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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
樹海の秘宝
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第四話 裏切り者

 水が弾ける音が休むことなく聞こえ、体が上下に揺れる。


 僕らは今、船で、ゲルから教えてもらったグリフォン使いの場所を目指す。船の上の雰囲気はあまり良くない。それに僕の頭には少し疑問が浮かぶ。もしもゼグがエキドナの仲間だとするとあまりにも先を取られすぎている。それに、あんなにもうまくことを運ばせることができるのだろうか。


 こんなことを言いたくはないが僕が出した結果はこうだ。まだアルツベン高校に裏切り者がいる。この6人の中の誰かかもしれない。そう思うと少し緊張してしまう。


 何か確かめる方法があればいいのだが、僕はオーディンみたいに人の心までは知れない。さて、どうやってこの6人の中に裏切り者がいないかを調べよう。


 そして、どこから情報が敵側に漏れているのかを探らないと.....でも。


「港。どこ見てるの?」


 エレナが僕の肩を叩いた。僕は叩かれた肩の方に首を向ける。


「何を考えてたの?」

「大したことじゃないよ」

「嘘」


 エレナが僕の顔を両手で握って顔を近づけて来た。脳みそが一気に沸騰して溶けて血液と混ざりそうだ。


 エレナは僕の目をジっと見つめる。綺麗な目だ。もう見惚れているが、もっと見とれてしまいそうだ。


「港ってさ、何か考えてる時っていつもどこか遠くを見ているような目をするよね」

「そう?」

「うん。何を考えているのかがわからないっていうか、少し怖い。さっきもそんな目をしてた」


 人に言われて初めて気がついたな。そうなのか?


「ちょっと心配だよ。港って目的のためだったら手段を選ばないところあるでしょ?私を助けてくれた時も下手したら死んでたんだよ?運よく”治癒”魔術が残ってたから良かったけど」


 エレナの顔が少し曇る。僕は彼女にそんな心配をかけていたのか。不甲斐ないな。僕は。


「ありがとう、エレナ。でも大丈夫だよ。そんなに深刻なことは考えてないし辛くなったらちゃんと相談するから」

「本当に?」

「もちろん。約束するよ」


 エレナの顔が笑顔に変わった。この顔が好きだ。いつまでも笑っていて欲しいくらいだ。


「んん”!!お二人さんそのくらいにしようか。ついたよ」

 

 アナが咳き込み僕らの世界に入って来た。エレナは磁石が反発したみたいに飛んで行ってしまった。


「嫌われたかもね」

「そうならお前のせいだよ」


 いつのまに船は止まって海の上に漂いながら止まっていた。海の底まで見える。とても透明度の高い海だな。


 僕らは荷物を掲げて海にゆっくりと入って行く。あれ?そういえば。


「オスカー。どうするの?海入れないじゃん」

「アナに風で運んでもらうから心配するな」

「そんじゃ、お先に」


 僕は海の中に入る。僕の胸筋の上あたりまで海に浸かった。水温はぬるいくらいか。足湯とかの湯加減だったら丁度いいな。


 じゃぶじゃぶと水をかき分けて僕は近くの島に向けて進む。途中、小さな小魚の群れが僕の足の近くを通った。


「港。ここどこかわかるか?」


 オルガ前で止まっている。そして僕に話しかけた。


「ここか?まだメキシコ」

「そっか〜。先は長いな」

「そうだな」


 ここらかブラジルまで行かなきゃいけない。それに現時点で移動手段がない。この場所が魔術師の酒場より遠いいところにあるのはわかる。ざっと50kmほどだ。それにあの船をどうにかしないと.......。あ〜もう。マジで休めない。一日中頭が働きっぱなしだ。


