第十三話 君を連れ戻す。必ず。
目が覚めた。この牢屋には窓がなくて日の光がさあないから今が何時なのかがわからないが、目が覚めたということは今は朝だろう。
牢屋に入れられてから4日がたった。未だに脱出の糸口がつかめていない。方法ならあるのだが、脱出した後が問題だ。
武器もなし、三つ目の能力”死せる戦士の魂”の訓練できていない、味方なし。そして、エレナについての情報がない。それが一番の問題だ。もしもこの牢屋から脱出できても、行き先がわかるまではこの島からの脱出が出来ない。そして僕の武器がないのも問題だ。絶対に僕のコテージにはない。どこに保管されているのかもわからない。もしかしたら捨てられているかもしれない。
カタと左の壁から音がした。朝食のようだ。僕はその朝食を食べる。まずいが栄養はしっかりと取れる。僕は食べ終わった食器を戻す。
そして頭に両手をかけて腹筋を始める。この牢屋の中にはそれくらいしかやることがない。臭いな。手錠とての間がとても臭い。シャワー室しかなくその間は洗いにくい。腹筋を76回ぐらいやった時、どこからかドアの開く音がした。そしてオスカーが姿を現した。なんだ?
「なんですか?」
「来い、場所を移す」
「なぜ?」
オスカーが返事をせずに僕の方に右手を向けてきた。そしてその瞬間、僕の体に電流が流れた。筋肉が固まる。全くいうことを聞かずに。僕は死んだ魚のようにその場に転がる。最近電ショックばっか食らっているせいか慣れてきた。
オスカーが壁についていた手錠の鍵を外して僕を引きずりながら牢屋から外の廊下に出た。僕は素早く立ち上がってオスカーの首に鎖をかけようとする....がもう一度電気を流された。
「諦めろ。本気の俺には勝てない」
オスカーが倒れたままの僕を引きずる。コンクリートのザラザラした表面のせいで皮膚が痛い。左肩のところが擦り傷だらけな気がする。ヒリヒリと痛い。
「お前はどれくらい持つかな?」
オスカーが僕を抱えて投げた。僕は背中から落ちて、う!と声が出る。
その場所は真っ暗で電気もついていない。何もない。バタン!と扉が音を立てて閉まった。
何も見えない、何もない。僕は漆黒の中にポツンといる。オスカーの言葉からなんとなくの予想ができた。おそらく体の衰えてきなところを狙ったんだろうが、僕の体は衰えることはなかった。筋トレしてたしね。そこで今度は精神攻撃に移ったのだろう。人間の精神はとても脆い。全くひどいことをするな。
僕は能力を発動してその辺りを見回すが何もない。反応があるのは床と壁と天井のコンクリートだけだ。これはチャンスだな。僕はこの学校を裏切ることになってしまうのか。しょうがない。だが僕が吸血鬼の大半をこちら側に引き入れられればいいだけだ。情報が必要になっては来るが。
僕は”転送”魔術のついた紙を破く。日がりが僕を包み込んだ。次に目を開けた時に見たものは、神託の柱だった。よかった誰もいない.....が外が暗い。強い雨が降っているみたいだ。雨の音が水たまりに落ちてドラムの小太鼓のように細かい音がする。ついてるな。雨の中だったらバレにくいはずだ。
僕は急いで近くの森の中に身を隠す。服が囚人服みたいな薄い服だからすぐに体温が奪われる。寒い。体が震える。だが僕にそんなに自由にできる時間はない。早く武器庫に行かないと。あそこに行ければ軍服や武器が手に入る。そのあとに情報集めだ。時間としては残り12時間あるかないかだ。
僕は道の近くの森を進んで学校近くの武器庫に向かう。
〜〜〜
「抵抗しないでもらいたい。オル、アナ。私たちも君らを傷つけることは望まないんだ」
「嫌ですよ。そんなに腐ってる人だとは思いませんでしたよ。オスカー」
最悪だ。吸血鬼の要求を承諾してエレナを差し出したなんて。私たちは職員室でオスカーとラユラさんが話していたことを盗み聞きしてしまった。悪いこととはわかっていたが、そのおかげでエレナが吸血鬼の次期王に嫁がされたこと、港が監禁されていることを知った。そのまま逃げれればよかったんだが、なぜかバレてしまった。おそらくオスカーが私たちの微弱の電気を感知したのだろう。
