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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
アルツベン高校
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第三話 悪夢再び

 オレンジ色に照らされた廊下をレイと二人で歩きながら僕らの教室に向かった。

誰もいない静かな教室ではレイと色々と話をした。僕が転校してきた日のことやこれまでの学校生活、この先の高校生活などだ。


「港は高校どこ行くの?」

「みんな同じで3番高校に行くよ。地区的にレイも同じでしょ?」

「うん、そうだよ。高校生になったら何かする予定あるの?」

「いや、ないね。でも高校生になったら訓練っていう科目が加えられるじゃん」

「そうだよね..ちょっと怖いよね」


 高校生になると僕らは訓練という授業が科目に加えられる。中学のうちに聞いた話だと、”ただの自己防衛の授業だ”と聞いているが。実際は軍事訓練だの魔法が使えるようになるなどの不思議な噂が流れていた。


「あの..さ!港はその...」

「ん?」

「好きな...」


ドン!!!!


 何か地響きのよなものが大きな音とともに校舎に響いた。体育館の方からだ。


「何?今の音」

「わからない。でも体育館の方からだちょっと行ってみよう。生徒会の子たちが心配だ」

「そうだね、ちょっと行ってみよう」


 僕とレイは小走りで体育館に向かった。


〜〜


 廊下を走っていると声をかけられた。


「二人とも廊下は走らな〜い」


ふと後ろを見ると手には救急箱を持っているセスナ先生とあの話の長い校長もいる


「先生!さっきの音聞きました?」

「ええ聞いたわよ。なんだんだろうね」

「今、生徒会の子たちが片付けを体育館でしてる最中で。何かあったかもしれないって思って」

「ぞうだ..ウゥン!」

「校長先生、声枯れてんだからあんまり話さない」


うちの校長でもあの長話はきつかったらしい。声のトーンがとてつもなく低い。


体育館に着くとその場にいる全員が不思議な違和感を覚えた。


「ねぇ港、静かすぎない?」


 そう静かすぎる..いや人の気配がしない、空気を吸うのがとても辛く感じる。ものの10分ほど前まだ生徒会の子たちは片付けをしていた。そんなにすぐ終わるほどのものだとは思わない。


「怖い...」

レイが袖を掴んできた。

「大丈夫」

僕はなるべく静かでなおかつ優しい声をかけてを左手でレイの手を握った。

レイの手は柔らかかった。

「行こう」


 僕らは恐る恐る前に壁側を進み出入り口に着いた次の瞬間ドア外れ倒れてきた。奥を見るとそこには壁に持たれて座っている少年がいた。彼の顔はとても蒼白で白いシャツの右肩から足のあたりまで血に染まっていた。


「やめ..」


ガウン!!

バキバキバキ!!


 僕らの足は止まった。

そこに二足歩行でその少年を後ろにあったパイプ椅子ごと食らう毛深い三メートルくらいの巨人がいた。いや巨人ではないな頭は牛だ。

どこかで見たことがあったきがするだがこんな状況では思い出すこともできなかった。僕らはその場に固まった。

まるで身体中の筋肉がつって動けないように。痛みはないが体がいうことを聞かない。どんなに頭で考えても、どんなに顔をそむけようとしても全く動かない。


ギャ!!


 今度は僕らの後ろからなんとも言えない声が聞こえたと同時に僕らの背中に生暖かい液体が飛びかかってきた。それは僕が一度経験したことのあるものだ。血だ。僕とレイは移動している新幹線の座席を覗こうとする少年のように素早く首を後ろに向けた。そこには首と胴体が離れた校長と胴体から給水機のように出る血をなんのためらいもなく血を飲むセスナ先生がいた。


「チッ、デブだから血が脂っこな、コレステロール値高そう。いや〜ん、太っちゃう。」


 僕らはあっけにとられていた。不思議と気持ち悪い気持ちにはならなかったが、僕は恐怖に心を掌握されていた。


「やっぱり、若い女の血が一番!!」

というセリフとともにセスナ先生の背中から羽が生えた。僕はそれを見たことがある。吸血鬼の羽だ。黒光りしうっすらと血管が浮き出ている。

気がつくと僕はレイ抱きしめて吸血鬼の目を睨みつけていた。こいつは食わせない。脳が指示を伝達するよりも早く体が勝手に動いていた。さっきは言うこと聞かなかったくせに全く、生意気にな体だ。

しかしセスナ先生の本当の狙いは違った。僕らしい。右手が空を切る風のような音を立てて首の下に迫ってきた。

僕は目をつぶった。それは無意識にそして次に目を開けた時は僕は天井を見ていた。あぁ僕は首を切られたんだ。だけど

不思議と痛くはない。そう思っていると背中に衝撃を感じた。手を恐る恐る首に近づけるとまだ繋がっていた。しかし左手にあったはずのレイの手の感覚がなくなっていた。急いで顔を上げると僕はレイの胸に右腕を突き刺す吸血鬼の姿をみた。その光景は恐ろしく残酷だった。


「チッ、邪魔仕上がってこの女、絶望している時の人間の血は嫌いなんだよ」


手からレイがずり落ちた。そしてスライムが落ちた時のような音を立てた。


どちゃ...


沈黙に包まれた体育館でその音が響く。まるでミュージックホールのように。

僕は全く動けなかった。しかし吸血鬼は襲ってはこなかった。それどころか羽をしまった。


「港君、運がいいのか悪いのかわからないけど機会があったら会いましょ。今度は確実に殺して上げるから。」


セスナ先生は体育館の入り口から普通に帰っていった。息が荒い。血液が僕の体をものすごいスピードで巡っている。心臓が破裂しそうだ。


ゲホ!!


 レイが血を吐いた。よく見るとまだ胸が動いている。僕は立ち上がってレイの方に行こうとする。一刻も早くレイの所に行って止血しないと。気持ちだけが空回りする。立ち上がろうとしても立ち上がれない。腰が抜けてしまったのだろう、足に力が入らない。だが諦めることはできなかった。僕は床をはいつくばりレイの方に行こうと体を動かした瞬間。僕の体は中を浮いた。体をものすごい力で締め付けられている。


「かは!!」


 息ができない。苦しい。何が起きた?

僕は確認するために目を開ける。そこには目の赤い牛の顔があった。


「グオオオオオオオ!!!」


 口の中からなんとも言えない匂いがする。少なくとも激臭だ。牙にうちの制服の切れ端が付いている。

あぁ思い出したこいつは多分ミノタウロスだ。神話とかに出てくるあの。

不思議なものだ。人間、死を覚悟すると冷静になれるらしい。今となってやっと思いだした。

ミノタウロスが僕の左肩に噛み付いた。


ブシュっ!


 血が吹き出る。それと同時に僕は体に何かが入ってくる感覚に見舞われた。まるでそれはとてつもなく大きな注射をされているようだ。


「アァァーーー!!!!」


とてつもなく痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!死にたくない!!!


 そこにガラスの割れる音が聞こえた。その瞬間、僕の視界は光に包まれた。その後はあまり覚えていない、強烈な痛みが背中を襲い意識が薄れる中見たのは死神の持つような大きな鎌を持った金髪の少女がミノタウロスと戦う姿だった。







気がつくと僕は知らない天井を見ていた。









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