 砂浜に座って近くのヤシの木を見てその場所の座標を知る。おおお!グリフォン使いのところまでここからそんなの遠くないな、


 グリフォン使いが住む山はここからすぐだ。だがそのためには山越えをしなければならない。結構な旅になりそうだな。魔獣、幻獣も住んでいるだろうし。


「おお、おお、おおおおお!!!」


 オスカーが空から砂浜についた。ブオ!と風がふき砂が少し飛んだ。


「ありがとうな。アナ」

「どういたしまして!」


 あれ?なんか不機嫌そうだな。


「何、怒ってんの?」

「もうちょっと、もうちょっとて粘って木てさ。もう本当に飛ばすのめんどくさかったのよ」

「なるほど。それはお疲れ様」


 僕は服を脱ぐ。濡れてて気持ちが悪い。


「港!?」

「なんでそんなに真っ赤になってんの?」

「あんたも何やってんのよ!」


 後ろでエレナが首を上下に振っている。かわいいな。


「いやいや。何を恥ずかしがってんの?別にプールの時に男の上半身なんて見慣れてるでしょ?」

「そうかもしれないけど......」


 僕はヤシの木にロープをくくってその上に服をぶら下げる。


「早く着替えたら?二人とも。風邪ひくよ?」

「そうだぞ。港の言う通りだ」

「そうそう。本当にいいこと言うよな、港」


 突然、オスカーとオルガ肩を組んで来た。なんだなんだ?


「オスカー。あんたそんなに私たちの裸を見たいわけ?」


 ラユラさんがオスカーに詰め寄る。あ!!そう言うことか。そんなつもりで言ったんじゃないんだけどな。


「いや。ラユラのはもう見た......ぐえ!!!」


 ラユラさんがオスカーの腹に思いっきり蹴りを打ち込んだ。うわ〜めっちゃ痛そう。でも今のはオスカーが悪いな。というか2人はそういう関係なのか。からかいのネタにしよう。


「な....何言ってんのよ!!」


 あんなに焦ってるラユラさんを見たのは初めてだな。


 ラユラさんがオスカーの首根っこを掴んでヤシの木の陰に消えた。あー。あれは死んだな、オスカー。


「そ、そんなに港も見たいの?」


 おいおい。エレナさんよ。それはずるいんじゃないですか?


 エレナが精一杯の色気を振りまきながら僕に近寄って来た。もうすでに下着が透けてるから結構な刺激なんですが。アナになんか言われたな。僕をからかうつもりなんだろう。


 僕はゆっくりと深呼吸して答える。


「見たいです!!」

「え!?えっと。ふざけただけなんだけど....」


 エレナがアナの方を見る。アナもびっくりしている。勝ったな。


「え!なら俺にも見せ...」

「お前には見せねーよ!!!」

「どっちとも見せないわよ!!」

 

 アナが僕たちを風で海に吹き飛ばした。バシャン!という音とともに体を海水が包み込む。唇がしょっぱい。


「何すんだよ!!アナ!!」

「オルは黙ってなさい!!」


 僕らは海から上がる。ちょっと塩水を飲んでしまった。あ〜。喉が痛い。


 エレナがなんかもじもじしてる。かわいいな。毎回、海外のスキンシップのレベルの高さに驚いてたけどもしもそれ以上のことをするときは僕の方が強いな。まあ恥ずかしいんだけど。


「ほらあんたらちょっとあっち向いてて」

「はいはい....」

「なんで...」

「オル、いいからこっち来い」


 僕はオルの肩に手を通して後ろを向かせる。全く。本当にガキだな。まあ見たくなるのもわからなくはない。


「何してんだよ。せっかくのチャンスを」

「オル。お前アナに惚れてんな?」

「い、いやいや。そんなことは...ないと思うぞ」


 お。それならここでちょっと試して見るか。僕はその辺に流れ着いた流木を手にとってオルに渡す。


「これで砂に。アナのことが好きって書いてみて」

「は?何言ってんの?」

「いいから」


 オルが少し考え込んだがゆっくりと書き始めた。


「書いたけど?」

「ちょっと待ってな」


 僕は”全知”の眼の力を少しずつあげる。やっべ。オルの母国語全く読めない。僕は記憶を探ってその言語を理解する。


「真実だ」

「は?何が」

「この文字が。つまりアナのことが好きだってことだ」


 オルの顔が急速に真っ赤になっていく。最近のオルはいろいろな顔が見れて楽しいな。ちょっと前までは暗かったのに。


「そうなのか?」

「多分ね」

「.................ちょっと頭冷やしてくる」


 オルが立ち上がって砂浜を進む。なんだ、がっかりしているみたいだな。


 それと成功だ。案外簡単なものだな。そんなら次に、どうやってこの全員に文字を書かせるかだ。しかし、本当に、どうしよう。次々にやるべきことが出てくる。


「また何か考えてるね」


 エレナの足が僕の視界に映った。僕は顔を上げる。え!?