そして今に至る。私たちは校内の廊下でオスカーとラユラさんと戦っている。近くの窓ガラスは割れていて雨風が学校の中に入り込んできている。私もオルもびちゃびちゃだ。
「なぜエレナを嫁がせたんですか?オスカー」
「答える理由はない」
オスカーがウィンチェスター M1887を私たちに向ける。やばいな。ゴム弾だとはいえオスカーは電気をまとわせて撃ってくる。触れずにに避けるか防ぐかしないと感電して、やられてしまう。今はオルの火でゴム弾を溶かしているから大丈夫だが雨のせいか、オルの体力の消耗が激しそうだ。オルの息が荒い。
「ごめん、アナ。ちょっとやばい」
「ごめんオル。もうちょっと頑張って!」
オルが限界に近いみたいだ。
「アナ、奥のラユラさんに注意!」
奥でラユラさんが弓を構えている。そして三本の矢が私たちの方に飛んできた。あれは私の役目だ。左手を出して暴風を呼び矢を吹き飛ばす...が、吹き飛ばしてもなおやが私たちの方に迫ってくる。私たちは後ろに飛んでその矢を避ける...が矢が地面すれすれで矢先を私たちの方を向き、もう一度迫ってきた。
「アナ、どいて!焼き尽くす!」
オルが三本の矢を火で焼く。廊下に溜まっている水に反射して廊下がオレンジ色に染まる。そして矢が灰に変わり、廊下に黒い灰が落ちる。
「しぶといわね」
「ラユラ、いい加減当てろ」
「矢を壊されちゃうと当たらないよ」
ラユラさんの能力”矢の眼”が厄介すぎる。矢を破壊完璧に破壊するか、ラユラさんの視界から消えない限り矢は永遠と私たちを追いかけてくる。
「オエェェェ!」
オルが腹を抑えて吐きながらその場に右ひざをついた。バチャと吐瀉物が音を立てる。私たち神の子は能力を使いすぎて限界に近づくと人によって違うが大体の子は吐いてしまう。汚いな。私は風でオルの吐瀉物を外にだす。
「能力を掃除に使うなよ!」
「しょうがないでしょ!汚いんだもの」
「オル、体力の限界だろ。諦めて降参しろ」
「嫌だね。それにあんたらの言うことは死んで聞きたくない」
オルの体力は限界だろうが、まだ目は死んでいない....があとどのくらい持つだろうか。
私は槍を構え、オスカーに向けて刃の部分を向ける。槍の胴の部分に雨がついて刃のところから水が垂れている。
「アナ。逃げよう。あの2人にはかなわないよ」
「それには賛成。でも逃げ切れると思う?」
「無理だね」
オルが笑いながら右手の盾を構える。吐いたおかげかスッキリした顔つきをしている。
「なぜ、エレナを吸血鬼に差し出したんですか?」
私は同じことをもう一度オスカーに尋ねる。まぁ盗み聞きしている時に聞いたが。
「もう知っているだろ。向こうの今の吸血鬼の王、ジェヴァム・ルドルフが我々が裏切らないようにし人質と次の王、エル・ルドルフの嫁を兼ねてしてエレナを要求してきた」
「ではなぜ吸血鬼の王がなぜ自分の息子に王位を譲るんですか?吸血鬼には寿命がないのに」
「寿命がないが不死身ではない。首を切られるか、臓器の病気にかかってしまうと死んでしまう。再生力が強すぎて摘出しようとメスを入れてもすぐに傷口がふさがってしまうからな」
だから吸血鬼の数がそんなに多くないのか。繁殖力が低いのも原因だと思うが。
「アナ、乾燥した風呼べる?」
いつのまにかオルが私の横に立っていた。小声で私に話しかけてくる。
「無理ね。こんなに雨が降っているとさすがに無理だわ」
「了解。俺もう限界で火呼び出せないからよろしく」
「もうちょっと頑張ってよ」
「これ結構まじで、湿気った場所で火を呼び出して維持するの大変なんだよ」
これはやばいな。もう敵の攻撃を防ぐ手段がない。
「おい、あれはなんだ!?」
オスカーの顔色が変わった。どうしたんだろう。わたしたちの方は向いているが私たちは見ていない。私たちの後ろに何かあるのか?
