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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
黄金のリンゴ
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第十六話 休息

 目が覚めた。僕の視界には天井と蛍光灯らしき長細い電球がある。その電球が僕の視界を白く照らす。僕は目をそらし、体を起こして窓の外を見る。外は真っ暗で、空の上には真っ白に光る満月ある。とても綺麗だ。ここはどこだろう。見た所、ここは病院の一室だと思う。


 僕は布団を退けてベットから降りる。身体中に包帯が巻かれている。ああ、そうか僕はエルと戦って、腹に穴を開けられて.........そうだ!腹に腕突っ込まれて!


 僕は服をめくって自分の腹を見る。包帯でぐるぐる巻きにされている。ふさがっているのだろうか...。僕は恐る恐る自分の腹に手を置く。よかった。自分の肉体に触れている感触がある。ちゃんとふさがっている。僕はベットにドス!と勢いよく座り込む。


「やっと起きたか。しかし、お前はよく怪我をする」


 突然、後ろから声をかけられた。勢いよく振り返って後ろを見ると、そこにはスーツを右手にかけた真面目そうな1人の男性がいた。誰だろう。僕は記憶を遡る。一度も会ったことないな。それよりどこから入って来たんだ?


「最初の疑問に答えると私はオーディンだ」


 は?いやいやいや。オーディンの見た目はもっと年老いた爺さんだったぞ?。こいつなにを言っているんだ?


「あれは私の本当の姿だ。この姿は人間界に来る場合の姿だ」


 そうなのか?でも......。


「私の能力を忘れたか?」


 そうだ。オーディンは他人の思考を読むことができる。そして僕が言葉を発しずに会話が成立している。これはオーディンにでしかできないな。でも能力は封じないと。


「それは世界に大きな影響を与えるものだけだ。私の能力には強力な影響力をもたらすものはない」


 なるほど。


「いい加減喋れ。前も同じことをしただろう」

「そうでしたね」


 オーディンがベットの隣に置かれていたパイプ椅子にスーツの上着をかけて座る。キキ!とパイプ椅子が床に擦れた。


「さて、私がここに来た理由はな、黄金のリンゴに関してだ」

「なんとなく、予想していました」


 黄金のリンゴ。とある山の奥にひっそりとある大樹から取れるリンゴだ。対価は伴うが、食べた者の願いを1つ叶えると言われている。不死のリンゴとも呼ばれているがその由来は食べた人間が不死を願ったからだ。


 僕はそのリンゴを使ってジェバムと取引をした。内容はこのリンゴを交換する代わりに、援軍と要求の撤回。つまり病気を治す代わりに援軍とエレナをよこせってことだ。だがそんなリンゴを取るのがそう簡単なわけではない。神々によって黄金のリンゴを守るためにラドーンという不死の龍が作られ、何度も略奪者たちから黄金のリンゴを守って来た。


 あの龍は本当に怖かった。ヒュドラなんて比にならんくらい怖かった。火を吐くし、体はとてつもなくでかいし、体からずっと炎が漏れ出しているからあそこの気温はめちゃくちゃ暑かった。


 おそらく、僕が知る中でこの世で一番強い龍だと思う。なんせ倒し方がわからない。蜂の巣を口に突っ込んで倒した、ヒュドラの毒で殺した、などと色々説があるがそれが弱点をわかるたび神々によって作り直されている。だから今回オーディンがここに来た理由も......


「どうやってあのリンゴを取った?」

「やっぱそうですよね」


 ラドーンをの弱点をなくすためだ。


 黄金のリンゴの力はあまりにも強すぎる。なんせこの世の理を変える力がある。願えば神々を殺すことができる。そんなリンゴなくせばいいと思うかもしれないが神々はそうしなかった。黄金のリンゴの力をなくすのは惜しいと考えたからだ。そのためリンゴの木を人間界で監視し、私利私欲で使えないようラドーンを作り管理している。


「どうした?」

「ああ、なんでもありません。それと僕は普通に黄金のリンゴを取っただけですよ」

「は?」


 オーディンの顔に疑問の文字が浮かんだ。その反応は予想していたがちょっと面白かった。


「ですから普通にです。歩いてリンゴの樹の下まで行って取って帰って来ました」


 さらに疑問が増えたような顔をしている。それもそうだ。そんなことがありえるはずがないと考えるのが普通だ。


「簡単な話です。ラドーンは略奪者しか攻撃しないんですよ。僕はただたんに収穫者としてあそこに行ったまでです」

「だがな、そんなことは誰でも試したはずだ」

「僕が思うに今まで取られなかった理由としては、ラドーンは僕のことを攻撃したり威嚇して来ました。ですがそれはただたんに僕が略奪者か、それとも収穫者なのかを見極めていただけです。それでもしも攻撃したり逃げれば略奪者と判断して殺した。それだけです」

「なるほど?だがそんなことを教えていないんだが」

「何万年ものあの木を守り続けていたんですよ?少しぐらいは学習しますよ」


 オーディンが顔を下に向けて顎を抑えながら考え込む。とても静かで穏やかな時間が流れる。


「わかった。少し納得はできないがもう一度調教し直そう」


 オーディンが席を立ってスーツを持ってドアに向かって歩き出した。


「それだけですか?ここに来た理由って」

「おう。それだけだ」


 なんだ。もっと大切なことを話すのかと思っていた。


「そんなものはない。我々も何かわかればすぐにでも連絡はする。それではな」


 オーディンがスーツを着た。その瞬間彼の姿が消えた。そしてひとりでに扉が開き、ゆっくりと閉まった。


 僕はベットに横たわる。ここ一ヶ月、いろいろなことがあった。


 吸血鬼の王様に会い、冥界に行ってハデスに会い、ヒュドラを捕獲して、黄金のリンゴを探して取りに行き、吸血鬼の次期当主と戦い、腹に穴開けられ...........。


 ろくなことないな。この一ヶ月。いや。1つはいいことがあったか。


 僕は晴れてエレナの彼氏になることができた。ここまで長かった。本当に。そしてとても大変だった。だけどエレナと付き合えると考えると安いものなのかもしれない。


 もう一度寝る準備をしていてふと思った。久しぶりにベットで寝れるな。ここ最近、野宿かハンモックだったからな。


 僕はベットに横たわり電気を消す。今夜はいい夢が見られそうだ。





=====


第三章、黄金のリンゴ。ここで終わりです。どうでしたか?楽しんで読んでもらえていればとても嬉しいです。


次は第四章、”樹海の秘宝”です。宜しくお願いします!!




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