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夢幻の書庫  作者: 入栖
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 部屋の片付けが一段落するころには、現状を説明し終えていた。逆に言えば色々話すべき事があったのに、片付けが終わらないぐらいシルヴィの家が散らかっていた。

「うむ、だいたい理解した。ならば私は君にこの世界の知識と、しばらくの衣食住を提供しよう」

「え、良いんですか?」


 シルヴィは頷く。

「ああ、代わりに……君のもつ異世界の知識と君の能力『夢幻の書庫』について色々聞かせて貰おうか」

 ああ、と頷く。ただ地球の事について話すのは良い、だが夢幻の書庫は別だ。


「夢幻の書庫についてはあまり話せませんよ? 女神からの説明もほとんど無かったし、どうやって使うのかも分からないので」


 『勇者の素質』『聖女の素質』『賢者の素質』なんかは『ぼくのかんがえた、さいきょうの、のうりょく』というのがビリビリ伝わってくる長文説明が書かれていた。しかし夢幻の書庫は『本がたくさん読めます』それだけ。


「まあそれは特殊な天恵スキルなのだろう。君が言う女神与えたなら使えないことはないはずさ、明日にでも調べてみよう」


「……一つ気になってるんですけど、女神が嘘を言っているなんて事は無いですよね?」

 シルヴィは首をかしげる。

「なぜだ?」


「実は僕は女神に転移させられる前に、年齢は変わらないから、といわれているんです。でも明らかに俺、小さいですよね? これ、若返りましたよね」


 なにか使える荷物がないか調べたときに嫌な予感はしていたが、シルヴィに合ったときに確信した。明らかに俺の身長は縮んでいる。体もまるで少年だ。十二歳くらいか?


「ふむ、君は何歳だ? 私は君が二十代ぐらいに見える」

「え? 確かに25歳でしたが……? え?」

 意味が分からない。彼女の口から出た年齢は、日本にいた俺の年齢と一致している。でもこの身長じゃ小学生高学年といったところではないか?


「少し待っていろ」

 彼女はそう言って隣の部屋に入っていく。そして布に覆われた丸い何かを持ってきた。

「ほら、見てみると良い」

 彼女が持ってきたのは鏡だった。それに映し出されている少年を見て思わず呟いた。

「は? なんだこのイケメン少年? え? あーあー、こんばんわ、ごきげんよう…………俺だな」

 信じがたいことにそれは自分みたいだ。話す度に口が動いているし、顔をつねれば目の前のイケメンも顔をつねってる。


 俺はじっと顔を見ていてあることに気がついた。

「耳がとがっている?!」

「どうだ、エルフの二十代ならこのぐらいだろう?」

 え、エルフ?


「エルフ……ですか? 人間、ではなくて?」

「ふむ、以前の会話から察するに、君は人間だった。いや根本的にエルフがいなかったようだな」

「なぜだ……」

「もしかすると転移で年齢は変わらないものの、種族が変わった可能性が有る。いやしかし、そんな話は聞いたことがないな……」


 俺は彼女から鏡を取ると、今度は体も見えるように少し離してみる。

 映し出されるのは半ズボンに腰巻きを巻いた少年。耳は少しとがっており、肌は以前に比べ白い、かもしれない。


 ぽん、と肩に手を置かれる。

「混乱しているようだが、いったん落ち着け。現状をしっかり把握することから始めよう」

 シルヴィにそう言われ小さく頷いた。


「まず君についてだ。ここに来る前は人間だった。間違いは無いね?」

「ええ」

「だけど今はまるで別人のように、それも種族が変わってしまったと」

「その通りです」

「ではその過程において、種族が変わりえるほどのなにかがあったか?」


 そう言われても……転移した後から体に違和感を感じたのだから、やはり原因は

「ある、かもしれないと言えるのは……転移ですかね。転移する前は多分変わってなかったと思うんですけど」

「そうか。まあ見た目だけエルフという可能性も有るし、種族に関してはいったんおいておこう」

「え、置いておくんですか?」


 思わず素の声で聞き返えしてしまった。

「ああ、自分が何者かを調べる魔法が存在しているからな。まずは魔法の使い方を覚え、その魔法を使えばはっきりするだろう」


 なるほど、ならばそれを使えばいいと。

「はあ、ずいぶん便利な魔法も有るんですね……というかその魔法って他人には使えないんですか?」


 彼女が俺に使えば、すぐに何者か判断できるだろう。

「基本は使えない。特殊なアイテムだとか、魔眼だとか、神から能力を与えられた等であれば話は別だがな。いちおう生物で無ければ鑑定できるスキルを私は知っているが、まあ君には無効だろう」


 へえ、そんなスキルが有るんですね、って

「スキルですか?」

「ああ……もしや君の世界にはスキルもないのか?」


「有りませんね。片付け中に話しましたよね、魔法すらなくてあるのは科学技術ぐらいなものですよ」

 彼女は手を組み何かを考え込む。

「より君の事が気になってきたよ、もう少し話しをしようかとも思ったが、先に魔法を使用可能にしたほうがよさそうだ」


「そもそも俺って魔法を使えるんですか?」

「多分使えるだろう。普通に魔力を感じるぞ?」

 彼女は立ち上がると俺の後ろに立つ。

「さあ、立ってくれ」


 言われたとおり立ち上がるとシルヴィは俺の右手を取る。白く細い手で俺の手を包み込んだ。

「では君に魔力を流しこむ。まず君はそれを感じ取ってくれ。いくぞ」

 そう言うと同時に右手に何らかの違和感を感じた。たとえて言うなら変な体制で寝てしまい、手の血液循環が上手く行われず、痺れてしまった時のような……。


 その痺れはだんだんと無くなっていき、代わりに彼女の言う魔力らしき感覚を感じられるようになっていた。

「なんだかそれっぽいのが感じられました」


 俺がそういうと、彼女は少し驚きながら手を離す。

「……そ、そうか。ではそれを体の中で循環させてみてくれ」

 といわれても、どうやって循環させるんだ。よく分からないが、血液のように体内を循環するイメージで……って適当にやったが案外上手くいくものだな。


「これが転移者か……」


「急にどうしたんですか」

 なぜかどん引きしている彼女に理由を聞いてみる。彼女から返ってきた答えは

「君の魔力が異常だという事が分かっただけだよ。さあ君のステータスを見ようか。私のまねをしてくれ」


 と彼女に言われたとおりに行動すると、目の前に半透明のポップアップのようなものが浮かび上がった。そこには白い文字で色々な物が描かれている。


名前

 □▼×○

種族

 シン・エルフ

年齢

 25

スキル

 夢幻の書庫

加護

 弁財天の慈愛


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