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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
アルツベン高校
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第六話 アルツベン高校

 目が覚めた。雨が降っているのだろう、窓の外についているシャッターが心地よいリズムを奏でている。

エレナは目をこすりながら体を起こして伸びをする。空気が湿っぽい。


 机の上の時計を見ると午前10時20分。かなり寝てしまった。昨日夜遅くまで起きていたせいだろう。今日が日曜日で助かった。

港君は来なかった、やはり魔物か幻獣に殺されてしまったのだろう、と考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「はーい、どうぞ」


 ドアが開いた。そこにはにはデルピュネ様がいた。上半身は女性だが下半身が蛇の女神だ。朝食を持って来てくれたらしい。いい匂いがする。


「おはようエレナちゃん、調子はどう?」

「おはようございます、デルピュネ様、まだ少し眠いです」

「そう、昨日は残念だったわね」

「気にすることじゃありません、ただ彼が死を選んだだけですよ」


 そう、ただそれだけのことだ。昨日、一晩中”神託の転送石”の前にいたが彼が現れることはなかった。途中、ケンタウロスたちが騒がしかったのを思いだいた。どうしたんだろうと考えながら朝食をとっていると、デルピュネ様が心配そうな顔をしてこっちをみている。


「大丈夫です、デルピュネ様。それと美味しいです」


 なるべく笑顔で話した。

安心したのだろう笑い返してくれた。


「昨日、夜中に生徒が訓練所に無許可でいたそうよ。ホルス先生が捕まえたらしいわ。それにホルス先生に棒で戦おうとしたそうよ」

「そんなんですか?」


そんな生徒がいたのか、ケンタウロス相手に棒だけで戦うなんて無謀すぎる。


「それでね、私少し考えてみたんだけど」


申し訳なさそうな顔をしている。


「あなたほとんど学校に行ってないでしょ、だからもしかしたら転送石の名前、書き間違えてたりしてないかしら?」


 それはあり得る話かもしれない。古代語の成績は特に悪い。それでもしも訓練所近くの転送石の名前を書いていたとしたら彼は訓練所近くの転送石にいたことになる。そうなるとその生徒は港君という確率が高くなる。

私は急いでで残りの朝食を口に詰め込んだ。詰めすぎたせいか少しむせた。デリュプネ様がが水くれた。


「焦らないでゆっくり食べなさい、それとエレナちゃん、これ」


 紙切れと一粒の薬を渡された。薬は”語源の薬”だろう。紙切れを開くと場所が書いてある。食堂?


「その生徒、そこで罰として皿洗いさせられているらしいわ。」

「皿洗いですか!?」


 それは大変だ。あれはとんでもなく辛い。気持ち的な問題ふだが慣れるまでが大変だ。

もしも本当に港君だった場合...

私は急いで部屋から出た。



〜〜



 やばい、やばい、やばい!!

 これは絶対にやばい!入れたら絶対手がなくなるだろ!!これは拷問なのか!?

僕はあの後、捕まってしまったらしい。雨風で起きたら牢屋にいた。


「వైట్ వెంటనే! కేవలం ఒక డిష్ వాష్!」

後ろでケンタウロスが何か言っている。相変わらずわからない。何語だあれ。


 僕の目の前には紫色と金色が混ざった液体があってコポコポと音を立てている。まるで魔女が鍋の中で作っている中身のようだ。”洗浄毒”これの名前だろうか?そして隣には大量のお皿がある。洗えということなのか?でもこの中に手を入れれば間違いなく手が溶けてしまうだろう。”洗浄”とついているが”毒”でもあるんだから。めちゃくちゃ怖い。

 なんども逃げようとしたが腰のあたりをロープで結ばれていて逃げられない。少し犬の気持ちがわかる気がする。はぁ、少しため息をついた。しょうがない。試しに一枚お皿を入れて見る。ジュワァァァァ!!皿が煙をあげて液体の中に消えていった。僕の顔からは尋常じゃない量の汗が垂れてきた。もう服がびちゃびちゃだ。


 しばらくの間、僕はずっとこの液体とにらめっこしていた。すると、あくびが聞こえてた。後ろを見てみると疲れてたのだろうか、ケンタウロスがその場に座り込んで、目がとろ〜んとしている。

