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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
黄金のリンゴ
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第四話 アケロンの川

 3時間ほどワイバーンい揺られていると遠くの方にポツポツと火が見えてきた。そして、戦っている声が聞こえてきた。大きな黒い塊と、無数の蛇のような首が見えてきて、緑色の光もポツポツと見えてきた。上下に動いている。


 おそらくヒュドラの目だろう。僕はバックからFN P90を取り出してマガジンを込める。もう残りがあまりないな。15個ほどだろうか。あまり無駄にできない。


 「ブフン」とワイバーンが馬のように鼻を鳴らした。戦場の上についたみたいだ。真下にヒュドラがいる。僕にはまだ気がついてないみたいだ。すごい迫力だ。サイクロプスが棍棒でヒュドラの足をガンガンと何回も叩いて、その後ろからダークエルフやゴブリンたちが弓矢や剣、魔法で援護している。しかしそれをもろともせずヒュドラの首が鞭のように彼らをはらいのける。何人もの兵士たちがパチンコ玉のように飛んでいく。


「戻れ!戻れ!隊列を立て......」


 下でリーダーみたいな男のダークエルフが左手の剣を後ろの方に向けて叫んでいる。それに続いての方にゴブリン、サイクロプスたちが走っている。しかしその集団に向かってヒュドラが口から紫色の液体を飛ばした。何人かがその液体に飲まれて煙をあげながら溶けている。彼らはもう助からない、絶対に。あちらこちらに死体が転がっている。肌が紫色で毒が当たったところが溶けて無くなっている。


 ひどい景色だ。そして、あまりにも無謀な戦いだ。どんどんとゴブリン、ダークエルフたちが倒れれいく。ヒュドラが逃げている彼らを気にもせずに後ろから猛毒を飛ばしていく。ところどころからのろしのように煙が上がっている。


「キャーーー」


 真下に手に杖を持った女のダークエルフが尻餅をついている。そして彼女に向かってヒュドラのうちの一頭が迫っていく。いま行けば、まだ間に合うかもしれない。


「おろせ!」


 僕がそう叫ぶとワイバーンが口を開いて僕の襟を離す。僕は右手で日本刀を抜く。そして脇腹に日本刀をそえて落ちていく。ヒューーー!!と風の音が僕の耳の中で暴れる。少しくすぐったい。僕の目の前にヒュドラの頭の上が見えた。そしてヒュドラと目が合う。緑色で、ラグビーボールみたいな眼球が僕の姿を映し出す。


 僕はその瞬間、日本刀でヒュドラに向かって切りかかる。体をグイっとひねって空中で回転しながら首を完全に切り落とさず、首の動脈のあたりを切る。


「グオォォ」とヒュドラが唸った。口から猛毒が垂れて、猛毒のついた地面の岩から煙が上がっている。


「逃げろ!早く!」


 地面に座り込んでいたダークエルフに向かって叫ぶ。彼女が慌てて立ち上がって僕に背を向けて走っていく。僕は地面で受け身をとる。地面がゴツゴツしていたせいか受け身がうまく取れなかったみたいだ。肩が少し痛い。


 左手のFN P90で目に向かって数発撃つ。発砲音と薬莢が落ちる音が聞こえる。目の前のヒュドラの目に的中して透明な液と血が目の中から垂れている。血涙みたいだ。


 ヒュドラは不死身ではあるが完全に死なない限り再生はしない。目の前のヒュドラは大量出血で死ぬだろうが、それまでには少し時間がある。他のヒュドラがこっちに来られると困るが大丈夫そうだ。僕はそのうちにさっきのダークエルフの後を追う。走っている所の周りには死体があちらこちらにころがっていた。ひどいものだ。虐殺と言ってもいいかもしれない。