「なんで水着なんだよ!」

「さっきの仕返し」

 

 まだ肩の焼印があるみたいだ。薄い服を隠すように羽織っている。


 エレナが僕の隣に座った。前の砂浜での出来事を思い出す。あの時エレナに対する好意に気づいたんだっけな。


「ちょっとね」

「相談は?」

「いや、そこまでのことでもないと... 」

「怒るよ?」


 エレナは怒るとちょっと怖いんだよな。


「いや、これはみんなが揃ってからにするよ」

「なんで〜?」


 う!。そう上目遣いで来られると困るな。なんだそのギャップは、いや、アメむちか?どっちでもいいか。


「わかった。話すよ。僕が思うに。もしもゼグがエキドナの仲間だと仮定するとね。あまりにもこちら側の情報が筒抜けなんだよ。僕はまだ裏切り者がここにいると考えてる」


 エレナの表情が変わった。驚いている。


「それを確認する方法もあるんだよ。僕的にはまず初めにこの6人の中に含まれていないということを確認したい」

「どうするの?」

「今日中にでも...」

「そうじゃなくてどうやってやるの?私が最初にする」

「なんで?」

「最近、港。なんだかよそよそしかったから。そのせいかと思って」

「そんなことはないけど」

「でもなんか嫌なの!早く!」

「わかったよ」


 僕は小枝をエレナに渡す。


「それで、そうだな。私は裏切り者ではないって書いてもらっていい?」

「いいよ」


 エレナがスラスラと砂に文字を書く。やべ、英語も曖昧あいまいだな。よしよし。読めたぞ。


 能力の力をゆっくりと挙げていく。一気に上げると砂がどうやってできたか、いつできたかなんていうおかしな情報が入ってくる。


 は?なんだこの”真実ではある”っていう情報。なんだよ”である”って。まるでエレナが裏切り者みたいじゃないか!。


 僕はエレナの方を見る。あ!やっべ能力を使ったまま......え?


 僕はエレナの両肩を抑えて砂に寝転ばせる。床ドン?ここは砂だけどどうなるんだ?そんなことはいいか。そして羽織っていた服を強引に剥ぐ。


「港!何して....」


 エレナについている焼印からなぜか情報が入ってくる。僕の能力は絶対に生物からは情報を知ることはできない。前に一回、爪とか適当な部位だった場合どうなるかを試してみたが生きている人間の一部と考えられるものからはしれなかった。


 つまり、エレナの焼印も皮膚に直接あるものだがら体の一部としてカウントされるはずなのに、なぜか情報が読み取れる。


 僕はもっと力を上げる。


「港!!目から血が!」


 え?どうりで視界が真っ赤なわけか。まあいい。あと少しで見える!!


「見つけた!!」

「港!落ち着いて!!!」

「うお!」


 今度は僕が砂に押された。僕はそれと同時に能力を解除する。ほんとだ。目から血が垂れてる。


「何してんの!?」

「エレナ。ちょっとまってて」


 僕はバックのところまで戻って水、消毒液、ナイフガーゼを取ってエレナのところまで戻る。血涙が涙に変わった。よかった〜。血涙が出るなんて初めてだ。ずっとの能力を使い続けるのやめようかな。


「エレナ。ちょっと聞いて欲しいんだけど。君の焼印の下にGPSが見える。それも結構特殊なやつだ」

「そうなの?」

「うん。すごいよそれ。今まで直接見たのが一回しかなかったから気がつかなかったけど焼印がソーラーパネルになってる」

「へ〜」


 あ、なんか引かれてるな。当然か。


「それでその焼印取ることできそうだよ」

「本当に!?」

「本当に、でも手持ちに医療器具がそんなにないから結構辛いと思う」

「いい。大丈夫!」


 でも外だとな。細菌とか怖いからな。どっかいい場所ないもんかなぁ。アナに頼んで無菌の風で包んでもらおうかな。


 夕日が沈み始めた。ヤシの木の影がゆっくりと伸びる。お。


「エレナ。影の中に行ける?」

「なんで?」

「影の中の方が菌とか少ないと思って」

「わ、わかった」


 エレナがヤシの木の影に手を置いた。影が水のように揺れだした。


「いいよ」

「ありがとう」


 僕は影の中に入る。それに続いてエレナも入る。影の中って少し冷たいんだな。


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