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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
樹海の秘宝
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第九話 生贄

 オオオオオオオォォォォーーー!!!!!


 ミノタウロスが叫ぶ声がどこからともなく聞こえた。ほとんど何も見えないせいかすぐ近くにいる気がして落ち着かない。


 一体、どれくらいここにいるんだろう。太陽を見ることができないからか体内時計がめちゃくちゃだ。


 僕は地面に手をつけて骸骨を呼び出す。地面に蟻地獄ありじごくのようなものが無数に現れて真っ黒な人骨が

次々と現れる。


 恐ろし光景だな。暗闇の中に森の中に潜んでいる動物の目のようなものが無数に現れた。


 僕は拳銃を取り出して迷路の道の端に向けて一発撃つ。


 ガン!!と鈍い発砲音が響き、弾丸が油に火種を落とした。そして風船が破裂するかのように、一気に火が走って僕の視界を照らす。


 オレンジ色の視界、その前に連なる骸骨の奥に一匹のミノタウロス。


 こんな光景はこの先の人生で見ることはないだろうな、と思いながら僕は足を進める。


 ミノタウロスも僕の方に気がつき、顔をさげ、角をこちらに向けながら牛のように走り出した。一気に距離がつまり、燃え盛る火が僕とは反対側になびいた。


「盾を構えろ!!!」


 ガチャガチャガチャ!!と規則正しく金属が擦れ、骸骨たちが姿勢を低くする。それに続いて僕も姿勢を低くしてFN P90を構える。


 ギギギギギギギ!!!!!!と地面と人骨が擦れながら後ろに押される。奥の方では盾とミノタウロスの角がなんどもこすれ合って火花が散っている。


「2、1.....今!!!!!!!」


 僕がそういうと骸骨たちが一斉に横に開いた。


 ミノタウロスがバランスを崩しながら僕からほんの1〜2mのところにこける。


 ミノタウロスの頭に銃弾がめり込む。血が蛇口をなくした水道のように吹き出して目玉が地面に転がり、舌が地面にだらんと垂れる。


 僕は銃弾がなくなるまで引き金を引きつつける。ガガガガガガ!!と発砲音と、とても深みのある火薬の焼けた匂いが僕の鼻の中に漂う。


「2体目。あと4体」


 僕はそうつぶやいてその場を後にする。



〜〜〜〜〜〜



「迷宮内には6頭のミノタウロスがいて、その全てを倒すとあの迷宮は存在する理由をなくして崩壊する」


 イユ・ウェルシュが机の上にとても古い本を広げながら話す。


 私の隣にいるエレナは少し複雑な顔をしているがほんの少し見えた希望に喜びを隠せないようだ。目がキラキラと輝いている。


「ラビュリンスの迷宮を作った私たちの先祖が残した記述はこれで最後。どう?君たちの仲間、それができそう?」

「どうでしょう。でもまだ生きているのはわかります」


 こんなにも自信に満ちた顔は久しぶりに見たな。ちょっと安心だ。


「なーーーーー。飯くれない?」

「うっさいわよ。オル!!」

「そりゃないよ。なんか楽しんでない?」


 部屋の奥にある牢屋からオルが手を出している。


「うるさいよ、囚人くん」

「どんなプレイだよ」

「これ.......」


 イユがオルの檻の前で座って果物を渡した。


「どーも、イユさん」


 オルがその果物にかぶりつく。トマトみたいな果物から黄色の液体が少し床に垂れる。あれ、美味しいのかな。


「ねぇ。それよりなんでミノタウロスが6体もいんだ?」

「大陸の数だけ....いて、ユーラシア、アフリカ、南アメリカ、北アメリカ、オーストラリア、南極大陸」

「なるほど.........」


 オルがその場で考え始めた。オルにはあまり似合わないな。けど結構かっこよく見えるな。


「なぁ。エレナ。港って一度ミノタウロスにあったことあるよな。それもエレナが助けた時........」

「えぇ、一回だけ」

「え!?」

  

 ビックリした〜〜〜。なんだ?イユさんがとても驚いている。それもかなり怯えているような.....。


「イユさん....大丈夫ですか?」

「ごめんなさい....前言撤回するわ。君たちの仲間は助からない」


 え?


「え?何を言っているの?イユさん?」


 やばい。エレナが......。


「それはわたしから説明させてもらいます」

「誰ですか?」

「私はアーキュス。この里のおさです」


 扉のところに1人の老婆が立っている。杖を片手に腰がものすごい角度に曲がっている。なんで立っていられてるんだろうってくらい曲がってる。


「ミノタウロスには9年が経つごとに7人の少年、7人の少女、計14人の子供をミノタウロスに捧げないといけないの。それが私たちアマゾネスにの仕事でして......今年はユーラシア大陸から選びました。そのうちの少年1人の名前は.......成瀬港。はっきりとここに書かれております」


 その場の空気が一瞬で凍りついた。


「なんで!!!!」


 エレナが影から死神が持つような大きな鎌を取り出してアーキュスに向けた。


「私たちがランダムに選びました。そして選ばれたものはミノタウロスの生贄としての生を持つ。つまり、彼は生まれながらに死ぬことが確定していました」

「それでも彼はまだ生きていましたよ?」


 私はエレナとアーキュスの間に入ってエレナの鎌を下にさげさせる。


「それは先延ばししただけです。そこのエレナさんが一度ミノタウロスを退けたただそれだけです。今回彼が迷宮に連れて行かれたのも運命と言っていいでしょう」

「エレナ!!おい!エレナが倒れたぞ!!」


 床にエレナが倒れこんだ。


「任せて.....」

「お願いします」


 イユさんがエレナを抱えて奥の部屋に消えた。


「謝罪はする気はありません。これが私たちの仕事ですから」


 アーキュスが扉を開け部屋から消えた。


 暗く澱んだ(よど)情報を残して。



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