「グオオオオオオオォォォォォ!!!!」と後ろでヒュドラが叫んでいる。そして背を向けて川の方に歩いていく。のそのそとゆっくりと。少しも疲れた様子は伺えない。


 僕はその場で汗を拭う。ものすごく緊張した。それと同時にどうやってあのヒュドラを倒すべきと考える。その方法が全く思いつかない。図書館で読んだ文献によると一度だけヘラクレスという英雄がヒュドラを倒しているが、その方法がなんともイかれているし、本当にそんなことができたのかと疑ってしまう。


ーヘラクレスは獅子の毛皮で毒を防ぎ、切ってしまうとどんどんと増殖していくヒュドラの顔を傷口を炙って増えないようにした後、地中深くに埋めて封印し、ヒュドラを退治したー


 あんな何百もの顔を持つヒュドラ相手に一回一回首を切ってその傷口を焼いて塞ぐなんてできるはずがない。それより封印の仕方がわからない。第一、岩をも溶かすのにライオンの毛皮で防げるわけがない。無理ゲーだ。他の方法を考えよう。


「助けて.....く」


 僕の右奥にダークエルフが僕の方に右手を伸ばして助けを呼んでいる。まだ生きているみたいだ。僕は彼の目の前で片膝をついて彼の様子を見る。ひどいな。まだ毒でやられていないだけマシだが、見た所左側の肋骨が全て折れている。そして肺に刺さっているんだろう、口から血が垂れている。どうすればいい。


 僕は医療に関する記憶を少し思い出して行動に移す。近くにあった枝を彼の左の肋骨のあたりを固定する。体をゆっくりと傾けて左肺が下に来るようにする。右肺に血が入ってしまうと呼吸ができなくなって死ぬのが早まってしまう。


 僕は左手で彼を支えながら右手を地面につけて骸骨を2体か呼び出す。最近頑張って12体くらいは呼び出せるようになった。僕は彼らに命令する。


「この人を近くのベースキャンプに運べ。左側を下にしながらなるべくゆっくりと運べ。いいな」


 カカ!と骸骨が歯を合わせて音を立てた。彼らなりの返事の仕方なんだろう。


 骸骨たちがゆっくりとダークエルフを持ち上げて歩いていく。ダークエルフの顔色があまり良くない。なんとか耐えてほしいが少し難しそうだな。


 僕はバックから一枚の魔法紙を取り出して、彼の中心の近くで貼りながら移動させる。そして光った瞬間僕は手を止めて剥がれないように貼り付ける。彼に貼ったのは”現状維持”魔術だ。物体、生物の状態を時間は止めずにそのままにするという魔術だ。発動条件は貼りつける物の中心に貼ることだ。


 僕はその場から立ち上がって他に生き残っている人がいないか探す。亀よりもゆっくり歩いて、狩をするライオンのように慎重に探す。どこかららかうめき声がした。そちらの方を見るとゴブリンが仰向けに少し震えていた。僕はゴブリンの方へ急いで走る。



〜〜〜


 

「神の子がこんなところで何をしている!?我々の仲間をどうするつもりだ!?」


 サイクロプスの応急処置をしている最中に突然女のダークエルフに弓矢で脅された。背が高く綺麗なスタイルをしている。胸のあたりに勲章だろうか。トランプのダイヤみたいな形のアメジストが服に埋め込まれている。

 

 狙っているのは僕の背中だな。これは少しまずいかもしれないな。彼らにとって神の子はあまりいい存在ではない。幾度となく僕ら神の子が魔人として彼らを殺してきたせいだ。


「ハデス様から伝達がありませんでしたか?僕はヒュドラ退治を任された者です」


 なるべくゆっくりと、相手を刺激しないように僕は話す。まるでドラマとかの立てこもった犯人を説得するようだ。


「そんな話は聞いていない。そもそも我々が神の子を信頼わけがないだろう。その腰の剣を地面に置いてうつ伏せになれ。必要な行動以外をした場合射抜くからな」

「それ....」


 僕の頬の横を矢が通り過ぎた。そして頰から生暖かいものが垂れてくる。


「必要ない行動をするなと言っただろうが。今度は頭を射抜く」


 ダークエルフがもう一度弓を引く。ギリギリギリと弓が少ししなる音がした。女のくせにすごい力だな。というかさっきのはひどいんじゃないか!?こんな状況だったら普通は話しかけても大丈夫だろうが!アニメとか見てみろよ!


