第3章(JOKERサイド) 出現! 悪の秘密結社!?
3-①
翌日の放課後、俺と竹内は恵を学校の屋上に呼び出した。
「何で呼び出されたか分かってるな?」
「ふ、二人いっぺんに愛の告白やなんて・・・ウチにはどっちか一人なんて選ばれへん」
「アホか! トカゲ男と仮面カイザーの事に決まってんだろうが!」
「ししし、知らんし!」
動揺しているのか、俺達が詰め寄ると、恵はしきりに束ねた髪の先を指で弄りだした。
「分かり易っ!? ホント分かり易いなお前! 昨日の闘いの一部始終を俺達は見てたんだぞ!」
「むむむ・・・」
お、泳いでやがる。これでもかと言うほど目が泳いでやがる。あくまでシラを切るつもりか。
その時、竹内が一歩前に出た。
「ねぇ、恵ちゃん。いくらあんな衣装と仮面で変装してても、話す時に関西弁丸出しじゃあ恵ちゃんだってバレバレだよー?」
「ふん、そんな手には乗らへんもん! だいたい、昨日竹薮で会った時はバレへんようにちゃんと標準語でしゃべってたやん! って・・・・・・はうあ!?」
アホや・・・この子アホの子や・・・もはや言い逃れはできまい。
俺達は恵を屋上の角に追い詰めた。
「さあ恵ちゃん、トカゲ男について話してもらおうか」
「なあ恵、あいつらは一体何なんだ?」
「二人とも・・・チャック全開やで!」
「うおっ!?」
「はうあ!?」
一瞬の隙をついて恵が逃げ出した。二人してこんな子供だましにひっかかるとは情けない。だが、驚くほど足の遅い恵を捕まえるのは驚くほど簡単だった。恵は俺達に両脇を抱えられ、さながら捕獲された宇宙人のような格好で屋上まで連れ戻された。
「なー、お願いやから離してーなー」
「トカゲ男の事を話してくれたらな」
「分かった。話す、話すから・・・・・・隙ありっ!」
手を離すと、またしても恵は逃げ出した。
「へんっ、誰が喋るかアホっ! 捕まえられるもんなら捕まえてみ・・・あっ」
お言葉に甘えて、俺達は恵を捕まえた。その間わずか3秒。
しつこいようだが、とにかく足が遅いのだ。その後、恵は何度も逃走を試みたが、ことごとく失敗に終わり、78回目の逃走に失敗したとき、とうとう観念したのか、ぽつりと言った。
「ウチな・・・・・・世界征服してんねん」
「は?」
俺は耳を疑った。世界征服とは、マンガや特撮番組とかで悪の秘密結社なんかが声高に叫ぶあの世界征服の事か? 俺は恵の正気を疑った。
いや、待てよ・・・そういえば聞いた事がある、関西には、まるで呼吸をするかの如くボケたりツッコんだりする大阪人という人種が存在すると。これはもしかして大阪人特有のボケなのか・・・?
「な、なんでやねん」
とりあえずツッコんでみたが、恵は完全にスルーして自分の所属する組織、秘密結社JOKERについて話し始めた。
恵の話によると、JOKERとは世界征服を企む秘密結社で、日本各地に支部が存在するらしい。そして恵は二ヶ月ほど前に設立されたばかりのJOKER泉支部・支部長として、泉市の征服及びJOKERの作戦を妨害する仮面カイザーを倒す事を任務としているらしい。実際にトカゲ男や仮面カイザーをこの目で見ていなければ到底信じられない話だ。
「ふふん、もう既に、この町も征服されつつあんねんで」
恵が自慢げに無い胸を張った。まさか自分の町が悪の秘密結社に征服されつつあるとは・・・
「この町はどのくらい、その秘密結社の手に落ちてしまってるんだ?」
「・・・・・・えん」
恵の声が急に小さくなった。
「えっ?」
「・・・うえん」
「何だって?」
「・・・・・・泉公園」
「他には?」
「・・・・・・・・・」
「えっ・・・そ、それだけか?」
「なんか文句ある?」
恵にジロリと睨まれた。
泉公園とは、俺ん家の真向かいにある、鉄棒とブランコとぞうさんの滑り台がある小さな公園である。はっきり言って征服されようが支配されようが、困るのは近所の子供たちくらいのものだろう。JOKERとやらは、公園なんぞ征服して何がしたいのか。
「おいおい・・・」
「せ、千里の道も一歩から、ローマは一日にして成らず、二兎を追うものは一兎をも得ずって言うし!」
「ところで、どうして恵ちゃんは悪の秘密結社の手先なんかになったのさ?」
言われてみれば、どうして恵は世界征服を狙う悪の秘密結社なんぞに入ったのだろう。バカがバカな真似をするのは自然の摂理とはいえ、何が恵を駆り立てたのか。一体、このやたらと明るいチビメガネの心にどんな深い闇が潜んでいるというの・・・・・・
「おもろいやん!」
即答だった。文字にしてわずか六文字、“!”を入れてもたったの七文字しかない。
「ちょっ、お前・・・心の闇とかねぇのかよ!?」
「へっ? 何ソレ?」
あまりにも・・・あまりにもあっけらかんとし過ぎていて俺は呆気に取られた。本当にそんなアホな理由であんなこっ恥ずかしい格好して仮面カイザーと戦っていたというのか?
