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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
黄金のリンゴ
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第三話 冥界の王

「いいよ。そんでどれくらいの戦力が必要?」


 僕は耳を疑った。目の前にいる神様の口調、それとなんかこのふわふわした感じがとても不思議だ。天然な人と話しているみたいだ。


 僕は今、冥界にいる。冥界のイメージはもう少しおぞましくてあちらこちらに魔獣がいるのかと思っていたがそうでもなかった。確かに太陽がなくて暗いがそこまでいうをどおぞましくなかった。そして目の前には冥界の神、ハデスがいる。大きな椅子に腰掛けていて服装はなぜか着物を着ていて柄は胸のところにドクロがあり色は真っ黒で帯が赤色だ。もう少し怖い神かと思った。

  

 僕がここに着た理由は結構単純で彼に援軍を頼みたかったからだ、なぜかというと僕はこれからエル・ルドルフの暗殺をすようと考えているが力が足りない。そこで戦える人を貸してくれるところを考えたところハデスに行き着いたというわけだ。学校は力になってくれらないし、ジェヴァム・ルドルフは他の吸血鬼の反乱を恐れて援軍はくれない、そして一番早く、そして確率が一番高いところにきたわけだ。


「あの.....どのくらい貸していただけますか?」

「港君だっけ?いいのよ自分の必要なぶんだけ言いなさい」


 ハデスの隣に立っている女性が話に入ってきた。彼女はペルセポネ。ハデスの奥さんだ。とても美しい女性で胸のでかさは表現できないな。服装もなんともいやらしい。


「いいんですか?」

「ペルセポネ......俺にもプライドってものがあってな」

「あなた、初めてできた自分の娘が吸血鬼のお嫁に行ってもいいんですか?」

「それは困る!」

「それなら彼に助けてもらうしかないでしょう、私たちは人間界にはいけないんだから」


 ハデスが黙り込む。ペルセポネには歯向かえないみたいだ。少し可愛い人だな。


「僕が欲しい人材は少数ですが戦える人です。僕のこれからの目的は吸血鬼の次の王、エル・ルドルフを暗殺することです。そのために僕が必要と考えているのは暗殺と潜入に特化した方々です」


 いくら相手の数があまり多くないとはいえ吸血鬼1人の戦力は人間1000人に匹敵すると言われている。その中に単純に突っ込んでいけば確実に死んでしまう。それに一枚の転送魔術で転送できる数は最大3人だ。多すぎても困る。


「そうか、だったら人狼の娘を連れて行くといいだろう。というかあげるよ。これからの戦いで彼女は役に立つはずだそれとな......他に何が必要かな」

「私に聞かないでくださいよ。軍はあなたが指揮してるんですから」

「それもそうだな。それじゃあ、人狼とダークエルフの娘1を人ずつ。ワイバーンを3匹、巨人、ゴブリンを100体とサイクロプスを5体。ゴブリン達は現地に私が直接送ろう。注意を惹きつける囮部隊としてだ。実質は人狼の娘とダークエルフの3人で暗殺をすることになるだろう。人狼の嗅覚をうまく使えよ」

「ありがとうございます」


 なぜか流れで人狼の子をもらってしまった。返すべきじゃないのだろうか。少し迷うな。


「よし、取引と行こう。オーディンの子よ。お前は何と引き換えに今の軍隊を得るつもりだ?」


 やはりか、絶対にこの話になると考えていた。神は絶対に情では動かない生き物だ。自分に利益か不利益がないことには絶対に関わりを持たない。神様とはそういう生き物だ。だがどうするべきか。僕には一応はあるがそれもどうすればいいのか.....。


「お金じゃダメですか?」

「ダメに決まっているだろう。冥界には金という概念はない」


 やっぱりダメか。ハデスの様子が先をほどとは全然違う。まっすぐと僕の方を見ている。一度も瞬きしていない気がする。ハデスの体がだんだんと大きく見えてきた。怖い。身体中の細胞が悲鳴をあげている。


「あなた、港君が怯えています。もう少し威圧を緩めなさい!」


 ペルセポネがハデスの頭を叩いた。びっくりして僕の体が少し震えた。僕はゆっくりと息をする。胸のあたりに冷たいものが入ってきて、その冷たいものが体に巡って行く。


 ハデスが少し考え込んでから口を開けた。


「よし、港。お前に1つやってもらおう。あるヒュドラを倒してこい。もしも倒せたら、私の軍隊を貸そう。そのヒュドラが今、アケロンの川の近くに住み着いていてな。冥界に送られてくる魂を食らっているらしく困っているんだ。私の軍隊は魂から兵士を作り出しているからな」


