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ある日、僕は神様の子供になりました。  作者: tomo
アルツベン高校
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第十二話 決着

 アナたちは未だに影の中にいる。

 

 影の中は真っ暗で何も見えないと思っていたが、そうでもなかった。誰がどこにいるかは、はっきりとわかる。


「なぁ、もうそろそろいいと思うんだけど。まだ?」

「うるさい、オル。ちょっと静かにして」


 まだエレナは外に出ようとしない、オルの盾の影ができないのだろう。まさか、失敗したのか?。


「二人とも、多分オルの盾どこかに吹き飛んだみたいだから近くに木の陰から外に出よう」

「え!? 俺の盾どっか行ったの?」

「多分ね、3分経ったけど影ができないから」

「でもフラッグどうしよう」

「まだ影の中に入れておくよ。外に出たら元に戻そう」


 成功したのだろうか。緊張のせいか、心臓の鼓動が聞こえる。とても早い。


「大丈夫だよ、アナ」


 エレナが握っていた手をもっと強く握りしめる。落ち着かせようとしてくれてるのだろう。


「いくよ、3、2、1」


 視界が光に包まれた。そして私はその場の光景に少し戸惑った。


〜〜〜


 オルはその場の光景に肝を冷やした。オルがさっきいたところの近くには少し小さなクレーターがあり、そこを中心に木々が逃げるように傾いている。なんでかわからないがオルの盾は動いていない。


これが港が仕組んだ作戦なのか。ここまで予測できた港が少し怖い。


「なぁ、これあいつら本当に死んだんじゃね?」

「いいや、あそこに倒れてるよ。私も鬼じゃないからそのくらいの加減はしているわよ」


 奥の木のところに二人倒れている。一人の男の方は、幹に背中をもたれかける感じで倒れている。なんか気持ち良さそうな顔をしている。あいつMだな。女の方は木の枝に引っかかっている。顔が見れないが気絶してるのは確かだろう。


「やったね、アナ!本当にダウンバーストできたね!」

「やった!やった!できちゃったよエレナ!」


 隣で、アナとエレナが手を繋いでぴょんぴょんしながらはしゃいでいる。こんな大きなクレーターを作っておいて喜んでいる彼女たちを見ててつくづく思った。エレナはわからないが、アナは間違いなくドSだな。よく自分が鬼じゃないって言えたものだ。


 ”ダウンバースト”。積乱雲からできる災害レベルの下降気流のことだ。仕組みはよく覚えていないが、とにかく恐ろしいほど猛烈な風が真上から滝のように降り注ぎその辺り全体を吹き飛ばすらしい。この小さなクレーターはそのせいだろう。土を抉るほど強い風って、どんなものだろう。


「オル〜!早くこの盾の中からフラッグだそうよ!」


 エレナが盾の近くで読んでいる。アナも一緒だ。


「太陽が真上にあったせいで影がうまくできてなかったんだ。どうりで外に出れなかったわけだ」

「ほら、オルさっさと日でこの盾の影を出しなさい!」

「さっき、大きな火を呼び出したせいで疲れてんだけど..」

「いいから早くする!」


 やっぱりアナは鬼だ。少しくらい休ませてほしい。


 俺は両手で大きな火を呼び出して、盾を照らす。ついでに紙切れも焼き払っておく。そしてエレナがその影に手を入れてフラッグを引っ張り出す。


「よかった、フラッグは無事だった〜」

「そうだね、それと早く港のところに行こう、少し心配だ」

「でも、あいつらどうしよう」


 エレナが指を指した先には倒れている奴らがいる。確かに彼らが目を覚まさないっていう確証は得られない。一人残るべきか。


「一緒に連れて行きましょ。オル頑張ってね」

「な!」


 なんで俺が運ばなきゃいけないんだ。火より風の方が断然運びやすいのに。


「アナの風の方が俺より運ぶのには適してるでしょ!」

「何言ってんのよ、私はもうダウンバーストを作り出したので限界よ。もう呼び出そうとしても風がいうことを聞かないわ」

「そんならエレナは?」

「ごめんね、オル。私あいつらに触りたくない」


 エレナの顔が少し曇った。やってしまった。せっかく元気になってたのに。


「ごめんね〜エレナ。大丈夫よ〜」


 アナがエレナを抱きしめている。しっかし人を慰めながら、俺を睨むのはいかがなものだろう。行動と感情が一致していない。そんでなんか言っている。


 口の動きからして「は・や・く!」って言っているみたいだ。


 全く人使いの荒い人だ。僕は火を呼び出した。そして彼らの背中で彼らを燃やさないよう注意しながらエンジンのように小さくそして強く燃やし彼らの体を浮かせる。結構重いな、運ぶのにどれくらい力がかかるだろうか