私は後ろを向いてみる。そこには赤く光る点が10個ほど見えた。しばらくするとそれがなんなのかがわかった。黒い骨をした骸骨が剣や盾、槍、などの武器を持ってこっちに迫ってきてる。本当になんだあれは。
私は彼らに向かって暴風を当てる。一番前のやつは倒れた?いや崩れたの方が正しいか。だがすぐに元に戻ってこちらに迫ってくる。私とオルとの距離が半分ほどになった時だろうか。骸骨たちが奇声をあげてこちらに迫ってきた。私は槍、オルは盾を構えるが、その骸骨たちはなぜか私たちにみは見向きもせず、オスカーとラユラさんの方に向かっていった。
「なんなのあれ!?」
「アナ、逃げよう!今だったらオスカーとラユラさんから逃げられる!」
オスカーたちの方を見ると苦戦しているみたいだ。倒せてはいるがすぐに元に戻る骸骨たちに戸惑っている。
私たちは近くの階段を走って駆け下りる。後ろからオスカーたちの追いかけてくる気配はなかったが、あの骸骨たちが気になる。敵の襲撃なのだろうか。もしもそうだったならなぜ彼らは私たちを無視したんだろう。疑問しか浮かばない。
「どこに逃げる?」
「どこでもいいわ。隠れられるのなら」
「それなら森かな」
「そうね、急ぎましょう」
私とオルは森の中に入っていく。雨のせいで服がびちょびちょで寒い。
〜〜〜
学校近くの武器庫で武器と服を手に入れた僕は学校の中に潜入して今、職員室の前にいる。武器庫の見張りをしていた子には悪いことをした。後ろから首を閉めて気絶させたからな。やっぱい首をトン!ってやって気絶させるのは不可能だなっとつくづく感じる。あんなのアニメの世界だけのものだな。
僕はバックに入れられるだけの銃の弾と食料、魔術紙、魔血インクの入ったペンそのた色々な武器を詰め、右手にはFN P90。腰のところにSIG SAUER P226を装備して学校の中に潜入した。僕の日本刀が保管されているのなら、職員室だと思ってきたら職員室近くの廊下で、オスカーとラユラさん、オル、アナが戦っていた。理由はわからなかったが僕は骸骨を五体呼び出してオスカーとラユラさんの足止めをさせてた。
僕は職員室に入って僕の日本刀を探した。いがいとあっさりと見つかった。エド先生の机の後ろに無造作に立てかけられていた。僕は日本刀をとって腰にかける。この腰のあたりに感じる重さ、しっくりきて安心する。僕は子声で口ずさむ”戻れ”すると、廊下から聞こえていた金属がぶつかる音が消えた。
オスカーとラユラさんがこの職員室に戻ってくるか、来ないかは賭けだ。僕は入り口から一番遠い机に隠れて銃をしまって照明弾を右手に持って左手を地面につけ、その場に隠れる。戻ってきてほしくはない。早くその吸血鬼からの要求についての情報を探さなければ。
「なんだったんだ?あいつら」
「わからないわ、ねえオスカー。オルとアナちゃんどうするの」
「待て、そこにいるのは誰だ?」
オスカーが銃のトリガーを引いた音が聞こえた。空薬莢が地面に落ち、金属音が職員室に響く。バレたか。僕は照明弾のピンを口にくわえてピンを抜く。
「両手を上げて出てこい」
照明弾を投げたとしてもすぐにオスカーにはバレてしまうだろうな。僕は右足で照明弾のレバーを踏んでその場に立ち上がる。両手を頭の後ろに隠しながら。
「港!なぜここにいる!?どうやって外に出た!?」
「答えるつもりはありません」
右手を動かそうとする。
「待て!両手をそのまま頭の後ろから前にだせ。無駄な抵抗をするなよ!」
僕はゆっくりと両手をパーにしてオスカーに見せる。
「そのままうつ伏せになれ」
僕はゆっくりと体を前かがみにさせた時に右手を大きく振りかぶる。オスカーもそれには気がついていたみたいで僕の右腕を撃ち抜く。右手首のあたりに銃弾を食らったみたいだ。右腕が後ろに持ってかれる。かなり痛い。ゴム弾でももろに食らったら痛いものだな。もげたかと思った。
僕は右足に力を込めて床に叩きつけ照明弾を押しだした。すると照明弾がくるくると横に回転しながら机の下から飛び出す。僕はその瞬間に目をつぶってしゃがむ。
バン!という音とともに僕の視界が真っ赤になった。ものすごい光が僕の瞼の裏の血をすかして僕に赤色の世界を見せる。僕はその場にあった大きな辞書を窓に向かって投げつ。ガシャン!という音と主にガラスが飛び散る。僕は机の下に隠れながら左手を床につけて一体の骸骨を呼び出す。そしてそいつにローブを羽織らせて小声で命令する。