「恵ちゃん、僕も混ぜてよ」
「馬鹿野郎! かくれんぼや鬼ごっこじゃないんだぞ!」
「ホンマに! 入ってくれたら助かるわ。一人であの看板立てて回るのめっちゃ疲れるねん。じゃあ二人とも今からアジトに連れてったるわ」
「ちょっと待て、何で俺まで数に入ってんだ!?」
「だってー、ひろひろは竹内っちゃんの相方やし」
相方て・・・お笑いコンビじゃあるまいし。
「よし、じゃあ行こか!」
そう言うと恵は俺の手を引っ張って歩き始めた。うやむやの内に、俺はロクでもない事に巻き込まれようとしていた。
3-②
学校を出た俺と竹内は、恵に案内されて町外れの廃工場にやって来た。周囲には廃工場や無人倉庫がいくつも立ち並んでおり、不良や暴走族の溜まり場になっていると言って地元の人間はあまり近づきたがらない。
外壁がびっしりと蔦に覆われた二階建ての建物は、ほとんどの窓がシャッターを下ろされており、かなり不気味な雰囲気を醸し出していた。確かに悪の秘密結社がアジトにするには丁度良いかもしれない。
工場の中は、ほとんどの機材が撤去されてがらんとしていたが、工場の奥の方に、山積みにされた工事中の看板と、直径が1m、高さが2.5m程の円筒状の怪しげな機械が一台設置されていた。謎の機械からは木の根のようにパイプやコードが伸びており、大小様々なレバーやスイッチが付いている。
「で、あれが怪人作製装置。これに動物や植物を放り込んだら怪人になって出てくるねんで。すごいやろー」
「じゃあ、トカゲ男は・・・」
「ウチがあの装置にヤモリを放り込んで作ってん」
恵がまたしても自慢気に無い胸を張った。
「チュパカブラじゃなかったのかぁ・・・」
トカゲ男の正体を知って、竹内はがっくりと肩を落とした。
「今度怪人作るとこ見せたるわ。こっち来て」
俺達は、恵に案内されて2階にある事務所の扉の前まで来た。扉には作戦会議室と書かれた札が掛けてある。
恵が、作戦会議室の両開きになっている木製の扉を少し開けた所で、ゆっくりとこちらに振り向いた。
「ふっふっふ・・・入る前にもういっぺん聞くけど、覚悟はええ? 後には引かれへんで」
「大丈夫、覚悟は出来てる」
そう言って竹内が部屋の中に入った。
「おう、そうか。じゃあ俺帰るわ・・・・・・って、おい」
恵が俺の手をがっちりと掴んでいた。掴まれていた手を振り払い、作戦会議室に背を向けると、今度は子泣きじじいばりに背中にしがみついてきた。
「ええい、離せ!」
「いーやーやー! そこは部屋に入るって言わなあかんとこやろ、寒っ!」
「寒いって何だよ!? お笑い芸人じゃあるまいし・・・あっ、てめぇ!」
恵が俺のズボンのポケットから携帯を抜き取り、扉の隙間から会議室の中に投げ込んだ。
俺が携帯を取りに部屋の中に入ると、扉がひとりでに閉まった。俺は慌てて扉の取っ手に手をかけたが、鍵がかかって開かない。
部屋の中を見回すと、部屋の中央には、Uの字形に置かれた長机、入り口正面の壁には、馬鹿でかい液晶モニター、向かって右側の壁には泉市の地図が貼られたホワイトボードが掛けられていた。
恵に詰め寄ろうとしたその時、不意に部屋の明かりが消えて入り口正面のモニターが点いた。そこには、一人の男が映し出されていた。
『ようこそJOKER泉支部へ!』
「ぶっ!?」
思わず吹き出してしまった。
『我輩が秘密結社JOKEERの首領、所塚である!』
うわぁー・・・えーっと・・・何つーか・・・うわぁー・・・
いくらなんでもこれはないだろ。一人称が“我輩”って・・・・・・
モニターには、仄暗い部屋の中で革張りのソファーに座る、ガッシリした体つきの男が映し出されていた。
年齢は40代後半位だろうか。男は真紅の軍服と帽子を身にまとい、金色のマントを羽織り、サングラスをかけ、挙句の果てに膝に猫まで乗せていた。
どうせロクでもない大人だろうと思っていたが・・・想像を遥かに超えてロクでもねぇ!!
