03.情報
事件が起きた後、問題の歌の持ち主である恵に健と由実で会うことにした。だけど恵はあまり体調が良くなく病院へと搬送された。その翌日、健は独り由実を病院に置いて大学時代の仲間の収のもとへ尋ねに来ていた。そこには、大原あゆみの情報があった。
前日の天気と裏腹に、うっそうと雲にあふれグレーな世界を作り出している。
この日に健は珍しく、病室にいる恵を病院と由美に任せ、ある人の家へとお邪魔をしていた。
「なんだよ~、今日はせっかくいい天気になると思って有休を取ったって云うのによ。天気は崩れるし、ヘンに暗い声で電話してくる奴いるし、それはお前だし、今日は明るくなんねぇな~。無駄な休みだぜぇ。時給出せよ、時給。あっ、違う?お前のホスト代か?な。なぁ~、健、聴いてんのか~?」
「あぁ、聴いてる、聴いてる。すまない。でも、頼めるのはお前しかいなくってよ。」
健は、大学時代の仲間の収と二人でパソコンを凝視している。天気が悪いせいで光差し込まない収の暗い部屋は、知りたい情報以上の内容も得てしそうで怖かった。
「いやいや、俺たち…アダルトサイトでも観てんのか?夢中になりすぎじゃね?」
「はっ?なにその例え……。それ、オモシロイ!」
と、会話が出来るぐらい仲が良いのだが、健がおねがいお願いしていた事は今見ている内容だけで、本題は見つからなかった。
「………というわけだ、健。健が気にするほど、厄介な問題ではないんじゃないのか。まぁ、このサイトだけが取り上げられていること自体が不思議だが、そんなものだろう?それにだ、たとえ念が込められるほど強い想いが遺していたのなら、わざわざこんな形はとならないだろう?」
それでも健は、自分の身に沸き起こる寒気と、あの歌に紛れ込んでいるとされる謎の声の意味と、同級生の謎の不審死が胸にこびりついて剥がせなかった。
「いや、もっとあるはずだ!」健は収の肩を後方へ突き放して、パソコンにしがみついた。身だしなみを整えながら収は、腕を組んで先程の記事を呟いていく。
「・・なんせ、あの頃の俺たちの時代ははまだネット環境が一般し始めたばかりの頃だ。そのせいか、その前の情報や、そのころの情報は、ほとんど尾ひれや付いているだろう。何せ、公式も同じ立場だからな。ほら見てみろ。お前が言う『大原あゆみ』の写真は、今気になっている【All love】のCDジャケットしか出てこない。これもほんとかもわからない。年代で検索しても、一発か二発だ、コアなファンであれば、カセットテープなんか動画をアップしたりなんなりしてるかも知れないが、さすがにファンでもこの時までの間に気持ちは変わるだろう?むしろ、殺されているんだからよ。当時は、「大きく取り上げられた。」と書いているが、サイトの運営者の意識の違いもある。それぐらいならネットに出るはずさ。でも検索に引っ掛かってくれるのは、そのジャケット写真のみ。」
「じゃあ、恵の知った経緯は?」
「お前、恵とは何年といるんだよ?俺は知らねぇ、それしか云えねぇな。が、恵は純粋だ。なにかに従っているだけだろうさ。」
「え?」
「……俺、そこの部分やっぱ好きじゃねぇな。」
ネット検索で結果として表示された、大原あゆみの写真。恵が好んで聴いてたCDのジャケット写真らしきものが、暗い部屋を光はなつ。
「いや、健。お前、やっぱ好きだわ。」
いきなり持ち返した収は、回転椅子に据わる健を正面に向き合わせ携帯を付き出した。胸元に投げられた携帯に困り果てはしたが、出てきた結果に嬉しさを感じさせて口角を上げた健が生まれた。収の顔は、夕暮れに呑まれていて表情は読み取れない。
誰かが写した、古びたジャケット写真からキレイなジャケット写真ともう一枚は素の彼女。誰が見ても別人に捉えられる違い。それもそのはず、そのサイトでは詳しく文字が並べられていた。
