タイムマシン
発明家であるS氏は一人途方に暮れていた
思い返せばS氏は幼少期から科学の世界に浸かり込み、中学生の時に周りのあまりのレベルの低さ向学心のなさに嫌気がさしやめてしまった。その後は一人科学の研究を行い、結婚はおろか恋人すらできたこともなく、友達もいなかった。
そんなS氏は40代に差し迫ろうとしていた時、このままなんの役にも立たない研究を続けていてもなんの意味もない、どうにか世の中から注目され尊敬されるようになりたい、そんな思いに駆られていた。
そこからの40年間は朝から晩まで部屋にこもりタイムマシンの研究に取り組んだ。
齢80を過ぎたころ、ついにS氏はタイムマシン完成のカギとなるX粒子を発見したのである。
しかしS氏は完成にはあと何十年かは必要だと見積もったので、どうやら自分の生きている間には完成しないことを確信してしまった。
「私の発見したX粒子がなければタイムマシン完成は不可能、、、
それなのに私はなにも名声を勝ち得ることなく死んでいくなんて、、、」
そう感じたS氏は遺書に
「未来の発明家諸君
私があのX粒子を発見したSである
タイムマシンが完成した暁には必ず私の時代まで私を迎えにきて
君たちの時代に私を連れていってくれたまえ」
S氏はタイムマシンが完成した時代まで自分を連れて行ってもらいそこで過去の偉人として注目されることにしたのである
時は流れ、若き発明家K氏はついにタイムマシンを完成させることに成功した
S氏の遺書の存在は知っていたので過去の偉人に会いに行くつもりでS氏の時代に向かった
細かい時間の調整はできなかったがどうやらX粒子を発見する直前のS氏に会うことができた
「初めましてKです。お目にかかれて光栄です
あなたがこれから発見するX粒子がなかったら私もタイムマシンを完成させることはできませんでした。
これから未来に行きましょう。みんなが偉大なあなたに会いたがっています。」
「ちょっと待て、状況がのみ込めんが、、、
つまりわたしはタイムマシンを完成させることができなかったのかい??」
「それはそうですが、あなたの発見は、、」
「黙れ!!ああ、そんなことが、、信じられん、、」
研究はもう諦めよう、そんな決意がS氏の頭に浮かんだ瞬間目の前のK氏がふっと消えてしまった
なぜ最後K氏は消えてしまったのか
S氏がX粒子を発見していなかったらK氏もタイムマシンを開発できなかったはず
つまりS氏が研究を止める意思をもった時点で未来はかわる、、、?