第一節【魔導具】
第二章開幕です。
= 玲奈 =
櫂斗君を救うと誓ってから数日が経っていた。
あれから私達は、全員でギルドへ加入し、元の世界に戻ることを目標に行動していた。
早速ピナさんにギルド加入の旨を伝えると、ピナさんの指示で様々なテストが行われた。
まずは魔力の計測。
水晶の中に無色の液体が入っている、魔力測定の魔導具を使って計測した。
魔導具に手を触れると水晶が魔力を吸収し、触れた者の適正属性の色の光と魔力量に見合うだけの光が発せられるというものだ。
皆も魔力測定の為に水晶に触れていたが、手を放すと肩で息をするくらい消耗していた。私の番が回ってきて、皆と同じように水晶に触れてみたが、何か力が吸われる感覚はあったが、特に疲労を感じることはなく、水晶は強い金色の光を発し始め辺りに居た職員の人を驚かせた。
職員の人が言うには、私の魔力量はかなり多く、職員を驚かせた金色の魔力光は【ユリシア王国】の始祖様が発現させ、現在は“先祖還り”と噂される王女様のみが有している《聖属性》のものらしい。
この世界には“魔法”が存在している。
更に魔法には大きく分けて《属性魔法》と《精霊魔法》と《極点魔法》の三種類がある。
昔は魔法とは四属性の《火》・《水》・《風》・《地》の四属性しか存在していないとされていた。
だが、ある時期に唐突に現れた“賢人”と呼ばれる存在によって、魔法には様々な可能性があることが証明された。
まずは《属性魔法》について。
この世界のあらゆる自然現象の属性の力を、操ることができる魔法だ。
四大属性を始めとして、“賢人”によって証明された新たな属性、《雷》・《氷》・《木》・《土》・《光》・《闇》の属性、そして各々の属性から派生する《派生属性》が存在している。
今回、私の発現させた属性は、《光》の派生属性である《聖》の属性らしい。
次に《精霊魔法》について。
この世界に存在する《精霊》と契約することで、彼等の力を借りて強大な魔法を行使できる。
《精霊魔法》の全力は天変地異を起こすことも可能な程の力があると言われているが、《精霊》との契約は誰もが出来るものではなく、適性がない者が契約をしようものなら《精霊》に憑き殺されることもあるという。
過去に悪人が《精霊》と契約したことで様々な大災害が起こした事件があり、その事件の影響で《精霊》と《精霊使い》は人々から畏怖されている為、《精霊使い》は己の力を隠して過ごしているらしい。
最後に《極点魔法》について。
各属性を極めることで発現させることができる、魔法の極みと言わている魔法だ。
《極点魔法》という魔法の極致に至った者は例外無く歴史に名を残しており、【エシニス共和国】の建国者の英雄バトウ・エシニスも《極点魔法》に至ったことで、僅か数日で国境にある山脈を生み出したと云われている。
この魔法理論も歴史の転換期に現れる“賢人”がもたらしたものらしい。
ちなみにこれらの知識は、ギルドに加入した日に受けた講習で習ったものだったりする。
ギルドのテストはそれ以降も続き、次に《スキル》について説明がされた。
《スキル》とは経験を積むことで習得できる技能である。簡単に例えるなら、レベルアップすれば新しい技を得られるということらしい。
ただし、習得できる《スキル》はその者の潜在能力、才能によって異なるらしく、同じ敵を同じだけ倒しても得られる《スキル》は変わってくる。
しかし、レベルアップ以外にも《スキル》を習得する方法はある。それは、既にスキルを習得している者から師事を受けることだ。これによって、レベルアップしなくても《スキル》を得ることはできるが、それを生業にしている者も居るらしい。つまり、お金を払って《スキル》を教えるということだ。ただし、自分の才能に合わない《スキル》は覚えられないから、もし誰かに師事を仰ぐ場合、自分の習得可能な《スキル》を把握する必要がある。
ちなみに、自分の潜在能力についてはさっき受けた水晶を使った検査で調べることが出来、結果はテストが終了したあとに教えてくれるらしい。
そしてテストも最後になった所でピナさんが現れた。その後私たちは彼女の付き添いの元、ギルドの地下にある施設へ連れて行かれた。
「さて、入団テストは全て終了。最後にアンタ達に渡す物があるよ」
連れて行かれた先は巨大な地下倉庫で、中には多くの武器や装備がところ狭しと並べられていた。
「ま、まさかこれが全部…魔導具?」
園部君の目が凄く輝いている。
そういえば、櫂斗君と話をしている時に「異世界召喚されたら」という話題が上がったこともあったなぁ。
その時園部君は、「勇者として世界を救って、僕だけのハーレムを作りたいッス!!」って言ってたっけ…。
あの時櫂斗君はなんて言ってたんだっけ…?