彼女の元の姿は生粋な女性だったらしく、まるでお菊さん人形のような清楚な人であった。が、事務所の傲慢な圧力で売れ行きを狙うため彼女を整形手術へと追い込み、その躰でジャケ写を撮影。そこに、計画通りに、『見たことないアーティスト&馴染みやすい曲』盛り上げる予定であった。しかし、計画上から一弾目の恋愛シングル「All love」発売直後、残虐殺害にあった。この一件が、親近感があるアーティストと宣伝もあって、曲の内容から生活、被害性で魅力を身近にさせてヒット曲となった。話では、事務所は一攫千金を手にしたのでは?という。はたまた、彼女には恋人がいて、それが作詞作曲というのも話題をさらった。
健の瞳には、整形手術を受けたとされる大原あゆみの全身ビキニ姿の写真が焼き付いた。収の視た彼女は、まるで今でいうギャルのような金髪色の髪色で、うねりの入った髪形をしていた。大きいところは大きく狭いところは狭くといった感じで、まるで清楚な日本人形とはかけ離れている気がして、いったい誰の姿を今見ているのか解らない錯覚に陥っている。ジッと見つめる健に対して収は、「まぁ、日本人形みたいな彼女より、’それ’が良いてことなんだな。日本人形って調べると怖い、写真ばっからしな。お前もそそるんだろ?俺は、それが良いんだけどな、」とだけいい、席を離れてた。
健はもう少し調べることにして、パソコンをいじりだした。あいまいな事柄を頭に入れながら、ひとつひとつ検索バーナーに単語を入れていった。
【大原あゆみ 殺人 歌 事務所】
すると、収が口にしていた内容とは裏腹に検索結果が表示されはじめた。絞り込みも考えたが、初めのサイトだけが色がついていたのもあって、ゆっくりとマウスを動かしダブルクリックした。
そこには、真っ白いページのみが表示されており不具合だと思ってマウスをむやみに動かした。するとなにかのリンクに触れたのか、一瞬だけ黒く文字が点滅した。一瞬だけの出来事だったので健は次はゆっくとサイトリンクのシラミつぶしを画面の端から始めた。中央ぐらいに来たぐらいでパッと、文字とリンクが表示された。文字には英語でクリックという単語があり、薄気味悪い字体で待ち受けていた。知りたいという興味本位とはいえ、さすがに怖さをを感じ閉じようとした瞬間、収が向こうから叫んだ。
「うわっっ!!」
いきなりの声にビックリした健は、そのままサイトをクリックしてしまった。
そうとも知らない収は駆け寄った健は、息をついた。それは収が勝手に健のカバンを開けて、恵からの封筒からウォークマンを取り出していたのだ。収は健の姿に少し呼吸を荒らし、向かって事情を話はじめた。
「・・・で、電話が・・・なってたんだ!!それで、健に知らせようとカバンを手にして、探して見つけだしたと思ったら、血の色のような赤色のウォークマンで声をあげてしまったんだ。まさかこんな話の後だし、まさか自分が思わず手にするなんて思ってもいなかったから、怖くなってしまった。まぁ・・・たぶん天気の影響でくすんで見えてるかもしれんが、薄気味悪いぞ。これ。」
健は、収を何とも言えぬ気持ちで見続けながら、手だけを動かしてウォークマンを引き取った。そして、違うポケットの方から携帯を取り出し、画面を覗いみた。そこには由実からの着信履歴があり、留守電メッセージが残されていた。
その内容は、由実がトイレに行っている最中に点滴しているべき恵が部屋から行方をくらましたという内容だった。留守電を聴き終えて折り返した健は、収を隅に追いやり、病院にて由実と合流することにした。
急いで戻った健は、由実から新しい情報を聴くことになる。