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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
吸血鬼の姫
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第五話 ロンドンの通貨はめんどくさい

「四月でも海の中は寒いね」

「そうだね、防寒着来といた方が良かったかもしれないね」


 僕らは今、イギリスのある浜辺にいる。これからロンドンに向かう。

 現在の時刻は6時30過ぎだ。太陽が出始めている。日光が冷えた僕らの体を温めてくれる。


「それじゃ、みんな行くわよ」


 ラユラさんが海から上がって来た。海馬たちを島に返したみたいだ。


「おーい、ちょっとそこあけてくれー」


 空からペガサスに乗ったオスカーが叫んでいる。ペガサスってとてもかっこいい生き物なんだな。上を見ても下に写ってる影を見てもどっちともかっこいい。


 ペガサスが砂浜の砂を撒き散らしながら着地した。そしてオスカーが降りてくる。


「それじゃあ、みんな行こうか」

「はい!」


 僕らはオスカーを先頭に歩き出した。


 とても緊張する。任務に対してではなくバックに入れてある銃が見つからないかがとても心配だ。見つかった場合どうすればいいんだろう。高校生が弾丸も持っているんだし...考えない方がいいな。


「よし、みんなこれに乗ってくれ」


 オスカーが指差した先にジープが置いてあった。黒色の現代的なやつだ。それにしてもどっから持って来たんだろう。まさか盗んだのか?


「オスカーどこから持って来たんですか?その車」

「先にここにいる二人が準備してくれていたものだ、細かいことは気にせず乗れ!


 オスカーが運転席に座って窓から顔を出して僕らを呼んでいる。少し不安だな。


「ねぇ、オスカー。あんた車の運転苦手でしょ。私に代わりなさい」

「なんでだよ、ラユラ。俺だって練習したいんだよ」

「それは、夏休みの間にやりなさい、ほら代わった、代わった」


 ラユラさんがオスカーを運転席から引っ張り出した。オスカーよりラユラさんの方が安心できる。

 僕らは車に乗る。中は思ったより広かった。前に二人、後ろの座席は窓に背を向けるような配置になってる。軍にありそうなジープだな。


 僕らがシートベルトをかけたのを確認すると、ラユラさんが車にエンジンをかけた。重い音が響いて車が少し揺れた。車が道路をゆっくりとスピードを上げながら進む。横が木々に囲まれていている綺麗な道路だ。木々の隙間からさす日光が僕らの顔を照らす。前のオルの顔がシマウマみたいで面白い。


「ラユラさん、ロンドンに着いたらどうするんですか?」

「ロンドンに着いたら、先にここに来ている二人と合流して隠れ家に向かうわ。それまでは寝てていいよ」

「もう既に何人か寝てますよ」


 見た所、アナとエレナは肩を寄せ合って寝ている。可愛い。カメラがあったら撮りたいな。

 僕はジープの中を少し物色して毛布を探す。そのくらいの備品はあるでしょ。あった。僕の座席の下にあった。意外と簡単に見つかったな。僕はその毛布をエレナとアナにかける。二人ともよっぽど眠かったんだろう。熟睡してる。


 僕はリュックの中にを確認する。FN P90、SIG SAUER P226、対人用ゴム弾、僕の日本刀、オリハルコン製の弾、魔血インク入りのペン、魔術紙、500ポンド(イギリスのお金、だいたい5万円)スマホ、洋服一式。大丈夫だ。全部ある。


 僕は大きくあくびをする。ちょっと眠いな。


「寝たら、港?」

「オルは眠くないの?」

「昨日いっぱい寝たから大丈夫」


 寝た人の顔色とは思えないな。目の下にクマが出てるし。どちらかというとオルに寝て欲しい。でも無理に寝させるのも嫌だし、先に寝させてもらおう。


「それじゃあ、お先におやすみ」


 僕も座席の下にあった毛布を自分にかけて眠る。車の中で眠れるか心配だったけど、すぐに寝れた。



〜〜〜



 オルは窓の外を眺めている。窓に映った自分を見るとかなり疲れてそうだ。それもそうだ、ここ最近まともに寝れてない、寝なくても精神的には大丈夫なんだが、さすがに体はそうはいかないみたいだ。


「オルくん、寝なくて大丈夫?流石に初めての海馬は疲れるでしょ?」


 ラユラさんが話しかけてきた。バックミラーを見るとオスカーも起きているみたいだ。じっとこちらを見ている。オスカーの目はちょっと苦手だ。何もかも見透かしているようなあの目。ずっと見ていると吸い込まれそうだ。


「そうですね、結構疲れました。でもそんなに眠くはありません」

「嘘だな、オル。多分お前は寝ないんじゃなくて、寝れないんじゃないか?」


 嘘だと見破られるとは思っていたが原因まで当てられるとは思っていなかった。どうやってごまかそう。


「オルくん、無駄よ。何を考えようとこのバカはお見通しなの、なんでかって言うとね....」

「俺が説明するからいい、オル。人間の体にはなかなり微弱だが電気が流れていてな、大雑把に言うと、神経が情報を伝達するときと、心臓を動かすときだ。俺はその微弱の電気を感じて相手の感情や次の行動を少し予想できてな、お前の場合、”寝る”と言う単語を聞いたとき、心臓の電気の波が速くなった。その時の速さは、人間が何かを恐れているときの速さと似ていた。どうだ、当たってるか?」

「だいたいは当たってます」


 

 オスカーの能力は本当にこの世の中で1位2位を争うものだと思う。

 あまり話したくはないんだが、どうしよう。


「別に話す必要はない、俺もお前の秘密を無理やり詮索はしない、だがな寝ることは俺らの体にとってとても大切なことなんだ。寝るのが怖いんだったら、その怖さをどう和らげるかを考えるべきだ。なんなら相談にのるぞ?」