「どうした?死にたいのか?」


 首を横に振りたかったが降らずに、僕はゆっくりと両手を上げながら両膝を地面につける。そして腰の日本刀を出して片手で地面につける。僕は切腹をするのか?そして両手を地面につけてうつ伏せになる。冥界の地面は少し硫黄臭い。


「よし、おとなしくしていろ」


 ダークエルフが僕にジリジリと近寄って来る。僕はその間に骸骨を三体ほど彼女の後ろに呼び出す。赤い目をした真っ黒の骸骨が地面から現れて、突然、彼女に向かって走り出した。しまった!命令してなかったから勝手に動き出した!普段なら勝手に踊ったり、騒いだり、お互いを攻撃し合うのになぜ.......あ。ダークエルフに欲情したな。確かにこの綺麗なスタイルに欲情する気持ちもわからなくはないが。こいつら......単純だな。


 僕はダークエルフの足首を左手でがっちりとつかんで手前に引いて彼女を転ばせる。なぜか骸骨たちが僕の方を見た。「ナイスプレイ!」と言わんばかりの目だな。やらしいやつらだな。


「貴様!なにを...」


 ダークエルフが骸骨たちに気がついて驚いた。両手で上半身を起こして少し後ろに下がる。僕はそんなことを気にせずに右手を骸骨たちに向けて一言発する。


「止まれ」


 その言葉とともに骸骨たちが止まる。顔はかなり不満そうだ。「裏切り者!!」と言っていそうだ。僕はくるりと後ろを向いてダークエルフに話しかけ........。


 ガン!という音と同じタイミングで僕の頭に衝撃が走った。めちゃくちゃ痛い!なんだ?


 ダークエルフが僕を殴ったらしい。両手に大きな石を持っている。頭から垂れた血が僕の右目に入って来る。僕は倒れながら「戻れ」という。骸骨たちが勝手に暴れ出しても困るしな。


「貴様!あいつらを呼び出したのか!?」


 ダークエルフが息を荒げながら僕を上から見下ろす。犬みたいに呼吸しているな。


「少し落ち着いてください!確かに呼び出しましたけど.......」

「問答無用!!」


 ダークエルフが両手に持っていた石を投げつけてきた。あーーもうやだ。最近気絶してばっかだし。ちょっとぐらい歯向かっても大丈夫か。


 僕は地面に落ちていた日本刀の鞘を抜かずに突きでその石を砕く。そしてそのままダークエルフのみぞおちに突っ込む。彼女が膝から地面に落ちて倒れた。少し罪悪感があるな。女性を攻撃したからだろう。


 さて。これからどうしよう。運ぼうにも応急処置した使徒が多すぎるしサイクロプスを運ぶのは無理だろう。骸骨にも。どこかのベースキャンプに行って助けを呼びに行くか。

 

 僕は右手を地面につけて呼べるだけ骸骨を呼び出して命令する。さっき呼び出した奴がいたらしく。僕のことを睨んでいた。


 「ここに運べるだけの俺が応急処置した怪我人を運んでこい。そんでここで安静にさせておけ。何か敵が現れたら排除。行ってこい!」

 

 骸骨が四方八方に走り出した。僕はバックに僕の装備を一式片付けてから、地面に倒れている女のダークエルフの足と手をテープで固定して担ぐ。ここからは理性との戦いだな。僕の左の胸筋に柔らかいものが乗っかっている。歩くたびそれはプリンのように跳ねる。やばい。周りには何もないし。骸骨たちがこの人に襲いかかった理由も納得だ。


 僕はゆっくりと近くの丘に登ってベースキャンプらしき場所を探す。左下に松明がいくつも見える。ここから近そうだな。僕はそっちに向かってゆっくりと歩いて行く。僕の理性と戦いながら。それと息子とも。



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