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人は生まれ死に行き、悩み恨み苦しみ、空を見上げる。
健のその何かを貫いていくような傷だらけの左手に納められた、赤い色のヘルプマーク。それもまた、新たな物語へと繋がっていくのだろう。
あのときに付いたものなのだろうか、どちらの血かわからないが、ハートマークが片割れが見えなくなっている。だけどそれもわずかな話で、所持をしている誰かの塩辛い水で、ハートが綺麗に浮かび上がってきた………。
「ごめんな、真くん………。
いや、ちがうやな、
ありがとう、真くん。」
人は意味もなく殺さない。人は意味もなく傷つけない。
人はむやみにモノに当たって解消をしたくない。
その考えを持つのが健自身だけの考えだけだとしても、健は強く歯を食い縛り左手を握り締める。
今や、健にとってヘルプマークはただのヘルプマークではない。
自分が困ったときに見せるためだけの暗示に留まらない。「自分が困ったときには“貴方を頼っても良いですか”」の意思表示である。
自分事で終らせるのではなく、相手も居て自分なのだと心を溺れさせる。
病院の一室の中で、ベッドの上でひとり白い布団にくるまっては、あの時の事件を健は微かな記憶を呼び起こした。
健を追い詰めた真についてを。
警察に取り抑えられながら、真は叫んでいた。
「お前が一番必要なんだ!
俺なんかより、お前が一番持つべきなんだ!」
そういいながら、事件が始まった赤いウォークマンの色に似たヘルプマークを真は健に付きだしていた。
「俺は、お前に出逢えて良かったよ!
あなたと正式的に再開して、今日までの間……ずっと悩んでいたけど、やはり自首は正解だったみたいだ。俺はこのままだったら、健さんに殺してもらいたいぐらい救われていたよ!」
叫びなのか、恐喝なのか、わからないような声が部屋に響き渡る。押さえつけられている筈なのに、話を設けさせている警察のかたが偉いと勘違いするほど何かがしんみりをさせていた。
「俺はただ確認したかっただけなんだっ、殺す気も追い込む気も…でも、みんな俺を避けていった。
どうやったら良かったんだ?
健さんはどうやって、人の心を掴んだ?俺は、ご機嫌取りな人間だって言われた。だけどな、周りのやつの方がよっぼどご機嫌取りだ!周りにペコペコ頭を下げるだけで評価がだだ儲け、役立たずなヤツは100均の製品のように排除していく。それまでの過程に何人の人たちが関わったか知らない消費者のようだよ!!誰がどうののまえに、何もなかったように棄てる。理不尽じゃないのかと訊ねれば、俺は常識知らずだ。常識を知ろうと相手を意識を向ければ、それは俺がパワハラに繋がる。女性に生活の話をしてみろ!何も聴けやしない、セクハラだ!!上下関係右往左往、どんなに気にしたって投げ棄てたって言われるんだよ。
俺は言われるんだよ!俺は場違いなんだよ!!」
健の脳裏に、真が経験したんじゃないかと思われる映像が頭に浮かんだ。そして、
「勝手にやつらが、やつらに追われて死んだんだ。
あいつらは、俺が殺したかのように死んでいった。でも本当は、あいつらが俺を幾度とも殺し、そして自ら追い込まれて死んだんだ。自分で考えることも出来ないぐらい、世間に洗脳され意識して動くことを辞めていたからな!!
俺の目の前から命がいくつも飛び散った。
だから、おレはッー‐―‐ーゞ――ー!!!」
真の声と同じくして、辺りが真っ暗に染まった。耳元が騒音に包まれ、眼を開けてしまうのも怖く背いていた。わかる範囲ではいくつものモノが飛び交うなかで、何かの布のはち切れる音がして、それが顔にぶつかった事。目を開くことさえ怖くて、左手へと握りしめた。
病室から覚めてようやく気付いた、そうそれは真が所持していたヘルプマーク……
健は、思いでとして形になる前に、いま着ている服装の胸のポケットに、そのヘルプマークは納めた。
隣のベットに入院するおじいちゃんのラジオから、苦しさの中でも力強く生きる事を伝えるような曲が……健の耳へと注ぎ込んだ。
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