「察しがいいね。ここに置いてある魔導具から、適性のある物を与えているのさ」
「どうしてそこまでするんですか?普通なら自分達で独占しようとするのでは?」
確かに、これだけの魔導具があれば、普通なら誰かに渡すなんてことはせずに、自分達で使おうとするだろう。
「当然の疑問さね。
……まぁ理由は簡単。
ここにある魔導具を扱えるのが、異世界人だけだってことが理由さ」
「異世界人だけ…?」
「あぁ…。今まで何人ものギルドに所属する冒険者がここへ来て魔導具を試したが、発動したことは一度もなかった」
ピナさんが溜息を吐いて肩を竦めた。
皇君に言われるまでもなく、独占することも考えていたのだろう。
しかし、魔導具を使用することはできず、ただのガラクタ置き場となっているのが現状のようだ。
「ところが、異世界からの召喚者が現れてから、試しにここの魔導具を渡してみたら、今まで使うことができなかった魔導具を使うことができたんだよ。
それ以降ギルドに所属した異世界人には、ここに置いてある魔導具から、適応する物を貸し与えているのさ」
「そうでしたか…。
所で、適応した魔導具を渡す、と言うことはこの量の中から一つずつ適応を調べるんですか?」
お姉ちゃんが苦笑い気味に聞いていた。
確かに、倉庫の奥は見えないし、見上げる棚にもギッシリと魔導具が並べられている。
これを一つ一つ試してみると言われたら少しげんなりしてしまう。
「安心しな。さっき水晶で魔力を調べた時に、同時に適性がある魔導具についても調べていたんだよ。
アンタ達は……。
っ。奥の方さ……ついておいで」
そう言って先導をし始めるピナさん。
今一瞬、驚いた顔をしたような気がしたんだけど、気のせいかな?
§∞§∞§
どれくらい歩いただろうか?
棚の間を抜け、階段を下り、棚の上を渡り、梯子を上り………。
この倉庫はどういう構造になっているのか疑問が尽きない。
皆の息が切れ、口々に愚痴を漏らし始めた所で、ようやく私達は大きな扉の前に辿り着いた。
ピナさんは扉を見上げると、杖に付いている石を扉に翳した。
すると、杖に付いていた石が発光し、光が収まると思い扉が音をたてながら開き始めた。
扉が開き切ると、扉の向こう側にある光る石が発光し、部屋を照らし出した。
「ここは我がギルドの宝物庫。
アンタ達の魔導具はこの中にあるよ……」
ピナさんに誘われて宝物庫に入る。
「凄い……」
そこは、博物館のような空間だった。
ここまでは巨大な倉庫のような場所に、魔導具が乱雑に並べられた空間だった。
だが宝物庫の中の魔導具はショーケースのようなガラスの箱の中に整然と並べられている。
「この中のどれでもいいのかよ!?」
「ふわぁ~…」
「おい!あっちの方も見てみようぜ!!」
宝物庫に入ると、皆子供のようにはしゃぎ始め、端から魔導具を見ていた。
そんな中、先程まで興奮していた園部君が宝物庫の一角で大人しくなっていることに気付いた。
近付くと、園部君はある魔導具を目を見開いて眺めていた。
「園部君、どうしたの?」
「ぁ、いや…こ、ここの魔導具なんスけど……」
そこには大きな二対の盾が置いてあった。
両腕に装備して盾の先端で突くことも、側面で殴ることもでき、多彩な攻撃が可能な武器にもなるもののようだ。
「これがどうかしたの?」
「いや、昔、こういう厨二っぽい武器とか妄想したことがあるんスけど。
その時考えてた装備にそっくりなんッスよね…」
「へぇ…凄い偶然、なのかな?」
「……まぁ偶々ッスよね!