見れば見るほど、考えれば考えるほど怪しい。いい年齢した大人があんな格好して恥ずかしくないんだろうか。何だか見ているこっちが恥ずかしくなってくる・・・穴があったら入れておきたい。
俺はおそるおそる、首領を名乗る胡散臭さ爆発のおっさんに聞いた。
「あの・・・上原さんから、世界征服しようとしてるって聞いたんですけど・・・?」
『うむ、我々JOKERは『人と地球に優しい世界征服』をモットーに暗躍する秘密結社だ!!』
う・・・胡散くせぇー! めちゃくちゃ胡散くせぇー!
「世界征服って・・・町を破壊したり人を襲ったり・・・とか?」
「ふっ・・・・・・フハハハハハハハ!!」
俺の問いに対し、所塚首領は高らかに笑ったあと、急に真顔になり、言った。
『・・・どうやら君は特撮番組の見過ぎのようだ』
誰か鏡持って来いやぁぁぁ! このおっさんに見せてやっからよぉぉぉ!
『我々の目的は全人類が幸福に生きられる理想世界の創造だ。むやみに街を破壊したり人を襲ったりするのは我々の理念に反する』
「でも、仮面カイザーはJOKERが悪事を働いているみたいな事言ってましたけど・・・」
『騙されてはいけない、奴は我々を悪だなどとほざいているようだがな、人類の進歩と世界平和の為にちょっと世界征服しようとしただけで、一方的な正義を振りかざし、事ある毎にチンピラの如く我々に戦いを仕掛けてくる仮面カイザーこそが人類の進歩と世界平和の実現を妨げる悪なのだ。世界征服=悪と言うのは特撮番組の中だけなのだよ』
ま、ますます胡散くせぇー。つーか、世界征服って、ちょっとやるような事じゃないだろ。
「でも・・・実際、トカゲ男は町の物を破壊してましたよね?」
さぁ、どう出る!?
『・・・・・・エイリアンだ』
「はい?」
いや、答えになってないし。と、言うか・・・さっきから言動が1ミリたりともマトモじゃねぇ!
『地球は今、宇宙からやって来たエイリアンに侵略されようとしているのだ!』
おおっとぉ!? 世界征服に輪をかけてマトモじゃない事言い出したじゃねーか!!
『ふむ、信じられないという顔だな。まぁ良い、百聞は一見に如かずと言うしな、見るが良い・・・地球侵略を企む恐怖のエイリアンの姿を!』
首領が指をパチンと鳴らすのと同時に画面が切り替わったが、モニターに映し出されているのは、人気の無い夜の道路と、その道路のど真ん中に、何故かぽつんと置かれている大きな狸の置物だけで、恐怖のエイリアンとやらは目を皿にしても、影も形も見当たらない。あれ? この場所どこかで・・・?
「竹内、お前エイリアンが何処にいるか分かるか?」
「いや、全く」
『ふっふっふ、さっきから真正面に映し出されているではないか』
真正面・・・? ええと、それってまさか・・・
「・・・・・・あの狸の置物がエイリアンだとか言いません・・・よね?」
『その通り!』
「帰るぞ竹内!」
うん、やっぱりこのおっさんは頭がおかしい。おかしな事に巻き込まれる前にとっとと帰ろう、ハイ撤収っ!