「その窓から飛び降りて後者を背に走れ!振り返るなよ!」
骸骨がその窓から飛び降りた。
「待て!」
オスカーが窓の近くに走っていき、窓の下を見下ろす。
「ラユラ、港が逃げた!おうぞ!」
オスカーとラユラさんが職員室から出て走ってった。よかったバレなくて。
僕は職員室を見渡せる場所に立つ。そして能力を最大限に使って一気に職員室の物の情報を取り込む。目がとても痛いが歯を食いしばって全てを取り込む。見落としのないように最新の注意を払って。
見つけた。左奥のタンスの中の封筒の中に入っている。もっと金庫とかの中に入っていると思っていたが鍵がつけられている棚に入っているだけだった。
僕は棚の扉を壊して中の封筒を取り出してバックに入れて学校を後にする。
「港、よくわかったな。そこにあるって」
オスカーが右手に骸骨を抱えたまま窓のふちにかがんでいる。最悪だ。帰ってくるのが早すぎだろ。
僕は左手を地面につけて呼べるだけの骸骨を呼び出す。10体くらいだろう。結構増えたな。
「行け!」と骸骨たちに命令するが全員まったくいいうことを聞いてくれない。踊り出したり、盾と剣を叩いて騒音を作ったり、奇声を発したりしている。
「それがお前の新しい能力か.......舐めるな!」
オスカーが僕の目の前に現れた。骸骨は全員の顔面を飛ばされてお互いの顔面を持ち合ってどれが自分の胴体を探しあっている。やべ。死ぬ....。
オスカーが右腕で僕の腹に打ち込んできた。僕はとっさに左腕でガードするが後ろに飛ばされる。メキメキ!と左手の骨が折れる音がした。
「クソが!」
僕は右手でSIG SAUER P226を構えあるだけ撃つ....が全て避けられた。オスカーの動きが人間離れしている。体に少し電気をまとって筋力を上げているのだろうか。よくわからないが絶体絶命なのはわかる。左手を見て見るとプラプラしている。めちゃくちゃ痛い!。
「次は実弾で撃つ!引けオスカー!」
「舐めるなと言ってるだろう!!!!」
オスカーが僕に近寄ってくる。さっきよりも早い。手にウィンチェスター M1887をバットを持つように構えて僕の肋骨を巻き込んで振る。僕は廊下の壁に叩きつけられた。肋骨は確実に折れた。
「がは!」
僕は口から血を吐き出した。肋骨が肺に刺さったらしい。本当に死ぬ。
僕は立ち上がって後ろの窓を破って飛び降りる。二階の高さくらいだったら受け身でなんとかできる。僕は右腕を先について転がる。転がっている最中もう一度血を吹き出した。さっきとより量が多い。大量出血で死んでしまうかもしれない。動けない。身体中が痛い。
「港ー!!!!!!」
オスカーが窓から飛び降りてこちらに走ってきた。僕は右手を地面につけて骸骨を三体呼び出す。
「俺を海に投げ入れて運べ!」
今度は言うことを聞いてくれた。担ぎ上げられた時にゲロを吐いた。骸骨酔いってあるのだろうか。骸骨たちが海に入っていく。僕の体が濡れていく。しかし海は結構荒れている。骸骨が軋む音を上げながら海に入って僕を担ぎながら泳ぐ。
「死ね」
オスカーが僕の方にウィンチェスター M1887を向けてくる。ガチャガチャとリボルバーを引き中に入っていた銃弾を全て外に出した。そしてポケットから三つ銃弾を取り出した。そしてウィンチェスター M1887に詰め込む。
やばいなこれ。オスカーが詰め込んだ銃弾はオリハルコン製の銃弾だった。あれで打たれるのはかなりやばい。僕は右手を地面の方に向けるが地面がない。骸骨が呼び出せない。
オスカーが引き金を引いた。銃口が光って銃弾が飛んでくる。僕は右手で日本刀を抜くが間に合わなかった。僕を支えていた2体の骸骨の顔面が、粉々に砕かれた。僕の体が海の中に入る。
そして僕は海の中に入っていく。溺れる!僕の左手はまったく動かない。いや厳密に言うと動くが、まったく役に立たない。僕はそのまま溺れていく。
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ここで二章が終了です。最近投稿するペースが遅れてしまってすみません。
3日に一回は必ず上げれるように頑張ります。文の量も多めに頑張ります。よろしくお願いします。
第三章は”黄金のリンゴ”です。喜んで読んでもらえると嬉しいです。
よろしくお願いします!