 

 エレナとアナは俺の前をゆっくりと進んだいる。アナがこっちを見た。なんとも憎たらしい顔で笑ってやがる。


 俺もその後をゆっくりとついていく。



〜〜〜



 さっき、ものすごい風が僕のところまできた。木々が大きく揺れ、小川の水吹き飛んだ。小魚が数匹、飛び跳ねている。おそらく、アナがダウンバーストに成功したのだろう。まぁ、積乱雲を見つけた時にはもうそろそろかと思っていたが。


「チッ、なんだったんだあの風は」


 ボスが地面に大剣を突き刺して、地面に膝をついている。さすがにあの巨体でもあの風の中では立っていられないみたいだ。いやその場に居られるだけでも不思議だ。


 ちなみに僕は風に乗って右奥の森まで飛んだ。今は森の中からボスを見ている。


 周りに生徒がちらほらと見えてきた。もう他の模擬戦が終わったみたいだ。もうそろそろ計画を始めてもいいだろうか。


「どこだぁ!港!」


 ボスが大剣を思いっきり振り回している。それも片手で。腕に血管が浮き出ている。あいつの筋力には本当に度肝を抜く。どんだけ鍛えたらああなれるのだろうか。


 僕は右手に日本刀、FN P90を左手に構える。マガジンの残弾数を見てみる。残り14発だ。結構使ってたみたいだ。


 僕の頭の上を1発のゴム弾が通り抜けた。危なかった。本物の銃弾だったらハゲてたかもしれない。ボスの方を見ると、FN P90を乱射している。いつのまにか持ち替えていたみたいだ。いいぞ。単細胞なやつの行動は本当に単純で何も考えない。


「どこだ!出てこい!」


 いいぞ、もうそろそろだ。弾が切れたら計画を始めよう。


 ガシャ!。ボスが弾がなくなった FN P90を地面に叩きつける。そして大剣を右手で握った。


 今だ!僕は草むらから走り出し、左手のFN P90を構え数発撃つ。


「やっと出てきたかこの臆病者め!ぶっ殺してやる!」

「こっちのセリフや!この単細胞が!」


 ボスの顔が真っ赤になって、さらに顔の血管が浮き出てきた。


 ボスが左腕でゴム弾を防ぐ。また粉々になった。


「ウラァァ!」


 ボスが右腕の大剣で僕の左側の首筋にあたりを切ろうとする。致命傷なしって言ったのをもう忘れたのだろうか。僕は姿勢を低くして左側に転がり少し距離をとる。大剣が地面に深く刺さった。


 「クソが!」


 ボスが両手で大剣を持ち、下に力をかける。大剣が大きくしなる。そしてテコの原理で大剣が軽自動車ほどの土を持ち上げ、それを僕の方に飛ばしてきた。地面には大きな亀裂が走った。


「避けられるかな?」


 塊の奥で、ボスが薄ら笑いをしながら大剣を構えている。

 

 結構やばいな、立ち上がって避けていたら間に合わない。かとして横に飛んで避けてもその後、絶対に大剣で斬りかかってこられる。


 僕は目を大きく開ける。そしてこの土の塊の中心を見つけ、飛びながらその一点を日本刀で突く。


「ウッ!」


 少し目が痛い。能力を使いすぎた。あまりにも細かいことまで知ろうとすると目が痛くなる、おそらくこれが僕の能力のデメリットだろう。

 

 土の塊が砕けた音が聞こえた。下を見るとボスが大剣を構えている。このまま着地したら大剣で切られるな。もしも防げても、遠くに吹き飛ばされて終わりだ。ここで決めなければ。

 

「オラァ!喰らえこの単細胞、脳筋バカ!」

「うるせぇぇぇー¥*☆$%#&!!」


 最後の方は何て言ってるのかわからなかった。怒りが爆発したらしい。僕は左手のFN P90を投げつけ、空中で突きの体勢をとる。


 ボスは右手で銃を殴った。ガシャ!という音とともに本体が粉々に破壊された。


 僕は目をさらに大きく開いて、壊れたマガジンから飛び出たゴム弾を探す。壊れたFN P90の破片の恐ろしく細かい情報が一気に頭の中に入ってくる。素材の名前、どこのパーツか、どこで、誰によって作られたか、色々だ。目が熱い、練習して必要な情報と必要ない情報を区切れるようにならないと目が耐えられないな。

  

