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ソング  作者: 奥野鷹弘
後編
18/30

バースデーケーキ

あれから4年、物語は動いていくのかーーー

 時代が巡り、2019年5月。

 ひとりひとりが華が咲けるようにと名付けられた日本国年号は、元日からメディアで賑やかに彩った。個人として認められるということは勿論、右翼な思考だったり、左翼側が働いて混沌になったりとすることもあるだろう…。



 そんな時代の幕開けの日に、嬉しくない情報をある若者は目の辺りにしていた。グローバル世界になった社会だからこそ、それは思いのよらない形でやって来た。若者、和哉(かずや)は、個人プロフィールがオープン出来るSNS上で、見知らぬ人から友達申請されるのはおろか、その見知らぬ人の投稿を見る限り、すべて自分の過去の写真と想い出が綴られていたのだ。和哉自身は、自分の顔をオープンするのを拒んでいたため、どこで、誰が、ネットワーク上にあげたのか恐怖に陥った。追い討ちをかけるかのように、和哉の誕生日に、知らない曲で作られたバースデー動画も投稿されていた。

 知らない曲といっても、大原あゆみの『All Love』ではあるが。


 和哉はすぐさまサポートセンターへと申し入れて、取り消すように訴えた。直訴も考えたが、写真の流れから、この中にいる誰かがあげているのだろうと思い、友達申請の許諾も写真の取り下げを云える自信がなかった。ふたりで写っているのならまだしも、集合写真であるがため、本名で登録をその人はしていないためわからなかった。それから和哉が触れなかった期間に、サポートセンターの申し出によってその人は消したのだろう。友達申請や投稿などが見つからず、検索をかけても見つからなかった。ひと安心したと息を付いた和哉ではあったが、バースデー動画をお気に入りにしていたらしく、自分の顔と画面を紅く彩った。真っ白いケーキに、赤いロウソク。写真と交互に動画を混ぜ込んだバースデー動画は、自分の幼い顔の写真と共に、紅く染め上げていく。

だけども暗い部屋でスマホを覗いたばかりか、部屋の色が痛い。揺らめくロウソクと共に、歌詞とリンクして、一瞬で真っ黒くなる。一種の催眠術のように、若者、和哉は病に陥ちいる。自分が何に犯されて闇に引き連れこまれたのか、知るよしもなく………



 また、その一方で、オンラインになっていることを知る人間は、頬を紅く染め上げながら和哉の写真を舐めるように見つめていた。もちろん、息を荒くすることを忘れずに。

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