オレはここの魔導具を使わせてもらうッス!」
これも一目惚れというものなのかな?
早速ピナさんに報告しに駆けていく園部君を見送りながらそんなことを思いつつ、私も私の魔導具を探す為に歩き始めた。
§∞§∞§
一時間くらいが経っただろうか?
皆は気に入った魔導具を見つけ喜んでいた。
しかし、私はまだ魔導具を探し続けていた。
「まだ見つからない?」
「…うん。お姉ちゃんも?」
「やっぱりこういうのは大切だと思うから、慎重になっちゃうわよね」
「優柔不断の言い訳だけど」と小声で言いながら苦笑いをするお姉ちゃんに、私は微笑み返した。
お姉ちゃんはきっと、皆を守ることが出来るようになる為の魔導具をを探しているのだ。
更に私の悲願をを知っているお姉ちゃんは、私を手助けできるようにもしようとしている。
そんな優しいお姉ちゃんに、感謝する事しかできない自分が情けない。
だが、そのことが解っているからこそ、ここで妥協することはしたくないのだ。
そう考えていると、私はお姉ちゃんと共に宝物庫と一番奥へ来てしまった。
そこで、私は全身が波打つような感覚を覚えた。
自分の感覚を頼りに顔をそちらに向けると、そこには意匠が凝らされて作られた片手で持てる杖が安置されていた。
見たこともない宝石が埋め込まれていおり、先端には金色のクリスタルとそれを囲うようにメイスのように金属が取り付けてある。
自然と手が伸び、杖を持ち上げた。
不思議なことに重さは全く感じず、信じられない程手に馴染んでいた。
まるで私の為に誂えられたかのようだと思ってしまうくらい扱い易い杖だ。
更に私は杖を勢いよく片手で回すと、杖は両手で扱えるようなサイズに伸びた。
これなら、道場で習った杖術も使えそうだ。
私は伸びた杖を両手で回しながらいくつかの型を行ってみたが、思った動きを寸分違わず動いてくれる。
「…お姉ちゃん、私、この子にする!」
「……」
そう言って振り向くと、お姉ちゃんも杖が置いてあった場所の反対側を眺めていた。
そこにはクリスタルが幾つも填め込まれた、神々しい弓が安置されていた。
お姉ちゃんはその弓に手を伸ばすと、壁から弓を取り外して胸の前に持ち上げた。
そういえば、私が杖術を習っている時、お姉ちゃんは櫂斗君の道場で弓術を習ってたっけ。
お姉ちゃんはなおも熱の籠った目で魔導具を見つめている。
どうやらお姉ちゃんの方も決まったようだ。
私達はそれぞれ選び出した魔導具をピナさんの所に持っていくと、ピナは一瞬目を見開いて私達を見たが、すぐに元の調子に戻った。
「さて、それぞれが魔導具を選んだようだね…。
ちゃんと発動もしとるようだし、今日からそれはアンタ達の相棒だよ。大切に扱いな」
「はいっ!ありがとうございます!」
「それから、最後にコイツを渡しておくよ」
そう言ってピナさんが取り出したのは一枚のカードのような物だった。
「それに魔力を流してみな。
やり方は水晶に魔力を流した感覚を思い出してやってみな」
「こう…ですか?」
ピナに言われた通りにカードに魔力を流そうとした。
するとカードの表面が光り出し、光が収まると表面には見たこともない文字が浮かび上がっていた。
見たこともない筈なのに、なぜかその意味が理解できることを不思議に思いつつカードを眺めていると。
「そいつは〈ギルドカード〉。ギルドに所属している者に配布している、まぁ、身分証みたいなもんさ。
そいつがあればギルドに加盟している店ではそれなりの特典がある。
ちなみに再発行にはそれなりに金が掛かるから、無くさないように気を付けな」
「はい!」
「それじゃ、これで手続きはすべて完了だ」
そして一間開けたピナさんは、私達を見渡して宣言した。
「ようこそ、我がギルドへ!!
異世界の民よ、お前等の入団を歓迎するよ!!!」
こうして私達はギルドに入団を果たした。