寝ろ!寝てくれ!頼むから!僕は心の中でめちゃくちゃ祈った。するとケンタウロスが目を閉じた。こんなアニメのような展開が本当に存在するとは..驚きだ。


 僕は心の中でガッツポーズをした。そしてゆっくりと出口を目指して歩き出した。少しずつ、ゆっくりと、足を進めた。まるでナマケモノみたいだ。途中で見たこともない魚の干し肉を見つけた。顔がとてもグロテクスだ。他にもいくつか見たこともない食材そうなものがある。ケンタウロスが食べるのだろうか。鹿のような角をつけたウサギの顔ような動物の頭がある。本当に不思議なところだ、ここからドアまでだいたい5mほどだ。かなり遠く感じる。もうちょっと....、残り3mくらい、ついた!後はこのドアをゆっくりと開ければ....。

両手をドアをかけて体重をかけた瞬間、急にドアが開いてギィイっという音が響いた。まじか、僕は運がないらしい。あぁ、いつも思う、運ぐらい好きな時に使わせてくれよ!と。


 ドアの前にはエレナがいた。僕も彼女もびっくりした顔をした。そしてエレナが笑った。とても可愛らしい。顔の周りに花が見えてきそうだ。だが僕の視界から突然エレナの顔が消えて真っ暗になった。僕の顔に柔らかいものが当たっている、なんだろうと手で触ってみる。柔らかい。いい匂いがする。顔を上げてエレナの顔を見てみると、さっきと違う真っ赤な顔をしている。


「キャァーーーーーー」

 エレナが急に叫んで僕の右ほほをビンタした。それと同時にお腹のあたりに力がかかって部屋の中に引っ張られて宙づりになった。

「ウゲェ!」

 内臓が口から出てきそうだ。もう少し手加減して欲しかった。


「మీకు ఛాతీ ఉంది.」

 目の前にケンタウロスの顔がある。よくみると結構ハンサムだなこいつ。羨ましい。

 

 上で宙づりになってゆっくりとクルクルと回っている。エレナの方を見てみる。その場に座り込んで胸のあたりを押さえてこちら見ている、目を見ると少し涙目になっている。おそらく僕はエレナの胸の中に顔から落ちたんだろう。やってしまった、これはまずい。助かったと思ったのに。


