええ、そうですね。美味しいです」
「そうか、作った甲斐があったよ、ただ君にも覚えて貰うからな。住み込みで教えてやる以上、君も家事を手伝ってくれ」
まあ、それは構わないのだけれど……掃除とかどうするのかな? ってちょっとまて、
「え、住み込みですか?」
「ヴィオレットに乗せて貰ってきたのだろう、ならこの辺りに家がないことは見たはずだ」
確かにその通りだ。広がる木々しか見えなかった。
「野宿で構わないなら、その辺で寝ると良い。ただ、あまり家から離れすぎると魔獣が出るから離れすぎないようにな」
「いえ、この家でご厄介にならせていただきます!」
「まあ、その方が私も君の事をすぐに調べられるから都合も良いしな……さて、食事も済んだ事だし魔法と行きたいところだが……」
「何か問題が?」
「君の寝る場所を確保しないといけない。幸い姉や弟が使っていた部屋があるから部屋があるのだが、いかんせん荷物置き場と化している」
なんだか察してきたぞ、荷物置き場という名ばかりのゴミ置き場だな。
「まあ、見てくれれば分かる」
シルヴィは立ち上がって、彼女の部屋の隣にあるドアを開いた。俺は彼女に続いて部屋に入る。
思ったよりはマシだ……。
声が漏れていたのか、俺の顔で察したのか、シルヴィは眉をひそめた。
「君は一体どういう部屋を想像したんだい?」
「思わず顔をしかめる程のポイズンドリンクを出す、ゴミ屋敷の主さんの部屋を想像しましたが」
「私だって他者が利用する可能性のある部屋は散らかしたりしないさ」
結構荷物はあるけどな。言わない方がいいか。
「ここ使って良いんですか?」
「ああ、少しほこりっぽいが、まあ……」
そう言って彼女は窓を開けると魔法を発動させる。落ちていた小さなゴミを一カ所にまとめ、そのまま外に飛ばした。
「これでなんとかなるだろう」
まだ荷物が多いが、ほこりっぽさは軽減しただろう。とかなんとか言う前に、寝る場所を提供してくれただけで感謝しなければならないのだろうが。
「ありがとうございます」
「なに、君にはこれから色々実験させて貰うからな、さて魔法なんかについては……明日にしようか。君は疲れているように見受けられる」
意外に気を使えるんだな。と口から出かかったがなんとか飲み込んだ。