『待て、最後まで見るのだ!』
首領の剣幕に気圧されて、俺は渋々画面に視線を戻した。
しばらくすると画面の外から、突然トカゲ男が現れ、鋭い爪を小学生ほどの大きさがある狸のどてっ腹に突き刺した。
その瞬間、狸の置物は奇声を上げてのたうち回り、テニスボール大の銀色の球体に形を変えると、最期には地面に溶け込むように消えてしまった。その様子を確認したトカゲ男は、疾風の如く立ち去った。
『見ただろう。エイリアンは様々な物に化けて人間を襲っているのだ!』
「いやいやいや、これ警察とか自衛隊とかに教えるべきじゃないんですか!?」
『教えてやったとも。今も警察から帰って来た直後だ。だが、警察の連中は人類滅亡の危機だというのに、誰一人として我輩の話を信じようとしなかった・・・・・・愚か者どもめ!』
そりゃそうだろ! そんな怪しい格好のおっさんがいきなり来て「地球侵略を企むエイリアンがいる」などと言われて誰が信用するというのか。
「じゃ、じゃあ仮面カイザーに協力を仰げば良いじゃないですか。人類の危機なんだし、正義の味方なら協力してくれるんじゃ・・・」
『あ奴はエイリアンを我々の作り出した怪人だと思い込んでいる。何度説明しても、「貴様らの口車には乗らん!」の一点張りだ。正義のヒーローを名乗っておきながら、人を信じる事が出来んとは・・・全く、情けない奴だ』
省みろー、日頃の行いを200回くらい省みろー!!
『もはや、エイリアンの脅威に立ち向かう事が出来るのは、我々、秘密結社JOKERだけなのだ! 我々はエイリアンの魔の手から人類を守らねばならん・・・人類が滅んでしまっては、世界征服もへったくれもあったものではない!』
「所塚さん・・・いえ、首領! 僕をJOKERに入れて下さ・・・」
「うおおおぃっ!?」
俺は竹内の顔面にチョップを叩き込むと、竹内の肩を掴んでモニターに背を向けさせ、小声で話しかけた。
「お前何考えてんだ!? あのおっさんを見ろ! いい年齢こいてあんな格好で世界征服なんて言ってるんだぞ! もはや怪しくない所を探す方が難しいだろうが!」
「止めてくれるな! 僕は・・・・・・地球外生命体と接触するんだ!」
だ・・・駄目だ。こいつ目が・・・キラッキラしてやがるっ!
なんだかんだ言って竹内とは長い付き合いである。コイツがこういう、新しいおもちゃを前にした5歳児みたいな目をしている時は何を言っても無駄だ。俺は恵を手招きして小声で話しかけた。
「恵、お前もお前だ! 何、あんな怪しいおっさんに騙されてんだよ、このバカ!」
「え、別に信じてへんし。だって格好からして怪しすぎるやん」
あまりにもあっさりと言われたので俺達は戸惑った。ならば、どうしてあんなオッサンの手下になったのか?
「・・・石山遼って知ってる?」
恵が唐突に聞いてきた。
「ゴルフの石山遼の事か?」
石山遼と言えば、弱冠17歳にして年間1億円もの賞金を稼いでいるプロゴルファーである。ハニカミプリンスの愛称で、おそらく日本で知らない者はいないだろう。
「あいつ、ウチの従兄弟なんやけど・・・」
「何ぃっ!?」
「マジで!?」
今日一番の衝撃だった。まさかあの超有名人の親戚がこんな近くにいたとは。
「すごいじゃん、恵ちゃん」
「・・・何が? たまたま親戚にプロゴルファーがおるってだけで、別にウチがすごいワケちゃうし・・・」
竹内の興奮した様子とは裏腹に一瞬、恵の表情が曇った気がした。
「小さい頃から、遼が世界を舞台に活躍してるのを見ていっつも思ってた・・・・・・ウチも世界中がアッと驚くようなスゴい事をしたい・・・いや、きっと出来るって!!」
「俺は現在進行形で、アッと驚いてるんだが・・・」
「えへへ・・・」
「いや褒めてねぇから!」
・・・・・・誰しも一度は、自分が特別な存在として多くの人に称賛されるのを夢見た事があるだろう。ひょっとしたら、すぐ側にそれを体現している石山遼のような存在がいたらそう思ってしまうのも無理ないのかもしれない。だからと言って、どうしてよりにもよって世界征服なんだ。