「ご..ごめんエレナ!そんなつもりじゃないんだ、これは事故で...」

「なんだお前喋れたのか」

 後ろからダンディな声が聞こえて来た。後ろ見てみるとケンタウロスが呆れた顔をしている。


「ケ..ケンタウロスが喋った!!」

「失礼な、我々は獣人だぞ、しゃべることなど造作もない」

「でもさっきまで訳も分からない言葉を喋ってたのに」

「ああ、なるほど、そういうことか」


ケンタウロスが納得したような顔をした。


「エレナ、お前”語源の薬”持ってないか?」

「持っています」


まだ顔が赤い。かわいい。


「こいつに渡してやれ。おいお前、名前はなんという」

「成瀬港です」

「そうか港、昨晩は悪かった。みぞおちに蹴りを入れてしっまって」

ケンタウロスが深々と頭を下げた。

「大丈夫です、気にしないでください。僕もすみませんでした。急に攻撃してしまって。それとお名前を聞いてもいいですか?」

「ホルスだ。ちなみにここの高校の武術講師をしている」


 先生だったのか、それも武術の。どうりで動きに無駄がない訳だ。


「よろしくお願いします。」

 宙づりになっているからお辞儀ができない。

「ホルス先生、すみません下ろしてもらっていいですか」

「ああ、すまなかった。少し待っててくれ」


 少しずつホルス先生が下ろしてくれた。そして手を差し伸べてきた。

僕らは握手を交わす。とてつもなく手がでかい。僕の手が埋もれている


「よろしく頼む、港。明日から学校だが君の武術の授業は何時限目だ?」

「えっと、ちょっとわかりません。まだ来たばっかりなので」


 ホルス先生が驚いた顔をした。


「そうか、それで誰に封筒を渡された?」


 声が低くなっている。少し怖い。


「えっと、そこにいるエレナにもらいました」


 エレナのいる方を見てみる。しかしエレナはそこにいはいなかった。そこには小さな紙切れが置いてある。

手にとって中を見てみると小さな薬がはいっていた。”言語の薬”、さっき言っていたやつだろうか。


「また逃げれられてしまった」


 ホルス先生が悲しそうな顔をして遠くを見ている。

どうしたのだろう。


「ホルス先生、どうかしたんですか?」

「いや、なんでもない」

「この薬どうすればいいですか?」


”語源の薬”というやつを見せてみる。


「それは、お前のだ。少し待っていろ、水をとってくる」


 なんだろうこれ、とても不思議な薬だ。黄色の薬に小さな青い粒が見える。


 いつのまにかはホルス先生が戻って来ていた。


「港、それを飲みなさい」

「なんですかこれ?」

「それは”語源の薬”というものだ。それを飲むとこの世に存在する言葉を全て話せて聞けるようになる。

残念ながら書くことはできないし、始めに相手の言葉を聞かないと相手と意思疎通が取れないがな」

「でも、僕たちもう話せているから必要ないんじゃ?」

「この薬を飲んでいない人間や獣人、魔人は沢山いる。昨晩の君のように相手が最初に話すとは限らない。それにこれから世界中を飛び回ることになる、その時にこれは必要になってくるだろ?」

「世界中を飛び回るんですか!?」

「あいつ、全然教えてないじゃないか。まぁ、これから話を聞くことになるだろう、気にするな」


 水が入ったコップを僕に渡してきた。


「ほら、ググッと飲め」


 僕はその薬を水と一緒に飲み込む。味は特にしなかった。


「どうだ?」

「どうだと言われても...あんまり実感は湧きませんね」

「そうだろうな、俺も飲んだ時はほとんど実感は湧かなかったよ。気にしない方がいい」

「そうします」


 ホルス先生が頷いて、部屋から出ようとする。


「それじゃ俺は戻るからな」

「あと一つだけ、あの”洗浄毒”ってなんですか?」


ホルス先生が不気味ににやけた。


「ちょっと。左手を貸してみ」


僕は左手を出す。ホルス先生は僕の左手をがっちりと握って”洗浄毒”の方に走り出した。


「待てください!ホルス先生、何しようとしてるんですか!?」

「男なら覚悟を決めろ!」


僕に左手を”洗浄毒”の中に突っ込んだ。ジュワァァァァっと音を立てた。


「わぁぁぁぁぁ!」


 僕は思いっきり叫んだ。

 ホルス先生の右手を払いのけ左手を見て見る。そこにはちゃんと左手があった。痛くもない

ホルス先生が思いっきり笑っている。


「悪かった、悪かった。この液体はな、菌とみなしたものを殺す液体なんだよ。菌がついたものを入れると煙を上げるんだ」


 全く悪びれてはないなこの人は、いや獣人か。

 ハルス先生はそのまま笑いながらどこかに行ってしまった。

僕はその場に尻餅をついた。


「わぁぁぁぁぁ!って港君って子供っぽいね」


 いつのまにか後ろにエレナがいた。笑っている。少し驚いた。


「しょうがないだろ、”毒”なんて誰だって怖いだろ」

「私もそうだったよ、結構怖かったなー慣れるまで大変だったよ。頑張ってね」

「マジか....」


 さっきのことは許してくれたのだろうか。一応謝っておこう。


「それと、エレナ、さっきはごめん」


頭をさげる。


「だ..大丈夫だよ、気にしてないから」


エレナの顔が少し赤くなった、これはタブーだな。


「そ...そんな事より、この学校について教えてあげる、行こう、港君」


エレナが出口に向かって走って行った。


「どこに行くの?」

「最初は図書館かなぁ」

「そこに行って何するの?」

「まず始めに君がどの神様の子供か調べないと行けないから」


 そうだ、いろんなことをエレナに聞きたいんだった。


「エレナ、君に色々と聞きたいことがあって..」


 僕の言葉を遮ってエレナが話し始めた。


「私が答えられることはちゃんと答えるよ、そのほかのことは全て図書館でわかるよ」


 それは置いといて、とエレナは言いそして手を出してきた。


「改めてよろしく、成瀬港君。アルツベン高校にようこそ!」

「よろしく、エレナ」


 僕らは固く握手をする。窓のからの日光が僕らを照らした。雨が上がったようだ。

僕らは外を見る、雲ひとつない綺麗な空だ。


























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