表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
吸血鬼の姫
15/57

第一話 馬糞処理にはマスクを忘れずに

「ウェェ....まじで臭い、これ死ぬって」

「ボス...だから行ったんだよマスク取りに行ってこいって...」


 今、僕はユニコーンとペガサスの馬糞の始末をさせられている。決して、女子の着替えをのぞいたわけではないぞ!。模擬戦の後、僕はホルス先生に呼び出され、僕のFN P90が壊れたことで怒られた。原因はボスだ!とホルス先生に訴えたが「あの状況で壊れることわかってて投げる方が悪い!」と言われてしまった。FN P90は高くて入手が困難らしく、その費用を賄うためにやらされている。

 

 ボスは生徒会の特権を私欲で使ったという理由でオスカー・ライにこっぴどく怒られたらしい。そんでボスは一ヶ月の馬糞掃除を命じられたそうだ。


 今日で一週間が経過したが、全く慣れない。


 ユニコーンとペガサスの馬糞の臭いは農場の近くを通った時に臭う匂いを強烈にして、ドリアンとシュールストレミング(スウェーデンのニシンの魚の塩漬け)を混ぜ込んだような匂いで、鼻がぶっ壊れそうだ。初めて嗅いだ生徒の中では気絶してしまった子もいたそうだ。


「おい、港。左奥のやつう○こしてるぞ、掃除しとけ!」

「やだよ、お前がやれよ、ボス!」

「お前の方が俺より近いだろ!出来たては辛いんだよ、俺マスク忘れたから!」

「おいおい、脳筋粗○ンって言われたいのか?」

「港、テメェ、もう言ってんじゃねえか!」


 ボスが左奥のペガサスのところに行って馬糞を集めてバケツの中に入れている。「オェェ」とボスのえずいたみたいな声が聞こえる。


「産気づいたか?ボス、おめでと〜」

「ウルセェ、港。ちょっと黙ってろ!」


 ”脳筋粗チ○”はあの模擬戦の後からのボスについたあだ名だ。あだ名の由来は、説明しないでもわかる......よね?ボスの息子は...やめておこう。かわいそうだ。


「終わったぞ、港。お前報告に行っといてくれ」


 あんなにガタイが良くて背も高いのに息子は........。


「なんだよ、そのかわいそうなやつを見る目は。やめろよ」

「俺が報告行くからから先に帰っていいよ、ボス」

「さっきそうやって聞いただろうが」


 ボスがその場で光に包まれた。おそらくどこかに飛んだのだろう。

 

 最近思うが、僕はボスといい関係を築けていると思う。あの模擬戦の後、エレナに対する大ぴらないじめはピタリとなくなった。それもそうだ、主犯格がやられたんだから。だけどまだ諦めの悪い生徒もいるようで、とても規模の小さいいじめはあるみたいだ。エレナは全く気にしてなさそうだから良かったが少し注意しといた方が良さそうだ。


 僕もポケットの中の紙を取り出して両手で破る。行き先は高校の前だ。



〜〜〜



 学校前に着くと、正門の近くの木の上に白いワンピースを着た女の子を見つけた。前に会った子とは少し違う。

 彼女たちは”ニンフ”と呼ばれている精霊だ。ニンフはいたるところにいる。


「こんにちは」


 僕は怖がられないように笑顔を意識して話しかけたつもりだったんだが、その女の子は小さく会釈すると消えてしまった。ほとんどのニンフにあんな態度を取られてしまう。少し話してみたいんだが。


「あははは!また逃げられたね」


 木の中から肌の緑色の女の子が出てきた。彼女は”ドライアド”、木の妖精だ。木と命を共にしており、木が枯れると彼女たちも死んでしまう。一本の木に一人は必ずいる。


「ドライアド、彼女と話してたの?」

「そうだよ〜」

「どうやったら、ニンフの子達と喋れるようになるかな?」

「あの子たちは語源の薬を飲んでないからね〜。あの子達が最初に喋らない限りあなたは喋ることできないわよ〜」


 ニンフたちが喋ってくれないってことは、僕は嫌われているのだろうか。少し傷つくな。

 

「まぁ、頑張れ〜」


 ドライアドが木の中に消えてしまった。もう少しためになるアドバイスが欲しかった。


 僕は学校に入って職員室を目指す。この学校の放課後は気味が悪いくらい静かだ。普通の高校なら校庭で部活動している生徒の声が聞こえるが、ほとんどの生徒が訓練所にいるので声は聞こえない。それに校庭がない。その代わりに遠くから銃の発砲音だったり、爆発音が聞こえる。静かではなかったな。

 

「失礼します」


 ドアを開けた後でノックし忘れたのに気がついた。もしかしたらやり直せと言われるかもしれない。


「おう、港。どうした?」


 エド先生でよかった。見た所、ホルス先生はいないみたいだ。よくよく考えたら訓練所にいるはずだ。しまった。飛ぶ場所を間違えた。


「エド先生、ホルス先生を探して来たんですけど訓練所ですよね?」

「そうだな。まあ転送石で飛べばすぐだろ?」

「そうですね」


 エド先生の机が青白く光っている。なんだろう。


「なんですか?その光ってるやつ」

「これか?これは古代文字...いや魔術か。水を沸かしてコーヒーを作ってるところだ。お前も飲む?」

「いただきます」


 よく見ると古代文字で”沸騰”と書かれた文字が光っている。その上に水の入ったポットが置いてある。お、湯気が上がってきた。


「それって魔法ですか?」

「前の授業で教えなかったっけ?」

「いや、まだです。先生の授業、雑談が多くてちっとも先に進まないじゃないですか」

「そうか?なら今、教えてやろう。さっき少し言ったけど、これは魔法ではなくて魔術だ。違いとしては魔法は魔血を持つものにしか使えなくて、ほとんどの物理法則はなんの支障もなく覆せる。まあ、種族によって得意分野みたいなものはあるが。魔術は魔血から作ったインクで古代文字を専用の紙に書いて魔法と似たような現象を起こすことだ。これもほとんどの物理法則は覆せるが発動条件を見つけるのがめちゃくちゃ難しい。大昔、魔法に対抗するために人類が作ったんだ」