 見つけた。ボスの顔の前に一発、それだけの情報を一気に取り込む。あと0.3秒で雷管が後ろをむく。


 僕は0.3秒後、ボスの目の前のゴム弾の雷管を日本当の先で突く。慎重に、丁寧に、1ミリの誤差もなく、そして力強く。


 目の前で、雷管が爆発して、薬莢の中の火薬が火花を散らす。そして、その爆風で壊れた破片がすごいスピードで飛び散る。僕は爆風で少し後ろに吹き飛ばされた。


 僕の頬を一つのネジがかすった。血が少し垂れる。まぁ、すぐに治るから問題ないか。


 ボスはその場に膝をついた。体は能力のおかげで何ともないが目はそうもいかない、火薬の破裂した時の光と爆音までは”破壊”できなかったみたいだ。それもそうだ、触れていない。目の前で閃光弾を破裂させられたのと同じだ。しばらくは目が開けられないはずだ。座り込んだ時に土煙が舞う。


 僕もそのまま背中から地面に落ちる。少し目と頭が痛いくらいだ。

 僕が体を起こすと「オオオオオ!」と歓声が聞こえた。この歓声が笑いに変わるのが楽しみだ。


「港!」


 後ろから、他のみんなが走ってきた。みんな無事そうだ。よかった。


「大丈夫!?」


 エレナが僕の体をベタベタ触る。ちょっと恥ずかしい。


「ありがとう、エレナ。大丈夫だよ」


 後ろでオルとアナのにやけて僕の方を見ている。うざいな。


「成瀬、港ーーーーー!!!!」


 土煙からボスが出てきた。手に大剣を持っている。


「小癪な真似をしやがって、もう逃がさん!」と、走り出してきた途端、笑い声と悲鳴があちらこちらから聞こえる。


 ボスは、なぜ自分が笑われているのかを理解していない。少しオロオロしている。

 

 僕の隣ではエレナが顔を手で覆っている。かわいい。


「お前ら、何がおかしい!模擬戦中だぞ!」


 ここで僕が口を開く。大きな声で。


「それどころじゃないぞ。ボス・アルシュ。自分の状況をよく見ろ!素っ裸じゃねーか。どうした?」


 また笑い声が響いた。


 ボスは自分の生まれたままの姿を確認すると、顔を赤いパプリカと同じくらい赤く変えて、近くの草むらに飛び込んだ。


 「貴様、何をした!」


 草むらからボスが顔を出してこちらに聞いてきた。あいつはハムスターか。


「それは、お前がよくわかってるだろ?ボス・アルシュ。自分の能力で、自分の服、全部を”破壊”したんだろうが」


 バカにするように叫んだ。


 そうこれが僕の目的。ボス・アルシュがエレナをいじめられない状況を作り出しことだ。


 その目的を達成するためには、この試合に勝っても意味がない、なぜなら勝ったところでそのイライラをエレナに向けかねないからだ。そのためにはまず、ボスが学校中の注目を浴びる状況を作り、なおかつボスがエレナのことをいじめられない理由も作らなきゃいけなかった。そこで僕は他の生徒が、僕らのところに集まってくるのを待った。アナにダウンバーストを起こしてもらったのもそのためだ。敵を倒し、なおかつ人の注目を集めれる。事故現場とかに人が群がってくるのと同じことだ。そして、エレナと周りのやつにボスの恥ずかしい姿を見せつける。エレナには悪かったが、ボスには効果抜群だ。なんせ、いじめてたやつに、恥ずかしいところを見られたのだから。


 裸にさせれるかはわからなかったが、結果はうまくいった。長い間、ずっと暴言をかけ続け、ちまちまと体力を削り、卑怯な戦法をで攻めて、ボスの怒りを貯めていった。武道的にはよくないと思うがそうも言ってられなかった。


 怒っている状況では、人は理性を保てない。すなわち、考えることが難しくなる。そんな状況下で、目の前で爆発を起こされたのだ、状況を理解できずに思考が止まった。だけど本能的なものは自動的に働いた。ボスの本能は破片から身を守るためにとっさに全身に能力をかけた。


 その結果、全身の服を”破壊”してしまった。


 もしもボスが女だったらよかったなどという考えのは胸のうちにしまっておこう。そんなことを言ったら、何か良からぬことが起きそうだ。



僕らはその後、4人でフラッグをとって掲げた。その瞬間、大歓声が僕らを包み込んだ。とても嬉しかった。オルなんでか泣いていた。


僕はその時の高揚感は今でも忘れることができない。






=========


これで第1章は終わりです。どうでしたか?

この後、少しキャラクターの整理表を上げてから、2章「吸血鬼の姫」です。


よろしくお願いします。(><)/




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