第三話 お茶はまずくても美味しいと言おう
「やっときたわね。みんな好きなところに座ってて。もうそろそろホルス先生が来るはずだから」
デリュピュネ様が僕らを迎えてくれた。今回が初対面だな、本当に下半身が蛇なんだ。
僕は一番奥の席に着く。隣にエレナがきた。向かいの席に、オスカーとラユラさんが座った。
「港、大丈夫だった?オスカー兄さんが喧嘩をふっかけたみたいで」
「大丈夫だよ、それに電気のおかげか逆に体が軽いよ」
「よかった」
エレナが笑った。顔を見れない、なんでか恥ずかしい。
ラユラさんが僕の方を見てニヤニヤしている。オスカーはなんか怒ってそうだ。
「どうかしたの?」
エレナの顔が僕の前に突然現れた。近い近い近い!体温が一気に上がる。
「顔、真っ赤だよ、港。熱あるんじゃないの?」
僕のおでこに手を当てて来る、柔らかくて気持ちがいい、だけど近い!顔が目の前にある!
「ごめん、エレナ。近い....」
「ごめん!」
エレナが手を離して縮こまった。本当に可愛いな。オルとアナが奥でニヤニヤしている。なんかやだな。
「青春ね〜」
デリュピュネ様が奥から出てきた。手には人数分のカップと二つのお茶が入ったポットを持っている。
「みんな、苔茶と藻茶、どっちがいいかしら」
苔のお茶と藻のお茶ってなんだ?響き的に美味しくなさそう。
「デリュピュネ様、私に苔茶ください」
「それじゃ、私も」
「アナちゃんはどうするの?」
「私も同じものをください」
女性陣には苔茶が人気なんだろうか。
「僕には藻茶をください」
一斉にみんなが僕のことを見た。なんだなんだ?。エレナが心配そうに僕を見ている。藻茶って美味しくないのか?。
「港、やめといたほうがいいって絶対に、苔茶の方がマシだよ」
オルが教えてくれた。
「それじゃ、すみません。僕にも苔茶をください」
「ごめんなさい、港君。もう入れちゃった」
デリュピュネ様が僕にマグカップを渡してきた。なんか薄ら笑いしてて怖いな。
おぉ〜、これはなんとも独特な色だな。薄茶色というか黒色というか、お茶だとは思えないな、どちらかというとコーヒーに似ている。味濃さそうだな。
一口飲んでみる。........うん。まずい、の一言しか感想が浮かばない。舌がゴワゴワする。ヤ○ルト飲みすぎたみたいな感じだ。気持ちが悪い。
なんの藻だろう、僕は目で見てみる。”ゴメの藻”。なんだこれ、聞いたことないな。少し思い出してみよう。”ゴメ藻とセズの葉の煎茶”っていうお茶があるな。図書館の料理本12号に書いてある。
「どうだった?港君」
デリュピュネ様が少年のような眼差しで僕を見て来る。もしかして自分で作ったのだろうか。
「これは、デリュピュネ様が作ったんですか?」
「そうよ!で、味はどうだった?」
この場合は美味しいと言った方がいいのだろうか。でもな、どうすればいいんだろう。
「デリュピュネ様、セズの葉ってありますか?」
「あるけど、どうして?」
「ちょっとそのお茶を少しください。これと混ぜてみようと思って」
デリュピュネ様が少し不思議そうに奥の台所に行った。僕はそのすきにカップに入った。藻茶を半分ほど飲んで少しスペースを作る。
まずい...涙が出てきそうだ。
「何してるんだ?港。そんなまずいお茶飲んで」
オスカーがかわいそうなやつを見るような目で僕を見ている。
「そんな、哀れな目で見ないでください。多分デリュピュネ様が作りたいお茶、僕わかるんですよ」
あ、でもどうやってその理由を話そう。白猫に教えてもらったことにしよう。
「お待たせ、港君。これでいい?」
「はい、ありがとうございます」
デリュピュネ様が薄緑色のお茶を持ってきてくれた。緑茶みたいな色だな。
僕はそれを記憶どうり1:1の割合で混ぜる。麦茶みたいな色になった。
一口飲む、うん、さっきよりは断然美味しい。
「できたの?」
デリュピュネ様が不思議そうに僕の作ったお茶を見ている。
「飲んでみますか?」
僕は自分のカップをデリュピュネ様に渡した。
「待って待って!デリュピュネ様!私も同じように作ったからこっち飲んで!」
エレナが新しいカップを渡した。なんでこんなに焦ってるんだ?
「これ、美味しいわね!どうやってしったの?港君!」
デリュピュネ様の目がさっきより輝いた目でこちらをみてきた。無邪気な人なんだな。
「白猫さんに教えてもらいました」
なんかバツが悪いな。
「そうなんだ。私も教えてもらおっかな〜」
やばい、白猫に口裏合わせてもらわないと!