「ウチみたいな凡人がスゴい事やるには、誰もまだやった事のない事をやるのが一番手っ取り早いやん。地球の人口が60億人おる中でウチが一番最初ってめちゃくちゃスゴい事やと思わへん? 遼なんかより全然スゴイやろ!?」
たっ・・・ただの目立ちたがりのアホじゃねーか! 何か目眩がしてきた。
「おまっ、そんな自己満足の為に・・・」
「えー、別に自己満足でもええやん。自分の事やもん、周りがどう言おうと、まずは自分が満足せな始まらんやん」
「このバカ! 普通に考えて世界征服なんて出来るわけねーだろ! あのおっさんは何だかんだとキレイ事ぬかしてたけど、絶対コイツら悪い事してるって! ・・・・・・そもそも、秘密結社なんてのは、やましい事があるから“秘密”にしなきゃならねえんだろうが!」
「そん時は、首領を倒したら世界を救ったヒーローになれるやん。味方のフリして油断させといたらあんなオッサン一人シバくくらい楽勝やって。あと、どっちにしろ仮面カイザーはウチがヒーローになる為には邪魔やから潰す!」
げっ・・・ゲっっっスぅぅぅぅぅ!? コイツめちゃくちゃゲスい顔してやがる・・・ある意味、こいつが一番の悪党だ。
『話はまとまったかね?』
「僕は・・・JOKERに入ります!」
「おい!」
『よかろう! 君はどうする?』
“入るわけねーだろ!”と即答しかけたその時、一人の女性が鼻歌を歌いながら、隠しカメラの前を横切った。あ、あれは・・・さっ、桜井さんだとぉぉぉぉぉーっ!?
『うん? どうかした・・・』
「とぉぉぉこぉぉぉろぉぉぉづぅぅぅかぁぁぁーっ!!」
『は、ハイッ!?』
「俺を・・・・・・JOKERに入れろぉぉぉぉぉっ!!」
さっきからこの場所、どこかで見たことあるような気がしていたんだが・・・・・・桜井さん家のすぐ近くじゃねぇか!!
『そうか、我々の世界征服に賛同し・・・』
「うるせー! 俺の桜井さんを危険に晒す奴ぁ、エイリアンだろうがプレデターだろうがターミネーターだろうが、断じて許さん! 撫で斬りじゃああああ!!」
『えっと、世界征服・・・』
「入れるのか入れねーのかハッキリしろオラァァァ!!」
『・・・よ、良かろう。今日から君は秘密結社JOKERの一員だ!!』
・・・・・・エイリアンの脅威から桜井さんを守る事が出来るのが、秘密結社JOKERだけだと言うのなら、俺は、秘密結社の戦闘員にでも何にでもなってやる!
ちなみに・・・・・・勢いでとんでもない事を言ってしまったと気付くのは、翌日の朝の事である。
『エイリアンと仮面カイザーを駆逐し、世界をこの手に掴むのだ・・・JOKERによる理想の世界の為に!』
そう言うと、首領はソファから立ち上がり右腕を斜め上にピッと伸ばした。
「ほら、ひろひろも!」
呆気にとられていると、恵が肘で小突いてきた。
「や、やらなきゃ駄目か・・・?」
「もちろん! JOKERでは返事をする時はこうすんねん。ほら、背筋を伸ばして、右腕を斜め上に伸ばして・・・こう!」
俺は仕方なく首領に倣い右手を斜め上に伸ばした。
「じょっ、JOKERによる理想の世界の為に・・・」
うっわ・・・恥ずかしっ! めちゃくちゃ恥ずかしいじゃねーか、コレ。
『君達の活躍に期待する!』
首領の高笑いと共にモニターが切れた。
「じゃ、これからよろしく。二人にええもんあげるわ!」
恵がカバンから何かを取り出して俺達に手渡した。
「こ、これは・・・」
手渡されたのは、目と鼻と口の部分に穴の開いた真っ黒な覆面だった。額の部分には銀色でJの文字がプリントされている。俺と竹内は恵に勧められるまま、とりあえず覆面を被ってみた。髪の毛がないのでするりと入る。
「じゃあひろひろが戦闘員1号で竹内っちゃんが戦闘員2号な。二人とも、よう似合ってんで!」
「覆面に似合うもヘチマもあるか!」
周囲に鏡の類は無かったが、自分がとてつもなく怪しい格好をしているのは、自分と同じ格好をしている竹内を見れば一目瞭然だった。何しろ、学生服に黒の目出し帽だ・・・あ、怪しい・・・怪しすぎる。だが、これも愛する桜井さんをエイリアンの脅威から守る為だ。
「よっしゃ、世界征服すんでー!」
「おー!」
「おー!」
こうして俺達の長きにわたる戦いは始まった。