「僕らが使ってるこの紙も魔術ですか?」


 僕は転送石に飛ぶための紙を見せる。


「そうだぞ。ちなみに破った時に光に包まれるのはその紙に書いてあった古代文字がこれと同じように光るせいだ」


 エド先生が机の上で光っている”沸騰”の文字を指差した。なるほどそういうことだったのか。

 コーヒーができたみたいだ。いい匂いがする。馬糞処理後の鼻にはいい薬だ。


「古代文字が光ることは魔術の発動を意味している。それと魔術の発動条件は全て違くてな、この”沸騰”の魔術は文字の上に液体を置くとそれが沸騰するという結構単純なものだが、”転送”の魔術の発動条件を見つけるのには苦労したよ」


 なんか、自分で見つけたみたいな言い方だな。


「エド先生が見つけたんですか?」

「厳密に言うと違うが、俺も同じやり方を自分の力だけで見つけた。俺の家は魔術の家でな。本当に苦労した。そんでこの学校に来た時に、ほとんどの魔術の発動条件が図書館の本に全て書かれていると、白猫の校長に聞いた時は泣きそうになった」


 エド先生が僕にコーヒーの入ったマグカップを渡して来た。


「ありがとうございます」

「お前、ブラックでも大丈夫なの?」

「多分、大丈夫です」


 一口飲んで見る。苦いし熱い!顔の筋肉に力が入る。一回飲んだことがあったがその時はポーカーフェイスで乗り切れたのに、これは無理だ。見栄を張るんじゃなかった。


「はははは。苦いだろ。待ってろ、砂糖と牛乳持ってくる」


 僕は手にあるコーヒーを見てみる。普通のコーヒーならマグカップの縁のところが少し赤色に見えるが、このコーヒーはとてつもなく黒に近い。赤色に見えないない。体に悪そうだ。


「ほらこれ、中に入れてカフェオレでも作って飲め」

「ありがとうございます。熱くないんですか?」

「俺はこのくらいの熱さが好きだ」


 エド先生の舌はどうなっているのだろうと思っていたら、ホルス先生が戻って来た。


「おい、港。終わったなら報告しに来いと言っただろう」


 エド先生との話に夢中になってて忘れていた。


「すみま....」

 

 エド先生が遮って話し始めた。


「すみません、ホルス先生。僕が港を引き止めていたんですよ」


 エド先生がかばってくれた。なんて優しい先生なのだろう。


「嘘をつくな、エド。お前が俺を”先生”なんて呼ぶ時は大抵、何か嘘を付いている時だろうが。それに「僕」なんて言うな、気持ちが悪い。何年間お前と一緒に教職やってると思ってるんだよ」

「やっぱりわかる?」

「単純すぎる。直したほうがいいぞ」


 なんだよエド先生、全然ダメじゃないか!

 エド先生がこっちを見て薄ら笑いした目でこちらを見てきた。全くこの人はいい趣味してるよ。


「それと港。お前の新しいFN P90届いたからお前のコテージに送っておいたぞ」


 やった、新しいのがきたってことは、僕の馬糞掃除も終わりか?


「だから、馬糞掃除終わっていいぞ」


 僕はその場で強く拳を握った。


「そんでな、今回お前の新しい銃が届いたから、後回しになっていたことを言っておくな。今日から二週間後。お前らには任務でイギリスに行ってもらう。お前は初任務だな、頑張れよ」


 始めはホルス先生の言っていることが理解できなかったが、時間をかけるに連れて少しずつわかってきた。

 手が少し震え始めた。


「任務って、僕らまだ一週間しか訓練受けていませんよ?それってひどくないですか?」


 声も少し震えている。実際に行くとなると結構怖いな。


「安心しろ。任務はお前たちだけで行くのではなく、先輩の任務に付き添いという形だ。研修みたいなものだ。そんなに怖がる必要はないぞ?」


 エド先生が笑いを堪えていて、プルプルしている。


「エド、お前よくないぞ。誰だって始めは港みたいになるだろうが」

「でもさ、ホルス、声があまりにも変だったから。ごめん港、悪気はないんだ」


 エド先生が少し笑ってくれたおかげで少し緊張が解けた。そんなに気張る必要なないな。

 

「他のお前のメンバーには言ってあるから気にしなくていいぞ」

「先輩方は誰ですか?」

「それは明日のお楽しみだ。明日の朝、神託前に6時に来い。そしたらわかる」

「わかりました。それじゃあまた明日。失礼します」



 僕はその場で神託前の転送石に飛んだ。

 到着するまでの間、ずっと誰なんだろうと考えいたが、よく分からない。

 やさしい人がいいな。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