ギィイと音を立ててドアが開いた。ホルス先生が来た。
「お、みんな集まってるな。そんじゃ、オスカー、任務の説明を始めろ」
ホルス先生がオスカーを睨みつけた。
「わ、わかってるって先生。俺たちの....」
「ちょっと待って、オスカー。私まだ港君に自己紹介してないの」
「さっきいっぱい時間あったろうが」
「いいじゃない別に、細かい男はモテないわよ」
ラユラさんがオスカーの話を遮った。オスカーが少しキレてる気がする。
「改めてよろしく、港君。私はラユラ・クク・ベルムス。私の神はアルテミス。ギリシャ神話の狩猟の神よ。能力は”矢の眼”。視界にいるものに弓矢を百発百中できるっていう能力だよ」
なるほど、だから矢筒と弓を持ってるのか。なんか僕の能力と少し似てるな。
「ほら、オスカー説明を始めて」
オスカーが嫌そうに説明を始める。
「俺たちの任務はイギリスで獣人、魔人を商品としてオークションを開いているマフィアに潜入、そして捕まっている彼らを秘密裏に保護または解放する。これが任務だ。今日から大体二週間後から始まるので、かくじ準備をしておくように」
「何が必要ですか?」
「それはもう伝達済みだ。明日担任から説明の書いてある紙をもらうと思うぞ」
「わかりました」
「他にも先輩がいると思うんですけどどこにいるんですか?」
アナが尋ねた。確かに四人いるはずなのにどうしたんだろう。
「他の二人は先にイギリスに行って下調べをしてくれてるよ」
「そうなんですか」
「向こうに行ったら会えるから楽しいにしててね」
「よし、終わり!港、晩飯食べに行こう!」
「待ってよ、オスカー今日は私と食べる日でしょ!」
なんかラユラさんが怒ってる。なんでだろう。エレナに聞いてみよう。
僕は小さな声でエレナに尋ねる。
「エレナ、なんでラユラさん怒ってるの?」
「あの二人ね、付き合っててね、毎週水曜日は一緒にご飯食べる約束してるのよ」
なるほど、そういうことだったのか。
「オスカー、今日は大丈夫です。またの機会にお願いします」
「そうよね、港君。ほらオスカー行くよ!」
ラユラさんがオスカーを引っ張って外に出て行ってしまった。なんだかんだでラブラブなんだな、あの二人。ちょっと羨ましい。
「ねえ、港。私たちもご飯食べに行かない?」
恥ずかしそうにエレナが誘ってくれた。結構嬉しい。
「もちろ...」
「なら、私たちも行っていい?」
後ろから、オルとアナが尋ねてきた。悪そうな顔をしている。こいつらわざとだな。
どうしよう!とても断りにくいな。断ったらエレナと二人っきりで食べたいということになるし、誘っても、なんかエレナに悪い気がする。こいつら、空気読める奴らだと思ってたのに.....どうしよう。
こういう場合は、二人っきりで行くのが定番の流れだろうが!
「もちろん、一緒に食べよう」
エレナ!なんで。結構がっかりするな〜。僕は肩を落とす。
オルとアナが肩をポンポンと慰めるように叩いてきた。
「話、聞くぜ」
「がっかりしてるのはお前らのせいだよ!」
僕とオルはエレナに聞こえないように話す。
「でも、港。一人っきりでエレナと喋れるの?」
ウッ!そこをつかれると困る。今日の状態だとあまり自信がない。
「それと今日、オスカーさんと争った理由、ラユラさんから聞いてるわよ」
アナが憎たらしい顔でこちらを見てくる。目がめちゃくちゃ笑っている。エレナはドSだな。
「それ、エレナには言ってないよね」
「言ってないわよ、でもどおしよかな〜言っちゃおっかなぁ〜」
「すみません、言わないでください」
「じゃあ、今日の晩飯奢ってね」
「わ....かりました」
本当にアナはドSだな。交渉し慣れてる気がする。いくらぐらいかからだろうか。せっかく貯めてたのに!!。
「やっり〜。サンキュー、港」
「なんでオルまの晩飯も奢らなきゃいけいんだよ、やだよ!」
「エレナ〜。今日の晩御飯、港が奢ってくれるってー」
「何言ってるんだよ、オル!」
オルががっしりと僕の肩を掴んで後ろを向かされた。
「港、好きな女にアピールするチャンスだぞ!逃していいのか!?」
「いや、まだ好きかどうかもわからないんだけど...」
オルとアナが驚いた顔で僕のことを見てきた。そんなに驚く必要あるか?
「まぁ、いいや。それでも俺らに奢ってな」
「そうそう、白猫さんに金貨もらってるんでしょ」
「どこでそれを知ったの!?」
内緒にしてたのに!白猫が喋ったのかな。
「ねぇねぇ、港が奢ってくれるって本当?」
いつのまにかエレナが後ろにいた。どうしよう、やだって言えない。
「奢ります....」
「嫌だったらいいんだよ、別に自炊すればいいんだし」
それだ!!!
「みんな、今から俺のコテージに来いよ、俺一人しかいなくてさ、好き勝手に使えるから晩飯作るよ!」
「それだったら私も手伝うよ!できるかわからないけど...」
オルとアナが悔しそうにしている。やったね!裏をかけた。
僕らはそのあと僕のコテージに集まって晩御飯を作って食べた。僕は色々と叩き込まれてたから普通に作れたが意外にもアナが全く料理できないみたいだった。晩飯は普通に食べれたが、エレナの料理がかなり大胆で、味付けが.....
次の日僕らは腹を下した。