 アケロンの川。人間界から冥府に魂を運ぶ川だ。その川に使ってしまうと魂を抜き取られる、不老不死になれるなどの伝説がある。


「それは1人でですか?」


 ヒュドラを1人で倒すのは絶対に無理だ。5〜100の龍の頭があってそのうち一つは不死の頭だ。その頭をなんとかしない限りどんどんと頭が増えていってしまう。それに猛毒を口からかけてくる。当たってしまうと確実に死ぬ。そんな相手に1人はまず無理だ。どれくらいかっていうとlevel 1で level 100の何かに挑むようなものだ。


「その辺は心配するな。もうすでに軍隊を送っている。それに合流しろ。そんでお前が現場の指揮をとれ、分隊長に連絡しておいた。4日後だ。それまでに倒してこい。そうすれば軍隊を貸してやる」


 僕は少し安堵の息を吐く。僕の血も冷たくなっていく。しかし、それと同時に色々とやばそうなことが聞こえてきた。もう一度聞きなおそうと思ったがやめておこう。なんか雰囲気がやばそうだ


「そんじゃ行ってこい!」


 ハデスが指パッチンした。すると後ろから風が僕の背中を押した。後ろを見てみると一匹のワイバーンがそこにいた。緑色で3メートルくらいある。そしてそいつが僕の服の襟元に噛み付いて僕の体が空中に浮く、不思議な感覚だが怖い。


「ハデス様?.......その....僕は...」

「いってら〜」


 その言葉共にワイバーンが空高く飛んだ。冥界に空があるのかが気になったが、それよりも下に水のようにマグマがあるという異様な風景だ。汗腺から汗が吹き出てくる。暑さではなく緊張でだ。このまま落ちたらどうしようという心配でだ。車に轢かれそうになった状況が永遠と続いている感じだ。


 僕はそのままワイバーンに揺られてアケロンの川を目指す。途中、サイクロプスの群れが殺し合っているのをみた。なんか冥界を観光している気分だ。



〜〜〜



 「おはようございます、エレナ様。本日のシュケジュールは.....」


 目の前のドアから1人の執事のような吸血鬼が手に持っている紙の内容を読んでいる。内容は全く頭に入ってこない。私は今、大きなお姫様が寝るようなベットの上にいる。ベットの上にある布団の触り心地はとてもいいが、なんか乗り気ではない。


「それでは準備を始めましょう。使用人の2人。エレナ様の身支度を整えなさい。30分後に出発する」

「わかりました」


 ベットの隣に立っていた2人の使用人に人が私の近くにやってきた。私はベットの右側から抜け出す。一番近くの女性が私の服を脱がしていき、もう1人の人が仕切りを持ってきた。彼女たちは人間だ。首には丸い黒い首輪のようなものが付いている。ここにいる人間を管理するためと言っていた。


「失礼します」


 目の前にの人が私に服を着せてくる。すこし小洒落たドレスみたいだ。本当なら自分でしたいんだがもしもそれを断ってしまうと彼女たちは血を抜き取られて死んでしまう。ここの人間のほとんどはクローンだ。そして小さい頃から吸血鬼たちが扱いやすいように訓練されている。


「ありがと......」

「エレナ!起きているか!」


 扉が勢いよく開いた音がした。あの声からエル・ルドルフの声がした。私の旦那になる吸血鬼らしいい。大っ嫌いだが。私は仕切りの横から出て彼に向かって挨拶をする。ドレスの端を持ちながら体を前にかがめる。


「綺麗だな。結婚式のドレスどれにしようか?」


 エル・ルドルフは私がまだアルツベン高校に保護される前に何度か遊んだことがあった。その頃にオスカーに色々と吸血鬼について教えてもらっていたから、私は大っ嫌いだったが。ナルシストで。


 エル・ルドルフの顔が目の前に現れた。相変わらず運動神経だけは吸血鬼の中で一位、二位を争うことだけのことはある。そして目をつぶってキスをしてこようとしてきた。私は影の中に一旦避難して執事の影から元の大署に戻る。あいつはいつもそういうことをしてくる。


「なぜ逃げるんだ?」


 何度も同じことを言わせるな。


「結婚式当日までの我慢です。私がそうしたいんです。お願いします」


 彼はお願いにとても弱い。いつもそうやって逃げているが一向に理解しない。というか学習しない。それのおかげで助かってはいるが。とにかく単細胞なんだ彼は。


「それでは参りましょう。外に馬車が待たせています」


 執事の後ろをついていく。ドレスは歩きにくい。港はどうしているだろうか。睡眠薬を無理やり飲ませたが今頃起きていると思う。牢屋の中だと思うが。オスカーとラユラさんには嫌な役を頼んでしまった。港にも.....。


 少し唇を撫でる。あの時、港にキスした時の感触が未だに忘れられない。忘れたいとは思わないが。


「どうぞ」


 いつも間にか馬車の前についていたみたいだ。先頭に二頭のユニコーンがついている。馬車に乗り込んで外の景色を眺めてみる。学校の裏にある森を思い出す。少し目が潤った。



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