「いや、大丈夫です。これは僕の問題なので」

「そうか...」


 オスカーが肩を落として落ち込んだ。この人ほんとにわかりやすいな。


「それなら、オル。そんならこれを使ってみな」


 オスカーが1枚のマスクを渡してきた。なんだろう。マスクは口のところに魔術紙が付いていて古代文字が書いてある。なんて読むんだろう。まだ習ってないからわからないな。


「マスクには”録音”の魔術がついている、お前ように作ってみたんだ」


 オスカー、絶対僕の秘密知っている気がする。


「それの発動条件はその紙から半径30cm以内で音が当たった時だ。それと使い終わったら絶対に破れよ。それにも容量があってな、よくわかっていないがもしもその容量を超えてしまうとと今まで貯めた音が一気に放出されて下手したら鼓膜やぶけるからな注意しろよ」


 ちょっと使うのためらうな。


「使うかはお前の自由だが、体調管理はしっかりしろよ」


 どうしようか、確かに体は重い。もし寝たらこの疲れは取れると思うが、僕の心はどうなるかわからない。精神を取るか、体調を取るか。ちょっと迷ってしまう。でもせっかくオスカーが持ってきてくれたものだし、使わないのもなんか失礼だな。


 俺はマスクをつけてから目をつぶってまぶたの裏を見る。マスクをつけてて息苦しいと思ったが、吸う空気がとても綺麗に感じてそんなに息苦しさは感じない。意外とすぐに眠れた。さすがに寝なさすぎたな。



〜〜〜



 オルが目をつぶった。少し時間を置いてから寝ると思ったが、あっという間に寝てしまった。

 アナはゆっくりと毛布をエレナにかけて起きた。随分と前から起きていたが、オルとオスカーが真剣そうな話をしていたからずっと寝ているフリをしていた。


「アナか?起きてたのは」

 

 前からオスカーの声がした。なんでわかったのかはさっきの話から予想できた。オスカーの能力は無敵な気がする。


「そうです、すみません、すぐに眠ってしまって」

「アナちゃん気にしないで大丈夫よ」


 バックミラーにラユラさんの笑っている顔が見える。


「アナ、一つお願いしたいことがあるんだけどいいか?」


 オスカーの真剣そうな声が聞こえた。なんだろう。オルについてだろうか。


「はい、大丈夫ですよ。なんですか?」

「オルを助けてやってほしい」


 予想が的中した。そのことに関しては何も問題ないが、オルをどうやって助ければいいのかがわからない。


「その、オルの何を助ければいいのかがわからないんですけど...」

「そうだな、あいつの心を助けてやってほしい」


 心か、精神面的なことはどうすればいいのかよく知らない。私の両親が確かそれ専門の医者だったが、彼らにはなりたくなくて外科の勉強をしてたからな。あまり自信はないな。


「オルはな、聞いてるかもしれないが紛争地域から来た子でな。学校には行っていたそうだが、少年兵としても戦わされていたらしく、これまで何人もの人を殺したらしい。おそらくだがその頃の記憶が今、悪夢となってオルを苦しめているんだろう。だから寝るのが怖いと思っているんだと思う。そういう子は少なからず何人かうちの学校にいてな、時間をかけてやるのが一番なんだが、オルの場合、時間をかければかけるほど。どんどん悪くなっていっているからなんとかしてやりたいんだが...どうだろう?」

「やるだけやってみます。いってしまえばカウンセリングみたいなものなんですよね」

「そうだな、よろしく頼む」


 オルを見てみる。ぐっすりと眠っていて、まるで普通の子みたいだ。でもオルは何人もの人を殺したことのある子だと聞くと、どんな気持ちで私達と接していたんだろうか。やっぱり平和ボケした私達を恨んでいたんだろうか。


 窓の外を見てみると広大な草原が広がっていてちらほら牛やヤギが見える。干し草食べている。呑気なものだ。



〜〜〜



「ついたよ、みんな起きて!」


 ラユラさんの声で僕は目覚めた。僕以外はもうすでに起きていたみたいだ。みんなすでに車から降りている。

 車を降りて気がついたが結構大きい家が目の前にある。家の周りに少し木々が立ち並んでいて、魔法使いが隠れ家にしている家みたいだ。


「ごめん、お待たせ」

「大丈夫だよ、港君。さあ観光しに行こう!」


 見た所オルも寝れたみたいだ。さっきより顔色がいい。


「オル、なんで観光するの?任務で来たんだよ?」

「いいのよ、港君。任務開始は明日から。今日は好きにイギリスを見て来ていいよ。荷物運びだけは手伝ってね」


 なるほど、どうりでアナがあんなに一生懸命働いているわけか。能力で風を呼び出してまで運んでいる。よっぽど早く行きたいんだろうな。


 僕もなるべく早く自分の荷物を目の前の家に入れていく。家の中はまあまあの広さで、リビングには暖炉もある。かなりお高い家な気がする。


「港、早く早く!」


 エレナが急かしてくる。もう少し落ち着かせてをしい、寝起きでここまで動くと流石に辛い。


 僕らは荷物を運び終えて玄関前に集まった。オスカーはリビングで本を読んでいる。ラユラさんは部屋で寝ているみたいだ。夜遅くから一睡もせずに車を運転し続けてたら誰だって疲れる。先に来た二人が見当たらないが、どうでもいいや。あと出会えるだろう。


 僕らはそのあとロンドン市内を観光した。ミュージカルを見たり、Fish&Chipes を食べたりとかなり楽しい観光を送った。だが問題が一つ。それはイギリスの通貨だ。とてもめんどくさい。色々ちっさなコインがいっぱいあるし、さらには値が小さくなると単位がポンドからペンスに変わったりするのでかなり苦戦した。









 

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